ガチャ023回目:知らぬ間に散財してた
今日からまた3話です。(2/3)
「ショウタさん、姉さんの揶揄いはあまり気にしないで下さい。それもこれも全部寂しさの裏返しですから」
「ちょ、マキっ!?」
「寂しくて構って欲しいだけなんです。そう思うと可愛く見えて来ませんか?」
「あ、あうあう」
「……まぁ」
俺の知るアキさんのイメージ像とはだいぶかけ離れているから理解が追いつかなかったが、目の前で顔を赤らめて、しどろもどろになっている当人を見れば、納得出来る気がした。
確かに、なんだか無性に庇護欲をそそられる気になってきたというか、先ほどまでの揶揄いに対しても、今ならある程度受け流せる気がして来た。俺が今までアキさんに感じていた偏見も、マキが一言言うだけであっさりとひっくり返るな……。
「あと、お姉さんぶってますけど、ショウタさんと同い年なんですよ」
「!!?」
「あぁ……バラされた」
「姉さんは見ていてまだるっこしいんです。寂しいなら、ちゃんと言うべきですよ」
「マ、マキが一気に距離を詰め過ぎなのよー……」
「そんな事を言ってるから3年も経過してるんです」
「あぅ……」
アキさんは何か言うたびにマキに言い負かされている。これではどちらが姉なのやら。
そう思って眺めていると、マキに引っ張られてアキさんの隣に座らされた。
「さ、ショウタさん。姉さんの頭を撫でてあげてください。そうすればすぐご機嫌になりますし、ショウタさんも苦手意識が無くなって、大きい犬か何かに見えてきますよ」
「えっと……こうかな」
「は、はううぅぅ」
女性を撫でた経験なんて無いが、マキの見よう見まねで撫でていると、アキさんの顔が一気に赤くなり、それに比例するようにどんどん大人しくなって行った。そしてそのまま2人で撫でていると、今度は何故かご機嫌になって行く。
「でへへ」
もしかして、恥ずかしさより撫でられる気持ち良さの方が勝ったのか……? 欲望に忠実過ぎる。
そうこうしていると、マキが撫でるのを止めた。続けて俺も手を離したが、アキさんは笑顔のままだった。アキさん、こんな人だったんだな……。こんなことで笑顔になってくれるんなら、これからも定期的に撫でてみるのも吝かではないかな。
「さて、姉さんが持ち直したことですし、改めて説明をさせてください」
「あ、うん。よろしく」
なんだか色々な事が起きたけど、マキは何事も無かったかのように繰り出した。
強い。
「姉さんと2人で相談して、ショウタさんの強さに見合う装備品をご用意しました。まずはこの剣をご覧ください。ショウタさんは片手持ちのロングソードタイプを好んで使われていますので、こちらの装備と適合しました。『第六世代型・御霊三式』です。ダンジョン技術を用いて、あらゆる武具を開発している『匠第二武器工房』が作り上げた作品です。製造は2年前と、多少型は落ちますが、切れ味が鋭く真の武芸者ならば岩をも断てるという噂もあるハイグレードな一品です。攻撃力だけでなく耐久力も非常に優れており、折れない・曲がらない・傷つかないの3拍子揃っています」
「本来は中堅以上の冒険者が扱うほどの製品だけど、今のショウタ君なら使いこなせるわ」
「うわぁ……」
『匠第二武器工房』。武器の製造に関しては日本トップを誇る製造メーカーで、そのどれもが高品質かつ高性能と謳われていた。俺も男の子だから、そういった強い武器には憧れがあったけど、まさかこの手にすることが出来るなんて……。
剣を実際に持って眺めていると、姉妹が微笑んで見ていた。姉の方はニマニマと言った方が正しいが。
「すごい嬉しいけど、高かったんじゃないの?」
「ご心配なく。まず先日提出していた『怪力』ですが、オークションの結果5800万で落札されました」
「えっ!? 高くない?」
「そうでもないのよ。確かにスタート価格は3500だったけど、この地域のオークションでは数か月ぶりに持ち込まれた一品だったの。だから、ずっと狙ってた人達が何人もいたみたいで、盛り上がったらしいわ」
