ガチャ041回目:これがサービス残業って奴か?
12/25の投稿開始からちょうど半月。この度「小説家になろう」にて、ローファンタジー月間1位の栄誉を賜りました。
今日から3日連続3話です(2/3)
安心安全のはずのダンジョンに、未知のレアモンスター。その情報を貰ったヨウコさんは端末を開く前に、マキに確認した。
「出現はいつですか」
「1時間ほど前です」
「付近に人影は」
「一切ありません。私達3人で目撃し、こちらにいるショウタさんが独力で撃破しました」
そこでちらりとこちらに視線が向くが、すぐにマキへと戻した。
「心中お察しします。当然聞きたいこともあるでしょう。ですが、説明のためにも、まずはこちらをご覧ください。出現の状況および、モンスターの映像はこちらの端末で記録してありますので」
「わかったわ……」
沈痛な面持ちでヨウコさんは端末を開く。出てきたのはいくつかの写真と動画だった。
写真には出現の時の兆候である動く煙、そしてドロップしたアイテムのもの。煙の写真は、何故か俺にも無色透明に見えた。写真だからか? でも確かにナニカがあるように見える。
動画は、俺が戦闘を開始するところから始まり、俺の戦いが終わるまでだった。
うーん。バッチリ俺、映ってるな~。
あとで聞いたところ、もし内部資料として残すことになったとしても、戦闘をしている冒険者の情報は編集でマスクすることが出来るらしい。当然、その編集者は専属のお仕事だ。
マキの仕事なら信頼できるな。
「こちらが、姉が見たモンスターのデータです」
*****
名前:黄金蟲
レベル:18
腕力:250
器用:20
頑丈:250
俊敏:20
魔力:400
知力:50
運:なし
装備:なし
スキル:金剛力、金剛壁、金剛外装
ドロップ:黄金の種、黄金の盃
魔石:大
*****
そこには、アキが見たであろう奴のステータスが全て書かれていた。
『鑑定Lv4』で見れる相手のステータスって、人間と別段変わらないんだな。そしてステータスに小さな端数はなく、システムによって形作られたような感じだ。
「なんですかこの化け物は……。こんなモンスターが、第一層に……」
「『黄金蟲』の名前で、協会のアーカイブデータで検索しましたが、完全に新種でした。しかし、動画の冒頭にも見られるように、このモンスターは手出しするまで、もしくは接近するまでは完全中立のようです。もし見かけても近寄らなければ問題はないでしょう」
「問題はないとしても、コレだけの巨体です。もしも、人通りの多い場所で出現すればパニックは必至ですよ!」
「そこはプロにお伺いしましょう。ショウタさん、このレアモンスターはどこに湧きましたか」
「え、俺?」
確かにプロかもしれないけど、事前に言っておいてほしかった。
「そうだな、マップの隅っこに出現したな。ヨウコさん、第一層の詳細な地図情報はありますか?」
「あ、はい。少々お待ちを……こちらです」
今日ダンジョンに入る際に貰ったのとは、精度も確度も違う完璧な立体地図が出て来た。これはすごい。って言うかほしい。
お願いしたらくれないかな……。いや、機密情報だろうしダメだよな。
「……うん、やっぱりそうだ。このダンジョンの四隅にのみ、同じような森に囲われた広場がある。ここがレアモンスターの出現地点で間違いないと思う」
「思う、では困るんです。確証がない限りは、今後お客様を呼べません!」
それもそうか。……今回の発端は俺だし、ここではいさよなら、と帰る訳にもいかないよな。
2年間1度も見つけられていないからと言って、今日明日でまた現れないとも限らない訳だし。
「じゃあ……一般のお客さんは何時までいるんですか?」
「朝の8時から協会の入り口を一般開放し、19時30分には内部のお客様に退出を促します。そして20時には全員チェックアウトをしてもらっています。お休みの日はありません」
「夜の間は、一般の人はいなくなるんですね」
さすが冒険者。休みの日が無い辺りさすがだな。
っと、感心してる場合じゃない。
「なら、人がいない時にレアモンスターを沸かせて試すしかないですね。この左手前はさきほど試したので、右手前、左奥、右奥。それからマップ中央付近でもそれぞれ湧きがあるかを試して、もし最後のマップ中央での検証で、四隅のどこかに現れるなら安全。似たようなポイントで湧くのなら作戦の練り直しかな」
「レアモンスターの出現管理。それが可能だと?」
「そうですね。まあ、やり方は企業秘密ですが」
ヨウコさんがちらりと左右を見ると、アキとマキが同時に頷く。
アキは若干どや顔だった。
2人にも100匹討伐の事は伝えていないが、目の前で実践済みなのだ。詳細を告げなくとも、何となくは察しているのだろう。
「それは、ご協力いただけるのですか?」
「まあ、調子に乗って湧かせてしまったのは俺ですからね」
「……では、お願いするしかないようですね。日数はどれほどかかりますか」
「最短1日。最長でも3日くらいかな」
こればっかりは『運』の偏りによるとしか言いようがない。
「凄まじい速度ですね。4体分ですよ? ……それは、今日からお願いしても?」
「じゃあ仮眠するんで寝床貸してください」
こういうのは早いほうが良い。2人には悪いが、俺は今日から泊りがけだ。
「この部屋の隣に職員用のベッドがあります。そこでお休みください。何か用意する物はありますか?」
「起きた時用の軽食をお願いします。あー……アキ、マキ。こんなことになってごめんね」
「いえ、責任もってやり遂げる。素晴らしい事です」
「胸張って行きなさい。私達も精いっぱいサポートするから」
「あれ、帰らないの?」
2人は業務外だし、帰るんだと思ってたけど……。
「ショウタ君を置いて帰る訳ないでしょー」
「私達はあなたの専属ですよ。ご一緒させてください。私達もちゃんと休みますから」
「それなら、まあ……。じゃあ、今度改めてデートしよっか。ダンジョン以外で」
「はい」
「うん」
「行ってくるね」
そう言って部屋を出て行った俺は、備え付けの寝間着を借り、ベッドに飛び込んだ。
読者の皆様へ
この作品が、面白かった!続きが気になる!と思っていただけた方は、
ブックマーク登録や、下にある☆☆☆☆☆を★★★★★へと評価して下さると励みになります。
よろしくお願いします!










