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ガチャ048回目:認めてもらわなければ

今日から2話です。(1/2)

 話し合いの後、荷物がいっぱいのまま電車に乗る訳にもいかず、見かねたヨウコさんが車を出してくれた。

 協会専用の移動用のバスだ。


 俺達は後部座席に乗り、昨日の出来事だったり、ダンジョンの花畑などの思い出話を語り合う。


「うーん。花畑は確かに綺麗だったけど、森の中を歩いていた記憶しかないわー」

「うっ!」

「もう、姉さんったら。でも私は楽しかったですよ。ショウタさんが普段どんな風にしているのか知れましたから」

「そうだねー。それに、新種と戦うショウタ君を見て思ったわ。君は、今後もきっと色んな秘密を暴いていくんだろうなって」

「まあ、俺はそれが夢みたいなところあるけど」

「そうなんですか? では、微力ながらお力になれるよう頑張りますね!」

「ああ、ありがとうマキ」

「あたしはー?」

「アキも、これからもよろしく」

「ふふーん」


 バスの運転手に生暖かい目で見られながら、俺達はマイペースなひと時を過ごした。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 ダンジョン協会第525支部へと到着した俺達は、正面で分かれる。彼女達は私服であった為、職員用の裏口から中へと入っていった。彼女達を見送り、俺も正面から入る。


 今の時刻は夕方直前といったところか。稼ぎを終えた様子の冒険者達がそこかしこにいた。

 1日ぶりの525支部だけど、やっぱりこっちの雰囲気のほうが良いな。810支部の方は、カップルがそこら中にいて、正直胸焼けするんだよな。アキとマキが、その光景に負けじと引っ付いて来てくれるのはまあ、嬉しかったし楽しかったけど……。


 そんな風に感慨に耽っていると、不意に声を掛けられた。


「おっ、ショウタ君じゃないか!」

「あ、シュウさん。こんにちは」


 誰かと思えば『一等星』のメンバー達だった。彼らも皆、今帰ってきたところなのだろうか。


「数日ぶりね。装備が一新されていたから、見違えたわ」

「うむ。しかしそれだけではないな。激戦を制してきたかのような風格すら感じられる……。一体君はどこで修業してきたんだね。ハッハッハ!」

「あ~。まあ色々ありまして」


 この人達になら言っても良いんだけど、ハートダンジョンに行っていたと、この場で言おうものなら、周囲から一体どんなやっかみを受けるやら。


「ほお……。本当に何か経験してきたようだね。これは俺達もうかうかしていられないな。また会おうショウタ君、今度また会ったら、面白い話を聞かせてくれよ!」


 そう言って爽やかな笑顔で去って行った。本当に気持ちの良い人達だ。


 さて、そろそろ良いかな。受付から少し離れたところにいるハナさんに向かって歩いて行く。すると、彼女は笑顔で迎えてくれた。


「おかえりなさい、ショウタさん。大変だったとは伺っていますが、大きな怪我もなくなによりです」

「ただいまハナさん」


 この前、支部長室に案内してくれた、本物の、お姉さん風受付嬢のハナさん。

 彼女はマキと同じように、名札には★が3つ入っている、ランク3の上級受付嬢だ。なんでも支部長の右腕らしい。副官的なものなのだろう。


「アキとマキの準備は出来てます? 中々来ないですけど」

「それなんですけど、ごめんなさいショウタさん。2人は来れないわ」

「え、なんで……あ」


 察した。


「はい。支部長に呼び出しを受けてます」

「……俺も行きます」

「ふふ。では一緒に行きましょうか」

「はい、お願いします」


 まあ、そりゃそうだよな。

 有給的な何かを使って休んだと思ったら、隣のダンジョンで支部長クラスを慌てさせる大騒動だもんな。……うん、全部俺のせいじゃん。怒られているなら、早く代わってあげないと。


「支部長、入りますね~」

「ハナ、ご苦労様。……いらっしゃいアマチさん」


 今まで以上の圧を発する支部長がそこにいた。すんごい怒っていらっしゃる……。心なしかアキがいじけてるし、逆にマキは俺の登場に慌てている。

 一体何を言われたんだ?


「アキ、マキ。2人は呼び出しがあるまで部屋の外で待機していなさい。私は彼と……みっちり、お話をするから」

「「……はい」」


 2人にしては珍しく、反論することなくトボトボと退出して行った。


 部屋には、俺と支部長の2人っきりになる。……あれ?

 ハナさんは、いつの間にいなくなったんだ?


「さて、アマチさん。経緯は、娘達から聞いたわ。その件で、あなたに言わなくちゃいけない事があるのよ」

「えっと……2人を連れまわしたことですよね」

「違うわ」

「あれ? じゃあ、レアモンスターとの戦いを間近で見せた事?」

「それも違う」

「で、では、帰るのが1日遅れた事……?」

「惜しいけど、違うわ」

「……んん?」


 じゃあ、なんで怒ってるんだ?

 ダンジョンで事件を起こしたことでは、ない?


 なら、ダンジョンではないところでの件、か……?

 一昨日帰ってから今日に至るまでに、ダンジョン以外で起きた事と言えば……。


 あ。


「……」

「その顔、心当たりがあるようね?」

「……はい」

「あの日確かにお伝えしたはずよ。娘2人との関係は認めていないと。そう言った矢先に、娘たちの家に泊まり込み。フフ……良い度胸してるわね??」


 支部長からの圧が、この世の物とは思えない程に膨れ上がる。

 『黄金蟲』の強化体以上の恐怖に、身が竦む思いだ。


「私はね、娘2人には幸せになってもらいたいのよ。確かにアマチさんといる時の2人は、私が知る中で、一番活力と笑顔に溢れているわ。悔しいけれど、そこは認めましょう。だけど、先日のように、第二層程度のレアモンスターに後れを取るようでは、預けるのに相応しくないわ」


 これは、あれだよな。2人に手を出すのはやめろとは言われてない。関係はまだ認められないってだけで。実力が伴っていないという話だろう。

 マキを、そしてアキも。2人を悲しませるような事にならないよう、もっと強くなれって。……そう発破を掛けてくれてる。

 そう思って良いんだよな?


「支部長」

「何かしら」

「支部長には……いえ、彼女達にもまだ直接的な事は伝えれていませんが、支部長にはまず話を通しておきたいので、伝えます」

「……」

「2人を俺に下さい。専属とかではなく、本当の意味で」

「……私に対して、そんな言葉を口に出来るなんてね。その度胸は褒めてあげるわ。だけど、意味が伝わっていないようだから、ハッキリと言うわ。実力が伴っていないようでは」

「支部長。改めて俺を『鑑定』してください。ここまで見せる事が、俺の誠意と覚悟です」


 『鑑定妨害』のスキルを使用し『レベル』『レベルガチャ』『圧縮』。その3つ以外の全てを開示した。


「……良いわ。あなたが託すに値するか、見させてもらおうじゃない。……え? な、なによこれ。短期間で、こんな……」


 支部長は、俺のステータスを見て固まってしまった。

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