ガチャ365回目:何かの密約
ひとしきり頭を悩ませていたイズミが顔を上げた。どうやら俺に言いたいことがあるらしい。
「お兄様、話は理解出来たわ。けど、こんな秘密をホイホイ教えちゃって良いわけ? いくら妹の友人だからってオープンが過ぎるわ。これ、すっごく重要な情報でしょ!?」
「まあ確かにそうだけど、教えて良いと思ったのにはいくつか理由がある。うちのメンバーは人を見る目があるし、俺がヤバい事をしでかしそうになったら絶対に止めに入ってくる。次に、カスミが信頼してる仲間というのも大きいな。カスミに聞いたが、今のチームは、カスミが自分で声をかけて集めたメンバーなんだろう? ならそこは信じてあげるのが俺の役目だろ。最後に、俺は自分で言うのもなんだが『直感』が鋭いんだ。君達なら大丈夫だと思ったから伝えた」
「……『直感』? まさか」
「お、やっぱイズミも知ってるか。なら俺の『運』の数値が知りた――」
「知りたくない!!」
耳を塞がれ断固拒否されてしまった。
まあ、この反応をするって事はちゃんと『運』と『直感』に関連性があることを理解してるってことだよな。しかし、マキ達ですら調べものすることでやっと見つけたレベルの話なんだが、イズミって思っていた以上に優秀なのかもな。
初期レベルは低かったけど。
「あーもー……。カスミちゃんのお兄様って、ほんっと滅茶苦茶だね」
「私もびっくりだよ。お兄ちゃんがこんなに凄くなってるなんて……」
「いやー。……ちなみにイズミは、そっちの方が素か? 出会ってすぐの時とはイメージがだいぶ違うけど」
「……あっ」
イズミがフリーズした。
どうやら口調が強くなっていたのに気付いていなかったみたいだ。まあ、今日は色々ありすぎてそんなことに気を回す余裕が無かったんだろう。最初のイズミは例えるなら小動物っぽく振舞って見えたが、今はアキを少し小さくしたみたいな感じだな。
「こっちが素だよお兄さん。イズミは目上の人がいたらすぐ媚びるんだー」
「レンカ、人聞きが悪いわよ。せめて猫被るって言ってあげなさい」
「ハル様、それでは追い打ちですわ」
「はは。まあ俺はそっちの素で全然構わないぞ」
「ほらイズミちゃん、元に戻って。お兄ちゃんもこう言ってるから」
「……しくった。ハズイ」
ほんとこのチームは仲が良いな。
「しかし兄上、イズミ殿の懸念は尤もです。信頼して頂けるのはありがたいお話ですが、それがし達はまだ顔を合わせたばかりです。このように重大なお話を受けるほどの信頼関係を構築出来たとは思えません。何か裏があるのではと勘繰るのも仕方がないかと」
「裏なんて無いさ。理由はさっき言った通りだし、この話の一部はここを制覇した際に、支部長が全世界に発信するつもりだからな」
「ならばその一部で十分ではないですか。チームメンバーである奥方様と同等の情報を提供して頂けるということは、これではそれがし達を今後、その……」
何か言いづらそうにハヅキがモゴモゴする。そうしていると怪しい笑顔をしたアイラがそっと近付いた。
「ふむ。つまりハヅキ様が仰りたいことは……ゴニョゴニョ」
アイラがハヅキの耳元で、何かを告げた。それを受けたハヅキは赤面しこくりと頷く。
……んん? 聞き耳を立てていなかったとはいえ、俺の聴覚が全く捉えきれなかったぞ。何を言ったんだ?
「ご主人様」
「ん?」
「ちょっとそこでお留守番しててください。女性陣全員でお話をしてきます」
「あ、はい」
そうしてレジャーシートの上でエンキ達と一緒にポツンと取り残されてしまった俺は、お留守番をすることになってしまった。
少し離れた位置に移動した彼女達を見れば、蜂戦で活躍した『封音の魔道具』が起動していて、薄い膜のようなものが広がっている。完全にガチの内緒話みたいだし、徹底してるなぁ……。
まあでも、俺も馬鹿じゃない。話し声は聞こえなくてもさっきのハヅキの反応や、会話している彼女達の反応を見れば、なんとなくどういった系統の会話をしているのかは察しが付かないことはない。……その展開は想定してなかったし、そういうつもりで情報を開示した訳じゃ無いんだけど……。アイラの奴、本気か?
でも、その会話の是非はともかくとして、なんでカスミもついてってるんだ? そこだけはちょっと理解出来なかった。うーん……。彼女達は全員、カスミの大事な仲間だから、とかか??
ああそうだ、この後の強化体戦では経験値がないけど、念の為『充電』を済ませておくか。
*****
名前:天地 翔太
年齢:21
レベル:66
腕力:32982(+16422)(+16491)
器用:32990(+16426)(+16495)
頑丈:32778(+16320)(+16389)
俊敏:32078(+15970)(+16039)
魔力:33426(+16646)(+16713)
知力:33768(+16817)(+16884)
運:15408
*****
『7/50』
もう7回か。最初は50回という多さに顔を顰めたが、必要なレベルは毎回100しかないもんな。1回目の時に比べれば、大変さがだいぶマイルドな気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇
イリスを枕、セレンを掛布団、エンキとエンリルを抱き枕にしてうたた寝をしていると、いつのまにか皆戻って来ていて、アキとマキに優しく起こされていた。
「何もない事の前例があるとはいえ、ボスのいる空間で眠れるなんてすごいわね、ショウタ君」
「ショウタさん、休むのはいいですが、ちゃんと戦えますか? 寝ぼけてませんか?」
「んぁ……。平気」
ちょっと伸びをすれば、眠気が飛んで気力が溢れてくる。
うん。プチ回復したし、まだまだいけるな。
「んで、アイラ。内緒話は満足行ったか?」
「はい。完璧な回答こそ頂けませんでしたが、今後考えられる懸念点のいくつかを解消できる可能性が出来たことを思えば、満足するべき結果かと」
「そうか。俺が言うのもなんだけど、ほどほどにしとけよ」
「心外ですね。これはご主人様のためを思ってこそですよ?」
「ホントかなぁ……?」
さーて、主にカスミのメンバーが心ここに在らずといった様子だが、作戦会議をするとしますかね。
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