ガチャ753回目:景観破壊
「ふふ、思えばショウタ様とダンジョン探索は初めてですわね」
「そっか、クリスさんはスタンピードに対応しただけですもんね。このダンジョンはとっても気楽に遊べるダンジョンと、地元の人々から聞いてはいますが……。どんなところなのでしょう?」
「昨日はシャルさんがウキウキで戻って来ましたし、主様との探索はとても実入りのあるものだったに違いありません」
「あ、あたしそんなに浮かれてた?」
「「「ええ、とっても」」」
「そ、それはちょっと恥ずかしいなぁ」
シャルは顔を真っ赤にして顔を覆った。初めて会った時はハキハキと喋ってベテラン感を出してたけど、あれは緊張によるものなんだろうな。シラフのシャルは、やっぱり普通の……いや、ちょっと恥ずかしがり屋な女の子だな。
昨日は誰もいないダンジョンだからってことでやる事はやれたが、今日はこのメンバーでできるかな? いやまあ、ここまで来たらやるんだけど。
クリスは未知数だが、一度ミスティと同時に可愛がったテレサとマリーは乗り気だったし。それに、今日はこのメンバーに加えて、もう1人ペット枠がついて来ている。こっちは参加させるかはちょっと悩ましいところではあるんだが。
『マスター、えっちな事考えてる?』
「うん、考えてる」
『もう、マスターったら♪』
サキュバスよりサキュバスしてる魔王がいれば、そういう場面でなくてもそういう空気にはなりそうだよなぁ。
まあでも、彼女がついてくるのはこの第一層までだ。そこから先は、デートの邪魔になるからと辞退してくれている。
「アズさん、本当にここで良いのですか?」
「せっかく一緒に来たんだから、ついて来てもいいのよ?」
『構わないわ。マスターと番の時間はなによりも尊ばれるものだもの。それに、マスターがあたしをここに呼んでくれた理由だけで、もう胸がいっぱいだわ』
「うぅ、話せば話すほどアズさんは普通の女性に見えて来ちゃいます」
『そりゃそうよ。だって、あたしだって魔王である以前に女の子なんだからっ』
「そうですよね。アズさんは主様が認められた初めての『テイム』相手。それに契約も交わしておられますし、いつまでも邪険に扱うのは失礼でした。……アズさん、今まで失礼な態度をとってしまい、申し訳ありません!」
「私も、ごめんなさいでしたっ!」
『許すわ。聖職者は魔王を嫌うのはどの世界でも変わらないもの。それでもその壁を乗り越えて認めてくれた相手を邪険にする事はしないわ。それに、あなた達もマスターの番候補だもの。そういう意味でも大事に扱うわよ』
「「アズさん……!」」
そうしてアズと聖職者2名が握手をしあい、友誼を結んだ。ここが浜辺で、お互いが水着じゃなければ歴史的瞬間としてカメラに収めても良かったんだが。
まあそれはそれとして、今回アズがついて来ているのには訳がある。それは、元管理者であるアズに、ここの鍵を渡せないかというものだ。
理由としてはいくつかあるが、一番大きいのはやはり共有システムの存在だろう。アズが鍵持ちに復帰できた場合、更なるスキルの共有ができるのは大きい。
更には、もし復帰できた場合、スキルポイントが増加するかも気になるところだが、それ以上にアズの高性能スキルの数々がコピー対象になる可能性があるのだ。
もしアズの『スキル付与』や『スキル生成』、または『スキル譲渡』などのスキルがコピーできれば、俺のやれる事は滅茶苦茶増えるだろう。
まあ、対価に何が必要かは聞いていないが、それはその時になってから考えれば良い。できなくてもポイントは増える可能性はあるし。
夢を見るのはタダだからな。
「ですがアズさんを、1人で待たせておくのは心苦しいですね」
『大丈夫よ。彼女達を呼んであるし』
「彼女達?」
誰の事だ?
……うちの嫁達でも呼んであるのかな?
◇◇◇◇◇◇◇◇
「ここが第二層ですかー」
「主様のお力があれば、ここもリゾート地として活用できるかもしれませんねっ」
第二層は入った瞬間は砂浜だが、そこから先はどこまでも続いていそうな、珊瑚礁の広がる綺麗な海が広がっていた。この階層は陸地がとんでもなく狭い分、海のエリアが大多数を占めるらしく、マップを広げても99%以上が海だった。水中にはモンスターではなく大人しそうな多種多様な魚が泳いでいるし、ここを開発すれば、ただでさえ人が集まるリゾート地が、更に観光客が訪れそうなポテンシャルを秘めていた。
水中には。
「そうだなぁ。モンスターさえいなければ良い場所だよな」
「そうね。モンスターさえいなければね……」
「……景観が台無しですわ」
モンスターがいない世界を妄想すれば本当に素晴らしい階層なのだが、水面のあちこちでは半魚人達が楽しそうに遊泳していた。顔は人間のおっさんで、身体は魚。水かきのついたカエルのような手足に、その背中には魚人特有の槍を担いでいる。
見た目はアンバランスで醜悪。そして生臭い魚の匂いが漂ってくる。ここから見えるステータスは貧弱そのものだが、そこにいるだけで景観を損ねるこいつらは、邪悪そのものといっても過言ではないだろう。
*****
名前:シーマンランサー
レベル:18
腕力:170
器用:120
頑丈:90
俊敏:120
魔力:0
知力:10
運:なし
スキル:なし
装備:魚人の槍
ドロップ:人面魚人の血石
魔石:小
*****
こんなステータスの奴らが、視界に映るだけでも数百匹いる。たぶん1体釣れば纏めてやってきそうだ。実はこのダンジョン、第一層は誰でも入れてしまう緩いダンジョンなのだが、第二層は高ランク以外立ち入り禁止とされているのだ。
まあ、こんな数がいるのなら、その禁止理由もよくわかるのだが。
『オッ! オッ!』
『オオッ!』
『オーオッ! オーオッ!』
『オッオッオッ!』
景観破壊だけでなく、騒音もか。これはただちに処分しなきゃな。
「モンスターにも営みがありますし、それを邪魔するのは気が引けるのですが……。今回ばかりはそんな気も失せてしまいました」
「テレサはこう言ってるけど、マリーはどう思う?」
「他の文明といっても言葉は通じないですし、すぐ暴力で制圧してこようとする知性の欠片もない者達です。教義には反しませんっ」
聖人2人がそういうなら、遠慮はいらないよな。
「シャル、今日は良い的がいっぱいあるなー」
「そうね。視界に映るもの全部撃ち抜いちゃいましょうか」
「ショウタ様、アイテム回収はお任せください」
「ああ、期待してる」
さて、騒音駆除と行きますかね。
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