ガチャ751回目:入手経緯
砂浜を2人で探索していると、ようやく最初のモンスターと遭遇した。そいつは砂浜の中から顔だけニョキっと生えていて、まるでチンアナゴみたいだった。
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名前:ガーデンイール
レベル:6
腕力:30
器用:50
頑丈:10
俊敏:10
魔力:50
知力:50
運:なし
スキル:なし
装備:なし
ドロップ:小型ガーデンイール
魔石:極小
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ガーデンイールって……まんまチンアナゴじゃん。しかも本当に弱い上に、その場から動けないみたいだった。スキルもないみたいだし、これは弱い。何か出るかと期待して、さっき『充電』を先に済ませて来ちゃったけど……早計だったかな。
動けないのに『俊敏』の数値に意味はあるのか……? いや、頭を振る速度くらいの意味合いはあるかもな?
ドロップの小型ガーデンイールってのは……多分食用だろうな。チンアナゴって、食えるって話だし。イリスを連れて来たら大喜びで殲滅しそうだ。
「本当に弱そうというか、地元の住人でも勝てるって話は本当みたいね」
「完全初心者が狩るにはレベルが少し高いけど、相手は動けない以上遠距離からペチペチしてりゃそのうち倒せるだろうしな……。それに一度でも倒せればジャイアントキリング効果で一気にレベルアップできるだろうし、お手軽にレベルアップするのなら本当に初心者向けのダンジョンかもしれないな」
俺も、こんなダンジョンが身近にあれば、最初期の苦労もずっと少なかっただろうけど……。まあでも、そんな経験をしてしまったら3年も耐えられなかったか。人間、楽を覚えちゃうとその後の苦行がより苦しくなるからな。
マップを見てみれば、チンアナゴらしき反応はそこかしこにある。こいつの唯一の危険性があるとしたら、接近するまで顔を出さないところか。
「ねえ旦那。それって、イズミが持ってたスキルだよね」
「ああ。元は俺のスキルなんだけど、管理者同士の権限を使って貸し出してるんだ」
「へー。何度か使わせてもらったけど、本当に便利なスキルだよね。隠れてる敵の位置さえ見えるんだもん。狙い撃ちするときには持ってこいよ」
「だろ? めっちゃ重宝してるんだわ」
「役割柄、自分の目で判断する能力を損なうわけにはいかないけど、これがあるとつい甘えちゃうのよね」
「わかる。まあマップから隠れる能力持ちもいることだから、常に見るんじゃなくて、答え合わせくらいのノリで使ってくれれば問題ないんじゃないかな」
「うん、そうするわ」
そうして、人がいないことでいくらでも湧いて出てくるチンアナゴを殲滅すること十数分。アイテムを拾いながら、エンリルくらい連れてくるんだったかなと半ば後悔し始めた頃、それは出現した。
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名前:サンド ガーデンイール
レベル:18
腕力:150
器用:120
頑丈:200
俊敏:10
魔力:150
知力:120
運:なし
【Aスキル】震天動地
【Mスキル】砂塵操作Lv1
装備:なし
ドロップ:中型ガーデンイール
魔石:中
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ふむ。動けないながらも『震天動地』で軽微な地震を起こすことは可能と。けど、砂地で転んだところで知れてるし、その隙に攻撃をしようにも『砂塵操作』で砂を操る程度じゃ何の恐怖もない。攻撃として扱うにはスキルレベルが低すぎる。結局動けない特性に変化はないみたいだし、やっぱコイツも雑魚だな。
ステータスを軽くメモして、シャルに目配せをするが俺に任せてくれるらしい。
「どうしよっかな」
揺らされたところで飛んでしまえば問題ないが、砂をかけられるとちょっと鬱陶しいか。なら、ここは……。
「コネコネ」
俺は足元の砂を固めて小さな泥団子のようなものを作り上げ、思いっきり投擲した。
『ドゴンッ!』
泥団子にあるまじき轟音とともに、ちょっと大きめのチンアナゴは煙となって霧散した。
【レベルアップ】
【レベルが16から20に上昇しました】
「ナイスストライク」
「ステータスの暴力で作った泥団子は、最早立派な兵器だな」
「そうね、こんなんじゃ子供達との遊びに参加できないわ」
シャルが寂しそうに呟いた。まあ俺には回避策があるんだが、『弱体化』は俺だけだしなぁ。やっぱ、欠片から手にしたスキルの使い道は、そこか? いやでも、俺の想定しているアレが機能する可能性もあるし、まだ判断するには早いか。
「旦那、次はどうするの?」
「どうやら次が湧くらしいから、このまま待機で」
「分かったわ。けど、本当に簡単にレアやレアⅡが出せるのね。今の旦那なら、狙った獲物は逃さないのかしら」
「そうだなー。『幻想』スキルを手にした辺りでは当たり外れがあったけど、一月もすればほぼ確定湧きくらいにまでは成長したな。今ではどんな低確率でも100%ドロップするし、進化も100%だ」
「凄いわね……」
しばらく待っても次が湧かないので、そのまま雑談を続けることにした。
「シャルはさ、どういう経緯でブラマダッタを手に入れたんだ?」
「あー。やっぱり気になるよね」
「ん? もしかして嫌な記憶だったりする?」
「そういう訳じゃないよ。ただちょっと、他の人に比べて入手経緯がちょっと恥ずかしいだけ」
「ふうん。よければ教えて欲しいんだけど、ダメかな?」
「そうね……。カスミ達にも教えてないんだけど、旦那なら良いかな。うちの国にあるダンジョンはさ、珍しいことにトラップまみれのダンジョンだったのよ」
「ほう、トラップか」
今までの攻略ダンジョンでトラップと呼べそうなものは、『ハートダンジョン』の岩の中の階段と、『豊壌ダンジョン』のアズ戦直前の祭壇くらいのもので、物理的なトラップとかそういうのは未経験なんだよな。
「旦那が想像しているような古典的なトラップだけじゃなくて、転送装置のトラップがあちこちにあってさ。あたしはその内の1つ……。落とし穴の先にあるやつに触れちゃったのよ」
「ほぉ、落とし穴の先」
何それ面白そう。
「ああもう、そんなに目を輝かせないでよ。あたしとしては、あんな見え見えの罠に引っかかってしまったことが悔しくって仕方ないんだから」
「けど、そのおかげでブラマダッタを手に入れられたんだろ?」
「まあ、結果的にはね」
更に詳細を聞いてみれば、その時にシャルはそんなに強くなかったこともあったが、1度ならず2度も3度も、下手したら10回以上見え見えのトラップを踏み抜き、終いには全部見切って回避したと思ったところで本命の罠を踏み抜き、結果的に封印されていたブラマダッタを発見し、手に入れたという。
ちなみにミスティの時にもあった取得のための専用試練は、ダンジョン内のトラップを全て破壊することだったらしく、シャルは全力で臨んだとか何とか。
「この武器に出会ったことで人生は大きく変わったけど、始まり方がこんなのだから、恥ずかしくて誰にも言ってなかったんだからね」
「そんなに恥ずかしがるようなことでもないと思うけどな。結果オーライだし。まあでも、シャルが恥ずかしいんなら、俺以外には内緒でいいぞ」
「うん、そうしてくれるとありがたいな」
「ちなみに、そういう意味では俺の入手経緯も結構恥ずかしいというか、今思えばかなり後ろ向きな感じではあったな」
「そ、そうなの?」
「ああ。だから今度4人集まった時に聞かせるから、楽しみにしといて」
「わ、分かったわ」
そんな風に雑談をしていると、ようやく煙に動きがあった。随分時間が掛かったが、何が出るかなっと。
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