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ガチャ140回目:レアなウサギのレアを求めて

「それじゃ、次の目標だけど……ちょっと面倒なキラーラビットの100体討伐をやろうか」

「では、今からは私達がゴブリンを倒せばよいのですね」

「ああ、そうなるんだが……」

「旦那様、何か問題でも?」

「いや……アイラやアヤネでも、『ホブゴブリン』が湧く可能性は0ではないよなぁと思ってね」

「あっ……。そうでしたわね。ここのゴブリンは、わたくしでも煙がハッキリと見えておりましたわ。ですから、きっと沸かせてしまうかもしれないですわ」


 そう、このダンジョンに初めて訪れた時の俺の『運』は60とちょっと。この階層の『ホブゴブリン』は、その程度でポロっと湧いちゃう程度の『運』しか要求されないモンスターなのだから、8~10しかない2人でもその可能性は十分に考えられるのだ。


「どうしましょう……」

「まあ、湧いたら湧いたで倒せば良いだけ……なんだが、たぶんそれに俺が手を出してしまうと、キラーラビットの100匹討伐が中断されると思う」

「確かに、仰る通りかと」

「だから、俺は手出しできない。もし出て来たら、アイラとアヤネで処理してくれるかな?」

「承知しました」

「はいですわ!」


 そうして、2人に前衛を任せつつ、キラーラビットの時だけ前に出るという、先ほどまでとは真逆のフォーメーションで第一層を回り始めた。いかんせん、本当にキラーラビットは生息数が少なく、マップの右手側だけでは午前までという制限時間に間に合わない可能性が出てきたので、あっち行ったりこっち行ったりと、中央の道を行き来する羽目になってしまった。

 そして懸念の通り、アイラが300匹目のゴブリンを討伐した際に『ホブゴブリン』が出現。一時的に彼女が離脱している間も、アヤネは見事にゴブリン討伐に力を貸してくれた。あとでいっぱい撫でてあげようと思う。


 そうして、2時間近くかけてようやく100匹目を討伐した。


「これで100!」


 100匹目のキラーラビットは身体から煙を吹き出し、もくもくと立ち昇った。そしてその煙はゆっくりと地面に降り立ち、()()()()凝縮を始めた。

 膨張するでもなく、どこかに移動する素振りもない。今まで見てきた煙とは違う動きに、俺は警戒を強めた。


「アヤネ、俺の後ろに!」

「は、はいですわ!」


 アイラと俺で挟み込むように見つめる事数十秒。

 ようやく煙が晴れたところに、ソレは出現した。


「ははっ……マジかよ」


 名前:525-1

 説明:525ダンジョン第一層配置の??? 対応する虚像を捧げよ


 出てきたのは、『ホブゴブリン』が刻印された宝箱だった。


「この第一層に宝箱があると知った時、違和感があったんだ。5年もあれば間違いなくダンジョンの壁という壁は調べ尽くされる。無いと言われても、俺みたいに気になって探す奴も現れるはずだ、と。けど、一度たりとも宝箱の発見報告は無かった。……なるほどな、こういうことだったのか」

「まさかこのような方法でしか出現しないとは。ご主人様の閃きには驚かされるばかりです」

「いや、俺もこんな方法で出るとは思わなかったよ。……でも、全てのダンジョンがこういう仕様というわけじゃないだろう。完全に単一種しかいない『アンラッキーホール』では、きっとこの方法ではなく、普通に隠されていそうだが」

「そんなことよりも旦那様、この宝箱は持ち上げられますの?」

「お、確かにそうだ。これは、最初からここにあった訳じゃないもんな」


 アヤネの言葉にハッとなり、持ち上げてみようと試みる。

 俺が触れれば錠前が消失してしまうので、アイラに任せてみる事にした。すると、力を込める事無く随分とあっさり持ち上がってしまった。

 その上、アイラの鞄にも入るようだった。トロフィー専用の宝箱なのに、持ち帰れるのか……。


「……それじゃ、一度撤収しようか。ここで確認したいことは全て終わったし」

「はいですわ!」

「お疲れさまでした、ご主人様」

 

 俺はトランシーバーを起動し、作戦はつつがなく完了したことを報告した。



◇◇◇◇◇◇◇◇



「ショウタさん、お疲れ様でした」

「あんなに『ホブゴブリン』の声がダンジョンに響いた事、過去に一度もないわよー。ほんと、お疲れ様!」


 アキとマキ、2人に挟まれながら両腕をがっしりと掴まれている。2人がこの状態であるということは、対面には支部長がニコニコ笑顔で座っているということでもある。

 仲の良さをアピールするためというのもあるだろうけど、一緒に暮らしてるんだし、やらなくても伝わってる気がするけど……。いや、もっと単純に、労ってくれてるだけなのか?


「ああ、心配かけたねマイハニー」

「ちょ、それもう終わったからっ!」

「そ、そうです。お母さんの前だと恥ずかしいです……!」


 やっぱり恥ずかしいのか。なら、この手の呼び方はまた今度遊ぶとして、まずは成果の報告からだな。


「おほん。アマチ君、報告宜しいかしら」

「はい。アヤネ、カメラを」

「はいですわ!」


 いつもの様に膝の上でちょこんと座っていたアヤネが、カメラを映像端末に繋いで各動画の再生を始める。

 流されたのは『ホブゴブリン』戦。『ジェネラルゴブリン』戦。そして強化体の『ホブゴブリン』戦だ。どれもこれも、いまいちパッとしないというか、見所なんてほぼないものだったが、レアモンスターの強さを測るには良い指標になると思う。


「……十分よ。これだけの映像データが集まれば、第一層の問題児も大きな問題にはならないわ。明日のオークションまでに、810ダンジョンの第二層レアモンスターと一緒に公開をするのだったかしら?」

「はい、間に合えばですが……。あと、俺の個人情報に関するマスクは不要です。どうせ俺だってバレてるので」

「良いの? Aランク……近々『A+』にランクアップするとはいえ、注目を浴びる事は間違いないと思うわ」

「第二層までのレアモンスターの情報を、と支部長からの依頼ではありますけど、個人的には狙える範囲の全てのレアモンスターを制覇していくつもりなんですよね。そしたら、これを用意しているのは誰かなんて、バレるのも時間の問題じゃないですか。それに先ほどお伝えしたステータスを持ってる俺を直接どうこうするなんて、なかなか難しいと思いますし」

「それは、確かにそうね……。けど、なりふり構わない連中は、あなたの周囲を脅かすかもしれないわよ?」

「そうなった時の為に、彼女達には対策用スキルを渡してあります。勿論これで一安心とは言えませんから、今後も有用そうなスキルは優先的に彼女達の安全のために使っていくつもりですよ」


 『金剛外装』のような有用スキルは、他にもきっとあるはずだろう。

 それに可能なら、『レベルガチャ』も彼女達用にあげたいところなんだよな……。


 今の俺なら、再取得は可能だろうか? 『運』は30倍以上あるわけだけど……。というか、あのダンジョンのトロフィーも気になる所だしな。近々、遊びに行って見るのもアリだよな。

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