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ガチャ037回目:激渋は屈辱の味

今日は2話です(2/2)

「アキ、手伝うよ」

「ごめーん、遅れちゃって」

「いや、俺も途中から『迅速Ⅱ』を使った高速戦闘が楽しくなっちゃって、ついつい止めどころを失っちゃった」


 俺は今、ドロップ品を拾い集めているアキに、こちらで回収したアイテムを手渡した。

 予定していた森を1つ多く殲滅してしまい、結局4つの森がアイテムまみれになってしまっていた。幸い、ここはマップの端っこ。近くにいるのは俺達3人だけで、他の人影は無かったので盗まれる心配はない。

 そして討伐した綿毛虫の数は93匹。1つの森に20ちょいずつ生息しているらしく、もう少しで目的の100匹に到達出来そうだった。


 しかし、予想外な事が2つ。まず1つは、どうやらこの綿毛虫、スライムよりも経験値が低いらしい。これだけ倒しても俺のレベルは上がらなかった。こっちはたったのレベル8なのに。

 そして意外な点2つ目。『綿毛虫の玉糸』が確定ドロップはしなかったという事だ。一般的なドロップから見て、その可能性は考えていたが、それでもショックは大きい。今のところ、獲得率8割。

 これだけの『運』があって、それでも100%じゃないなんて……。


 このアイテムの基礎ドロップ値は、0.1~0.2くらいなのかもしれない。これは確かに激渋だ。


「これで全部かな」

「うん。『極小魔石』がきっかり93個。『綿毛虫の玉糸』が75個。大戦果よ」

「お、最初の森で再出現が始まった。アキ、ちょっとマキを呼んで来てくれる?」

「良いわよ。何するの?」

「ちょっとレアモンスターの出現実験を」

「はぁ、あんたも好きねぇ。良いわよ、あたし達はちょっと離れたところで見ていてあげるから」


 そうして再出現した綿毛虫を6匹狩り、ドロップアイテムを一度アキに預けてから合図をする。

 2人からハンドサインを貰ったので、100匹目の綿毛虫を討伐した。


「さあ、来い!」


 しかし、俺の願いは届かず、綿毛虫の煙は膨れ上がることなく霧散して行った。


「!?」


 初めての、レアモンスター出現失敗に、俺は困惑を隠せなかった。


 まず俺は、真っ先に数え間違いを疑った。

 でも、討伐数も、ドロップしていた『極小魔石』も、2人で数えたんだから間違えようがないはずだ。


 では、森の中に他人が倒して拾い忘れた『極小魔石』が落ちていた……?

 いや、それもない。2人がいうには、ドロップしたアイテムは30分ほどで、ダンジョンに飲まれて消えて行くらしい。そしてそれはレアモンスターも同様らしい。出現から1時間、敵対者がいない状態が続くと忽然と姿を消すのだとか。代わりに、人間の死体はその場に残るらしいが。

 それが謎の死体の発見へと繋がり、原因究明出来なかった原因だろう。


 ……つまりは、レアモンスターの出現に()()()()

 という事だろう。


 2人の下へ戻ると、俺の元気がない事を察したのだろう。

 何も言わずに寄り添ってくれた。



◇◇◇◇◇◇◇◇



「落ち着きましたか?」

「……ああ。ありがとう」

「うん。顔色も戻って来たね。それじゃ、元気が出ることしましょ」

「?」

「もう、忘れたのショウタ君、お弁当よお弁当!」

「あれ、もうそんな時間?」


 そういえば、確かにお腹が減ってきた。


「シートを広げますね」

「ショウタ君はそこに座ってー」


 2人にされるがままにしていると、いつの間にか食事の準備が整っていた。

 そんなに落ち込んでたかな。でも、彼女達の気遣いは助かった。おかげで前向きに考えられる。


 2人に甲斐甲斐しく世話をされながら、改めて考察する。今回、レアモンスターが出なかった理由だ。


 1:『運』が足りず、確定出現では無かった。

 これは、スライムの件を考えれば十分あり得る話だった。ただでさえ通常ドロップのアイテムですらこのドロップ率なんだ。レアモンスターの出現率も同様に極小確率である可能性は否めない。


 2:ここにレアモンスターがいない。

 これも考えられる。そもそも、俺が知っているダンジョンはここを含めてもたった3つしかない。それに比べ、世界には1000ほどのダンジョンが確認されているのだ。

 そんな中で、2つのダンジョンでしか検証できていないレアモンスター出現の法則を、他のダンジョンでも当てはまるなど、断言するのは難しい。

 ここは、人間に殺意を持つモンスターがいないという珍しい階層なのだ。その仮定は否定できない。


 3:100連討伐による方法以外に、レアモンスターの出現条件がある。

 これも考えられる。けど、これを追い求めるにはまずこの第一層全ての情報が必要だ。試すにも、時間がかかる。だからまずは1を再検証し、それでも出なければ後日改めて3で検証すればいい。


「やっぱりあたし、ダンジョンの事考えてるショウタ君の顔が好きだなー」

「ふふ、私も」

「似たもの姉妹ね、あたし達」

「今までもそうだったじゃない。姉さん、好きなものが同じ時は?」

「仲良く分け合う、よね」

「ええ」


 2人の会話も、熱を帯びた視線も気付くことなく、俺は黙々と食べながら、この後の検証について思案を巡らせた 

 そして10分後。お弁当を平らげた俺は、お茶を飲む。


「ふぅ」

「ショウタさん、この後どうしますか? 手伝いが必要なら力をお貸ししますし、お邪魔であれば協会に戻っています」

「あたしもなんでもするわ。言ってみて」

「え? そうだな……。とりあえず俺は、あと2~300匹は狩ろうかなと思う。再出現の速度も余裕があるみたいだし、ドロップの回収、2人にお願いできる?」

「任せてください」

「任せて」


 2人は今日、徹底的に付き合ってくれるみたいだ。

 それなら俺は、後ろは2人に任せて、狩って狩って狩りまくってやる!!

読者の皆様へ


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― 新着の感想 ―
あれ?レアモンスターの出現条件って2人に話してたっけ? レアモンスター出現させる方法を見つけたって話はしたのは覚えてるけどその方法まで話してたっけ? 単純に見逃してた?
[一言] ショウタは全部鑑定しながら斬ったのだろうか? ひょっとしたら同じ姿で挙動も一緒でドロップも同じ別種モンスが紛れていた可能性とかもあり得るのでは?
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