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ガチャ755回目:暴露会①

 『ブラックマーマン』を倒し、『充電』も終え、このダンジョンの構成に想いを馳せていた俺だったが、改めて彼女達を見るとそっちはそれどころではなかった。

 俺の3年間の妄執と、その間の苦労。そして今に至るまでの軌跡を聞き、皆思うところがあるようで黙りこくっていた。

 その中でもシャルは、一際大きくダメージを受けていた。


「……シャル、大丈夫か?」


 そう声をかけるが、シャルは俯いて両手で顔を隠している。


「自分が恥ずかしい。ショウタの苦労に比べれば、あたしの入手経緯なんてただ『運』が良かっただけじゃない……!」

「まあそうかもしれんが、ダンジョン出現後に割り振られたステータスなんて、誰にだってどうしようもないもんだしな」


 シャルの頭をポンポンしてあげる。


「過程はどうあれ、結果俺は救われてるから悲嘆に暮れる事はないぞ」

「それは、ショウタが死ぬほど頑張ったからじゃない……」

「そうですね。シャルさんの過程は分かりませんが、主様に課せられた試練は重く苦しい日々だった事は、誰の目から見ても明らかです」

「そうですそうです。そんな無限に続きそうな荒野を指針もないまま歩き続け、栄光へと辿り着き掴み取った勇者様は、尊敬に値する方なのですっ」


 テレサとマリーは、今まで以上に尊敬を込めた目で見て来た。うーん、ただでさえ強かった彼女達の情念と視線が、更に強まってしまったか。


「わたくしとしては、スタンピードの最中、頻繁にショウタ様から感じるオーラの強度が振れに振れていたのが1番の謎でした。ですが、そのようなお力をお持ちなら、そうなるのも当然ですわね。とてもスッキリしましたわ」

「あ、確かにそうですねっ!」

「ほら、シャルさん。しっかりなさって下さい。主様は微塵も気にしていらっしゃらないのですから、あまり気に追いすぎるのもよくないですよ」

「んー……。シャル、お前の抱えている秘密をここで話せば、少しはスッキリするんじゃないか?」

「……そうね。皆に話すわ」


 そうして今度は、今の自分を形作る武器やスキルの入手手段に暴露大会へと移行した。俺としては早くこの階層をクリアしてボスに挑みたいところではあったのだが、発端は俺なので甘んじて聞きに回ることにした。


「ではつまり、シャルさんの武器は狙ったわけでもなくたまたま不運の積み重ねの結果、大当たりを引き当ててしまったと……」

「そういうことね。自分の力で手にしたのならともかく、流されるまま、トラップに引っかかりすぎた結果この武器を手に入れてしまったの。だから、それが無性に恥ずかしくて、誰にも言えずにいたわ」

「なるほどー」


 シャル曰く、引っかかった罠は全部ぶち壊したという話の他に、興味深いことも教えてくれた。本来ダンジョンに仕掛けられているトラップは、発動なり破壊なりされても、一定時間経過すれば復活をするというのはよく聞く話だが、ブラマダッタの力を使って破壊した罠は、永続的に壊れたままらしいのだ。

 それは恐らく、あの時手にした時に一瞬手に入れた『破壊神の加護』とかいう特殊スキルの影響かもしれない。一応あのスキルを使用するにはⅦにまでブラマダッタを強化する必要があるんだが、多分試練用の特別仕様だったのかもな。武器そのものにそんな特性があれば、俺が見たときに視えたはず。……いや、知らなきゃ見えない仕様もあるから一概には言えないか。

 一応見ておくか?


 名称:【No.04】魔導弓ブラマダッタⅦ

 品格:≪幻想≫ファンタズマ

 種別:弓

 武器レベル:89

 説明:世界に10種あるファンタズマウェポンの1つ。神話に登場する遺物を完璧に再現した唯一無二の武器。装備者の魔力を消費してインドラの矢を作成する。矢の威力・性能・格は作成者の能力によって変化する。所有者の能力によって成長して行き、姿を変化させるだけでなく性能が向上し、各種専用スキルも解放される。装備者の全ステータスに大幅なボーナス。

 ★レベルⅠ:インドラの矢 作製権限

 ★レベルⅡ:武技スキル『獄炎の矢』『流れ星』使用権限

 ★レベルⅢ:武技スキル『流星群』使用権限

 ★レベルⅣ:武技スキル『星落とし』使用権限

 ★レベルⅤ[封]:真・インドラの矢 作製権限

 ★レベルⅥ[封]:武技スキル『滅殺の矢』使用権限

 ★レベルⅦ[封]:神技スキル『破壊神の加護』解放


「……うん、やっぱ見えないな。あ、シャル、『インドラの矢』を出してくれるか」

「いいわよ」


 名称:インドラの矢

 品格:≪幻想≫ファンタズマ

 種別:弓矢

 説明:魔導弓ブラマダッタⅦの専用スキル。術者の能力に応じて威力が大幅に変化する

 ★この矢で撃ち抜いたトラップを完全に破壊する効果を持つ。


「おっと、こっちだったか」

「ショウタ、どうだったの?」

「ああ、そうだな」


 一人で納得していると、皆が聞いて来たので答えてあげた。


「「「「おおー」」」」


 この矢で射貫かれた罠は永久的に再生不可能となれば、トラップ系のダンジョンでは無双できるだろうな。なんでも、結果としてブラマダッタが封印されていたダンジョンは、出現当初はトラップまみれで有名だったが、今は1つも残っていないそうだ。


「ではお次は私ですねー。私の場合はちょっと稀有な例なのですが、ダンジョンに通いながら礼拝堂でお祈りをしていたら、いつの間にか覚えていたんです」

「それって、サクヤさんと同じパターンか」


 成長型の魔法スキルなんて存在、結局マリーと出会って以降も見たことがないし、ガチャからも輩出されなかったんだよな。

 だからこの手のスキルも、『幻想(ファンタズマ)』かそれに近いレアリティを持っていても不思議ではない。


「そうですね。ただあの人と違って、今の所変な衝動もないですね。きっとコレは、神が私を応援するために授けてくれたものに違いありません! ……と、ついこの間までは思っていたのですが、機内での事もありますし、恐らく私の場合も何者かによってスキルが与えられたのだと思います……」

「だろうな。けど、今の所そのスキルが誰かに迷惑をかけるような素振りもないし、きっとサクヤさんのキツネとは違って、スキルを与えてくれたのは善性の存在なんだろう」

「はい。私もそう思いますっ」


 ちなみにこのスキルを手に入れたのは、今から5、6年近く前らしい。となると、第二から第六世代までのいずれかに、件のスキルを渡した張本人がいるはずだ。アズにはまだ未確認だが、恐らくダンジョン構成は100ダンジョンごとに陣営が異なっていると思われる。例えば1から100や、パンドラがいた601から700は地獄・魔界側。天使が出現した『ハートダンジョン』を含めた801から900は天界側。といった風に。

 だからここも天界側だと思うから、そこまで邪悪な存在は出ないと思う。『マーマン』シリーズは邪悪じゃないとは断言できないけど。何せ、顔がな……。


「ちなみにマリー、君のお酒好きって、そのスキルの影響だったりはしない?」

「うーん、どうでしょうか。少なくとも、成人を迎えるまでは良いなーくらいにしか思っていなかったですよ」

「そうなのか」


 なら、関係ないかな。


「お酒は、成人した日にチームのメンバーでお祝いをした時に飲んで、それ以降ハマっちゃいました」

「そっかそっか」


 まあ、マリーが楽しそうだし、スキルの影響だったとしても構わないか。

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