ガチャ033回目:祝勝会を開いた
今日も3話ですが、明日から2話に戻す予定(3/3)
「「「かんぱーい!!」」」
俺、マキ、アキさんの3人でグラスを当てる。
現在俺達は、アキさんイチオシの、個室対応型の居酒屋で祝勝会を上げていた。ここは冒険者や協会関係者が、内緒ごとの話で利用する為のお店らしく、そう言った仕様のお店は、協会付近に結構あるらしかった。
この祝勝会。発端としては、俺が『ホブゴブリン』を討伐したことをお祝いする為に発案されたそうだが、その後『マーダーラビット』の討伐、マキの専属化と、目出度いことが立て続けに起きたため、アキさんが「この際まとめてパーッと楽しもう!」と言い出した。
まあ俺としても、色々と上手く運んだ事は嬉しかったし、こういう場を設ける事は苦手だったから助かった。ちなみにアキさんは当然の如くビールで、俺は甘めのカクテル。マキは19なのでノンアルコールだ。
「ところで、なんで2人とも隣に座ってるの?」
4人用の腰掛テーブルにも関わらず、3人横並びという異様な状態だった。
「だって、ねぇ?」
「姉さんとは対等な関係ですから」
「なら俺は1人で、2人が並べば良かったんじゃ」
「でもせっかくだし?」
「一緒が良いですから」
だそうだ。
なら、6人用のテーブルを使えば良かったという話だが、もう始まってしまったので手遅れだった。少し狭いが、それは次からは気を付けよう。
◇◇◇◇◇◇◇◇
話は大いに盛り上がった。
ダンジョン関係であれば第一層や第二層での出来事について。他のダンジョンでの有名冒険者の活躍や、オークションに出ていた他のアイテムだったり。ダンジョン外の話であれば今後のデートやショッピングだったり。話題は尽きなかった。
そうして食事もお酒も進み、夜も更けてきた頃。
「ねぇ~ショウタくん~」
「なんですか」
「ことば、かたい~。あたしとショウタくんのなかでしょー」
「……それは、マキみたいにしろと?」
「そう~。さみしいでしょー」
「……善処するよ」
「えひひ」
アキさん……いや、アキは酒を飲むたび積極的になって行った。
体重をこちらへと預けてくるようになり、柔らかい感触を押し付けてくる。しかも、たまに泣き出したり、笑いだしたり、プリプリしたり、甘えて来たりと。感情の変化が目まぐるしかった。俺も多少酔ってはいるが、ここまでひどくはない。
逆にマキは、さっきから随分と大人しい。アキに対抗するように、頭はこっちにもたれかかってるけど。
そう思っていると、マキに腕をぐいっと引っ張られた。
「ショウタさん……」
「ん? どうしたマキ」
「子供は、何人ほしいですか?」
「ぶほっ!」
突然の言葉に吹き出してしまった。
その瞬間、あまりの衝撃に頭から冷水をぶっかけられたような衝撃を覚えた。酔いも醒める。
「あたしはさんにん~」
反対側の酔っぱらいも、乗っかるように言ってくる。
ああ、これは確定だ。2人は揶揄いも冗談でもなく、本気でそう思ってくれてるんだな。
……なら、俺も覚悟を決めて。きちんと告白をしなければ。
だが、それは今ではない。その言葉は、こんな場所で伝えるべき事じゃない。
とりあえず今は、正気かどうかの確認を優先しよう。
マキの顔を改めて見る。すると、明らかに火照った様子だった。目も据わってる。
「確かにこの部屋、酒気が充満してるけど……まさかこれで酔っちゃったのか!?」
「ショウタしゃん、私は酔ってません」
マキ、酔っぱらいはみんなそう言うんだよ。
「あたしも~。ぜんぜんしらふ~」
「お前は酔ってる」
少し鬱陶しかったので、遠慮せずピシャリと言い放つ。
けど、アキはそれを聞いてケタケタと笑っていた。
「次からは換気のいい部屋を用意してもらおう」
「ショウタしゃん、話はおわってません」
「こどもー!」
「……よし、お開きにしよう」
このままではダメだ。話が通じない以上、まともに相手をするわけにはいかない。
2人の事を適当にあしらいつつ、会計を済ませる。
幸い、2人が住んでいる協会付属の建物はすぐ近くだった。千鳥足になっているアキの腰を抱えつつ、足取りは軽いがもたれかかってくるマキと手を繋ぐ。
そんな2人を連れて、彼女達の部屋へと向かう。
「えへ~、お持ちかえりされちゃうの~?」
「持って帰ってくだしゃい」
「まあ、君たちの家だけどね」
鍵を開け中に入ると、アキは自室のベッドにダイブし、秒で爆睡。
マキはずっと腕にしがみ付き、一向に離れる気配がしなかった。
「ショウタしゃん、お風呂にしますか? ごはんにしますか? それとも~」
「ご飯はさっき食べて来たでしょ」
「そうでしたっけ……?」
割と本気でダメそうだ。
「いいから寝なさい」
マキをベッドに連れて行くが、やはり腕から離れない。
「マキー?」
「やだ……いかないで」
「……」
マキは泣きそうな顔で、より一層しがみ付いてきた。
ここで手を離したら、壊れてしまいそうなほど、彼女が弱く見える……。
「ここでそれはズルイよ。逃げらんないじゃん……」
これが惚れた弱みか? この状態のマキを置いて、帰れないな。
バレたら支部長に殺されるだろうな。
「……わかったよ」
「はい……。ずっと、いっしょ」
子供のように抱き着く彼女を、こちらも優しく抱きしめる。
一緒にベッドで横になり、頭を撫でていると、ゆっくりとだがマキの身体から力が抜けて行った。
「眠るまでこうしてあげるから」
「うん……」
……2人の親から認めて貰っていない状況で、これはセーフだろうか、アウトだろうか。
そう思ってる内に、胸元から寝息が聞こえ始める。
「……すぅ、すぅ」
「……手を出してないからセーフ。と思いたいな……ふぁ。俺も、ちょっと寝よう」
甘く心地よい香りに包まれながら、微睡へと落ちて行った。
◇◇◇◇◇◇◇◇
パチッ。
目が開く。
少し頭が痛いが、よく眠れた気がする。
視線を横に向ければ、明かりに目が眩んだ。
ああ、部屋の電気を消すのを忘れていた。
けど、うちの部屋にこんな電球……。
「……!」
そこまで思った所で、思い出した。
今どこで、どんな状況なのかを。
恐る恐る腕の中を覗くと、呼吸が早く、湯たんぽのように熱々になった彼女と、目が合った。
「おはよう……」
「おっ、おはっ……おはよう、ございます……」
消え入りそうな声だった。
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