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ガチャ767回目:帰宅

 ダンジョン攻略後も俺達は旅行を満喫し、婚約者とその候補合わせて()()()との個別デートも無事に終え、俺達は今しがた自宅へと帰って来た。

 結局、サクヤさんとはそういう関係になり、嫁達も心から歓迎していた。ミキ義母さんは現状維持となり、娘2人は残念そうにしていたが、一応これが普通だからね?

 今回の決め手は、サクヤさん本人からの好き好きオーラが全開だったのもあるけど、一番影響があったのは「サクヤさんを幸せにする」発言を俺からした事が負い目になってる気もする。こんなの達成できるの、世界で俺しかいないと思うし。

 ちなみに、イリーナとレンカの母親とは、拍子抜けするくらい何もなかった。なんでも、娘の結婚式に参列した時にその手の感情が浄化されたらしい。ほんの少しばかり残念な気がしないでもないが、それはそれで健全だと思うし、納得するとしよう。

 ちょっと期待していた部分もあったが。


「ご主人様は本当に度し難いですね」

「自覚はしてるが、そういう風に俺を変えたのお前らだからな?」

「そうでしたね。ハニトラに引っかからないようにと、私達4人への肉欲に溺れさせ、更に飽きさせない為にも追加要員を迎え入れ、ダメ押しに『精力増強』と『性豪』スキルによる後押しを行った結果、ご主人様は見事にチェリーボーイから色好みの英雄へと進化しました」

「そうだな」


 あの頃は流されるままに嫁が増えていき、最近では割と自発的に増やしてるところがある。まあ、それでもうちの嫁達と折り合いがつかなさそうな相手は、今後とも選ぶつもりはないが。

 ミキ義母さんはまあ美人ではあるんだが、最初の印象もあって異性というより2人の母親としか見て無いから、正直俺から動く事は多分ないと思う。俺から見る限り、本人もマキも、その件には乗り気じゃなさそうだしな。面白がってるのはアキくらいのもんだ。


「結果的に見れば成功ですが、後戻りが効かないやり口でしたし、私達自身もご主人様の為という名目の下、()()()()に楽しんでしまっていましたから……。反省しております」

「それなり?」

「はい。それなりです」


 めっちゃ楽しんでたというか、俺もお前も、皆享楽に溺れてた気がするんだが。


「気のせいです」

「さいですか」


 リビングのソファに寝転がりながら、テレビを見る。そこに放送されているのは、開かれて1ヵ月経過してもなお熱狂が続く『バトルアリーナ』の様子だった。1ヵ月も経てば落ち着くかと思ったのだが、その熱気は冷めるどころかますます白熱していき、国内のみならず海外からも参加希望のアプローチが来ているらしい。

 まあ、お隣さんは例の件で国交断絶してるし、アメリカは征服王のスタンピード事件もあって誰も良い顔をしないので、交流はか細いものだが。代わりに、クリス達の生まれ故郷である4国の内、ロシア・カナダ・バチカンとは良い感じに関係を結べている。フランスは……マリーのやってきた理由のせいもあってか、仲良くとはいかずむしろ険悪らしいが。あちらの国は、マリーを個人としてではなく戦力としか見ていないらしく、返せと言ってきてるらしいし。

 マリー本人は断固拒絶の姿勢だし、俺達もマリーの酒禁止令の流れを聞いているから、あちらの考えは受け入れられないので、今後しばらくは向こうとは関わり合いになれないだろう。

 俺としてはフランス・イギリス間の2つの入口を持つカタコンベ型ダンジョンには興味があったんだが……。機会があれば、イギリス側から入ってみるのも有りかもな。


「そういやさ、海外で思い出したんだけど」

「はい」

「征服王ってどうなったん?」

「死んではいないみたいですね。元々恐怖政治で遠隔支配していた地域の中に、初期ロットが含まれていたようで、そちらに引きこもっているようです」

「あれから1ヵ月半ほど経過してるんだろ? しぶといなぁ」

「ゴキブリ並みの生命力ですね」


 この比喩、ダンジョンが出る前は通じてたけど、今の世の中的に、そこに征服王を当てはめた方が逆にしっくり来そうではあるよな。


「まあ、本人に武力はあっても、カリスマもなければ『運』もないからな。部下への飴もアズあってのものだったみたいだし、その内瓦解するだろう。『裏決闘Ⅴ』があるってのは脅威かもだが、アズ曰くⅤになってもリキャストは消えないみたいだから連発も不可能。その情報もアメリカに渡して拡散もしてもらったし、『裏決闘』なんて使った日には、それがアイツの命日になるだろ」

「とはいえご主人様。例の……『寿命』が対価になっている事を、向こうには知らせなくてよかったのですか?」

「まあそうだなぁ。この言葉は、ある意味即死魔法だけど、アイツらのことを思えばその使い道を託した方が良いかなと思ってさ」


 この旅行で、俺はエスから相談を受けていた。

 No.100の『豊穣ダンジョン』を攻略する事で流れて来た大量の経験値によって成長した、シルヴィについてだ。レベルが急上昇したことで、彼女はカスミ達と同じくらいのレベルにまで上昇していた。それもあって、今後は彼女も冒険に付いてこさせた方が良いかとか、そういう内容の相談事と思っていたのだが、どうやらそうではなかった。

 俺が日本のダンジョンや、俺が興味を持ったダンジョンを今後も攻略していくのに対し、エスは生まれ育った『696ダンジョン』の周辺にある他のダンジョンを、別行動で攻略しても良いかという相談だったのだ。

 エスという戦力がいなくなるのは痛手だが、こっちには4人のSランクが仲間になった事だし、何よりエスが自発的にやりたいと言ってくれたのだ。それを断るのは忍びないし、許可をした。その道中でもしも征服王に出会う事があれば、引導を渡すのはエスが良いだろう。そう思って、俺はエスに『寿命』のキーワードを託したのだ。


「さようでございますか。ふふ、やはりご主人様はお優しいですね」


 まあ、これが今生の別れになることはないし、ダンジョンを1つ平定する度に戻って来るともいう。1つでも攻略してくれれば、共有システムで楔を連結させた上で、マップ機能もシルヴィにプレゼントできるしな。


「そうかな? その罪を背負えって言ってるようなもんだが」

「今の時代、不殺だけが美徳とは限りません。世界は混迷を極めた結果、言葉を使うくせに言葉や倫理で説き伏せられないような獣も蔓延してきました。そんな人の道から外れた輩は、人間扱いするだけ時間の無駄です。さっさと世界から排除した方が世のためですので、その掃除を罪に思う必要はありません」

「まあ……それもそうか」


 けど、極力手は汚したくないんだよな。

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