「ショウタさんからの許可は頂いてましたので、ショウタさんの取り分4640万を使わせて頂きました。その剣の値段は4000万だったので、丁度お手頃でした」
「そうなんだ……。もう住む世界の違う値段で、言葉もないよ。それに、よくそんな高額な武器をすぐに取り寄せられたね」
「昨日、相応しい装備を吟味し終えたら、即座に注文しておきました。ですので、この剣だけじゃなく他の装備も、今朝届いたばかりなんですよ」
きっと、2人で夜遅くまで議論を重ねてくれてたんだろう。
頭が上がらないな。それにこんな凄い武器だけじゃなく防具まで完璧にそろえてくれるなんて……。
ん? でも、俺のお金って残り640万しかないよな? 銀行には多少生活用のお金は入れてるけど、協会側が勝手には使えないはずだし……。
だというのに、他の防具も市販品と言うには輝きと言うか、オーラが違う気がするんだけど……。
「なあ、そのほかの防具なんだけど、お金足りたの?」
「「……」」
2人は顔を見合わせた。
その反応、もしかして……。
「なあ、2人とも……」
「えっと、まずは防具の説明をさせてください。こちらは頭、胴、腕、脚部を守るためのセット装備で、こちらは『玄人第三防具工房』が作成された物です。ダンジョン技術で製法された超合金をふんだんに使用していて、名前は『第四世代型・軽量ハイブリッドアーマーMK.2』です。値段はその……1200万です」
「……」
「これより下で、ショウタ君に嚙み合いそうな防具はかなり、世代も防御性能も落ちちゃってさ。都合が良いのはコレしかなかったのよね」
「そのお金は、どこから?」
「今回、『怪力』で入ってきた私と姉さんの取り分と、貯金から……」
「……って、2人が出してくれたの!?」
専業って、ここまでしてくれるもんなのか?
いや、そんな訳ないよな。この2人だから、ここまで尽くしてくれてるんだろう。
アキさんは世話好きなところがあるし、マキもこの数日を見る限りかなり献身的だ。彼女達ならやりかねない。
それにしても、貯金を使ってまで……。
「色々言いたいことはあるけど、ありがとう。支払ってくれたお金は、2人が俺の安全の為を思って使ってくれたって事なんだよね。それを思うと素直に嬉しい」
「ショウタさん……」
「ショウタ君……」
「でも、これからは事前に相談して欲しい。装備の相談をしたのは俺だし、オークションで得たお金を資金として使ってもいいとは言ったけど、足りなくなったからって2人に支払わせるのはちょっと……。男として情けないというか」
「はい、ごめんなさい……」
「次からは、ちゃんと相談します……」
わかってくれたみたいで何よりだけど、アキさんが大人しいのがやっぱり違和感がすごい。いや、もういいか。彼女も専属の仕事を全うしようとしてくれただけだし。
2人が自腹してまで強い防具を用意したという事は、それだけ俺が危険な事をしていたという事なんだろう。生きて帰る。それを常に念頭に置きつつ、もっと強くなって安心させてあげなきゃ
「あの、ショウタさん。ここで着替えて貰って良いですか?」
「あ、うん。わかった」
元々装着していた鉄の装備一式は下取りしてもらい、新しい防具に袖を通した。
スライム狩りをしていたころは、鉄の装備でさえ重みを感じて、最初の頃は満足に動く事すら叶わなかったけど……この新しい防具、凄く軽いな。今まで身に付けていた鉄装備か、それ以下かもしれない。
これなら、『マーダーラビット』の攻撃も、へっちゃらかもしれないな。
「素敵です!」
「似合ってるー!」
「ありがとう2人とも」
さて、恩返しのつもりで売ったアイテムで、逆に返されちゃったわけだ。なら俺は、もっとお返ししなきゃな!
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