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ガチャ210回目:ここをキャンプ地とする!

 俺達はダンジョンに潜り、第一層と第二層を駆け足で進んだ。道中、砂地でエンキの失われたボディー用の砂を採取しそのまま第三層へと突入する。本来なら、このまま境界線に沿って第四層へと向かうのが筋なんだけど……。ここでちょっと欲が出てきてしまう。


「境界線とその周囲をマップに?」

「そう。今後のためにも、出来る限り『自動マッピング』で見える範囲は広げて確保しておきたいんだ。あ、でも安心して。モンスターの出現エリアには踏み込んだりはしないから」

「それは分かってるわ。今のショウタ君、第四層の事しか頭にないもの」

「良いと思いますよ。ショウタさんのやりたいようにして下さい」

「あはは、ありがと」


 猪や熊のレアモンスターも気にならないわけではないが、第三層は苦い思いをしたばかりだし、集中するためにもここは第四層を基点に考えておきたい。


「そういう訳だから、エンキ。頼むな」

『ゴ!』


 最大まで巨大化したエンキに乗り込み、前回と同じように頭頂部に椅子を出して貰って『鷹の目』を使用する。


「はぁ、やっぱり消費しないこの感覚は楽で良いなぁ……」


 そんなことを呟きながら、エンキに進んでもらう。

 玉座のような椅子に腰掛け、肘を突き膝を組む。そんなポーズを取りながら目を瞑ってるだけでマップが更新されていくのだ。人間、楽を覚えるとそこから離れられなくなるというが、まさにその通りだな。

 いや、第四層はこんな鬱蒼とした樹海じゃなくて平原地帯らしいから、ちゃんと自分の足で歩くつもりだけどさ。こういう楽出来るところは楽をさせてもらおう。


 第四層へと向かう途中、何組かの冒険者チームとばったり遭遇することがあった。けれど彼らは皆、エンキの事を知っているようで、感動されることはあれど恐れられる事はなかった。どうやら三日前の段階で、支部長が『初心者ダンジョン』に潜っている冒険者全員の端末宛に、エンキとそれに付随した俺の事を周知してくれていたらしい。あとは昨日の取材の件もあったし、掲示板でも散々ネタにされていた。

 今や、このダンジョンに通う冒険者の中でエンキを知らない人間は居ないのだろう。


 そうやってのんびりとダンジョンを進み、順調にマップは境界線に沿って開拓されていった。しかし、今までと比べてマップの開放速度が遅くて、どうにもヤキモキしてしまう。

 マッピング作業においてもこの階層は難易度が高いな。普通の、マッピングスキルのない冒険者チームだとしたら、投げ出していてもおかしくはないだろう。

 そう考えている内に俺達は階段に到着し、第四層へと降りて行った。


「おお」


 そこはまるで前哨基地のような様相をしていた。木の柵で作られた防壁の内側には、大量の簡易テントが碁盤のように均一に設置されていて、それぞれの拠点では冒険者達がのびのびと過ごしていた。

 当初、俺は冒険者が入り口に集まって身を寄せ合ってると聞いた時は、こじんまりとしたテントの集合体を想像していたんだが……。実情は全然違うものだな。

 休む冒険者の中には、協会で何度かすれ違った事のある冒険者もいたりして、この落ち着きっぷりを見てると、ここが本当にダンジョンなのか疑わしくなってくる。


「久々に来たけど、ここの雰囲気は変わらないわね」

「それって4、5年前?」

「ええ。あたし達がダンジョンに入り始めた頃ね」


 『初心者ダンジョン』が出現したのが5年も前だもんな。その頃から既に、第四層は第二の拠点として機能し始めていたのか。


「広いダンジョンでは中継地点があると冒険が楽ですから、重宝されてますね。『初心者ダンジョン』には無いですが、軽食の屋台が出ているダンジョンもありますよ。当然割高ですが」

「それは、5割増しくらい?」

「それでは元が取れませんので、浅層でも2倍からですね。深い階層なら値段5倍や10倍以上つくこともございますね」

「うひー……。でもまあ、運送コストを考えたら当然か」


 でもまあ、そんな深い階層に潜れる冒険者なら、暴利も許せるくらいには稼いでるだろうけど。それに値段は置いといて、ダンジョンで出店の飯を食べるのは楽しそうではあるよな。

 俺がアイラと話している間、いつの間にかアキとマキの姿が無くなっていた。探して見れば、一際立派なログハウスの方に二人の気配を感じた。危険な雰囲気も無かったので、戻るのを待ってから話を聞いてみると、どうやらこの基地の管理人と話をつけてくれていたらしい。

 Aランクだからか、このキャンプ地の一番奥にある広い一画を借りる事が出来たそうだ。


「ここの管理も協会がしてるの?」

「はい。腕の立つ協会員が持ち回りで担当してるんです」

「てか、ここのキャンプ地って、敷地のレンタル制なんだね……」


 ダンジョンなのに。


「管理されてない場所なら陣取り合戦が起きるでしょうけど、それだと無法地帯になるからね。決められた区画にテントを建てるルールにしないと、トラブルが起きやすいし、起きた時に対処しにくいでしょ」

「例えば……盗みとか?」

「そういうこと」


 そうか。ここにいるのは冒険者であり同業者でもあるが、同時に他人でありライバルでもあるもんな。足を引っ張って来る悪い奴も、一定数はいることだろう。いつぞやの『レッドカラー』みたいな問題児が隙を狙ってるかもしれない訳だし、最低限の警戒はするべきだよな。

 そうでなきゃ、家に鍵なんて必要ないだろう。


 それに今の俺のチームは、男1の女4の偏ったチーム編成だ。

 悪い連中からすれば狙い目のはずだ。……普通なら。


「むしろ狙ってくれると、今後の治安が良くなって助かるんですけど」

「襲撃ですの? ちょっと楽しみですわ」

「でも、ショウタ君は以前の件もあって警戒されてるから、狙われないかも」

「そもそも、エンキを見て委縮しない様な骨の太い者はココには居ないかと」


 こんな会話を堂々とするところに、誰が悪さを働くって?


「うちの女性陣は頼もしいな」

『ゴ』

https://twitter.com/hiyuu_niyna/status/1670693623627907072

上記にて、ショウタ君の溢れるスキルの表示方法について、アンケート開いてます。(3日間)

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