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ガチャ750回目:砂浜デート

 目的地であるグアム島に到着した俺たちは、各々が宿泊するホテルにチェックイン後、早速皆それぞれが羽を伸ばし始めた。

 初日は移動の疲れもある事から誰かの担当日とかもなく平和に過ごし、2日目から本格的な新婚旅行を開始した。

 2日目はアキ、マキ、アヤネ、アイラの4人と。

 3日目はカスミ、ハル、ハヅキ、イリーナ、レンカ、イズミの6人と。

 4日目はミスティと、エス+シルヴィとのダブルデート。

 その後は個別デートとなり、5日目はアキ、6日目はマキ、7日目はアヤネ、8日目はアイラとなった。

 そして9日目。本来ならここでミスティだったりカスミ達だったりするところなのだが、ここで婚約者候補である4人との個別デートをすることになった。最初はクリス、10日目はテレサ、11日目はマリー。そして12日目にしてようやく、シャルとデートする事になった。


「シャル、お待たせ。待ったか?」

「い、今来たとこだよ」

「それにしても、焼けたなぁ」

「あはは。あたし、昔から日焼けしやすいのよね。レベルが上がってもそこは変わらないみたい。……旦那は、こういうのは嫌い?」

「褐色もいいよね!」

「良かった……」


 彼女の装いは日焼けボディに映える白のビキニで、中々煽情的だった。普通なら道行く誰もが振り返りそうなものだが、今この場は完全に貸し切りにしてある。いるのは警備の職員くらいのもので、他には誰も居なかった。


「……それにしても、カスミ達だけじゃなく、クリス達もシャルを誘うならここが良いって念押ししてたけど、本当にここで良かったのか? そりゃ、俺としてはいつか来るつもりではいたし、皆も気を遣ってここの話題は避けてくれてはいたけど……」

「良いの。ここが良い」

「そっか? シャルもそういうなら吝かではないが……」


 まさかホントに、ダンジョンデートする事になるとは。

 ここ、グアム島には第9世代のダンジョンである『825ダンジョン』があった。正直、ハネムーンの地にこの島を選んだのは、そういう意味合いの側面もあったりする。まあダンジョンが無かったら、グアムかハワイかの2択だったので、決め手になってくれて良かったのだが。

 この『825ダンジョン』は、本音を言うとかなり邪魔な位置にあるダンジョンで、こいつのせいで『1097海底ダンジョン』と『1099海底ダンジョン』が直線ラインで『楔システム』の結界を結ぶことができないでいた。ここさえ押さえてしまえば、『1086海底ダンジョン』をわざわざ経由する必要もなくなり、結界の面積もかなりの大きさになる事だろう。

 そしてこの『825ダンジョン』は、『ハートダンジョン』と同期であることが関係しているかは不明だが、かなり緩めのダンジョンとしても有名らしい。なんでも、全部でたったの2層しかなく、その上出てくるモンスターも弱く、旅行に訪れた冒険者が適当に間引くだけでもスタンピードが抑えられているという状況らしい。

 696の『幻想ダンジョン』とはえらい違いだ。


「俺としては旅行の終わりにさっと攻略しようかなとは思ってたけど……。もしかして、他の3人みたく、俺と一緒に戦う機会が欲しかったのか?」

「う、うん。クリスはスタンピードで仲を深めてたし、テレサとマリーは『王の庭』で一緒に過ごしたんでしょ。だからあたしも、そういう経験があれば遠慮はなくなるかなって」


 荒療治だなぁ。

 でも、3人の時はそれなりに手強い相手がいたから程よい緊張感もあって、仲も進展したけど、ここはほぼ作業になりそうなんだよな。そんなんで、仲深まるかなぁ……。まあでも他の3人もこの3日間、デート中はシャルの事をずっと気に掛けてたし、本人もこれで進展できるはずと思っているのなら、余計な事は口にするべきではないか。


「わかった。それじゃあ行こうか、シャル」

「う、うん! よろしくね、旦那!」



◇◇◇◇◇◇◇◇



 ダンジョンに降り立つと、そこは『1099海底ダンジョン』や『ハートダンジョン』第二層のような砂浜だった。左手には陸地、右手には海となっていて、見える範囲にはモンスターの影もなく、マップにもそれらしい表示は無かった。


「旦那の奥さん達からは、水着のほうが良いって強く推されてた理由はこれだったのね。確かに、海辺での探索となれば、濡れても問題ない水着の方が有用性が高いわね」

「防具としてはないも同然ではあるけど、難易度の低いダンジョンで被弾するようじゃ、高難易度のダンジョンでやっていけないしな。丁度良いハンデだろう」

「くすっ、旦那も同じ考えみたいで安心したよ」

「一般の人達曰く、俺はレアモンハンターである以前に、ダン畜らしいからな」

「ダン畜?」

「ダンジョンが生活のすべてで、俺の思考回路はダンジョン優先で、ダンジョンがなければ死ぬらしい」


 最初呼ばれ始めた頃はもうちょっとマイルドな意味合いだったはずなのに、最近は掲示板をのぞけば俺はそういう扱いされてるんだからビビるよなぁ。

 いやまあ、ダンジョンがなくなったら退屈で死にそうになるかもしれないが、死にはしないと思うし、ダンジョン以外にも大事なものは見つかったからな。昔ほど前のめりではないんだが……。そう思うと、ガチャを手に入れる前の方がよっぽどダン畜だったかもな。


「でも、そんな旦那だからこそ、こんな風に世界を救えてるんだとあたしは思うわ」


 そう言ってくすりと笑うシャルは、一際美しく見えた。


「……ありがと」

「あっ……えっと、その」


 自分で言ったことが恥ずかしくなったのか、急に耳まで真っ赤にして恥ずかしがった。ほんとシャルは恥ずかしがり屋というか……。


「シャルってさ、そもそも男に免疫がないよな?」

「うぐっ、はっきり言うね。でも、男友達はちゃんといるんだよ? エルキネスとかさ」

「でもそれは、()()()()()()()なのであって、実際にそいつを異性としては視てないだけだったりしない?」


 こう言っちゃ、エスには悪いかもだが。

 でもまあ、シルヴィに夢中なエスなら、他の異性にどう思われていようがあんまり気にはしないだろ。多少ダメージは受けるかもだが。


「うぐうっ! ……ほんと、旦那はするどいよね、そういうとこ」

「普段から嫁達の顔色もそうだし、表情筋の存在しない家族を見て来てるしな」


 割と鍛えられてるおかげで、察する能力は磨かれてる気がする。流石に全部は読めないが。


「ま、他の男に慣れる必要はない。ただ、俺には慣れてくれ」

「ど、努力するわ」


 そうして、俺達は最初のモンスターと遭遇するまで、のんびりと砂浜を歩き続けた。

読者の皆様へ


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