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ガチャ136回目:情報公開と招待状

「第二層のレアモンスター……。報告にあったカニのモンスターだったかしら?」

「ヤドカリです」

「そうそう。ヤドカリね、ヤドカリ。……シザークラブは確かにヤドカリだけど、あの巨大な『デスクラブ』はヤドカリと言って良いのかしら?」

「もー、先輩。あんな馬鹿でかい殻を宿にしてるんだから、ヤドカリでしょ?」

「そうねぇ……。まあヤドカリでいいか。それで、どうして急に報告しようなんて思ったの?」

「それはですね――」


 そうして俺は、『レアモンハンター』の名前を狩場で呼ばれたことを報告した。


「ああ、掲示板の。君が来てからというもの、静かだったうちのダンジョンのスレッドも、賑やかになったわ」

「お騒がせしてすみません」

「良いのよ。今のところ大きなトラブルはないし、モラルもしっかりしてる。あそこに出没する人達って、ほとんどが四層以降に籠ってばかりで、たまの息抜きに1~3層に遊びに来るような人達だからね。一応第四層以降はガチ目のダンジョンだから、BランクやCランクばかりで信頼に足る人達なのよ」

「そうなんですね」

「ええ。まあでもそっか、そんな二つ名を持っているアマチ君が潜ってたら、何かいるんじゃないかと勘繰られるのも当然よね。……分かったわ、『黄金蟲』の情報をと言われたら悩むところだったけど、『デスクラブ』に関してはこちらとしても問題ないわ」

「ありがとうございます。それで、折角なので一緒に動画データも載せてもらいたいんですけど、いいですか?」

「それって、前に言ってた話よね? こっちとしてはありがたいけど、大丈夫なの? アマチ君の知名度はまだ一部掲示板だけだけど、そんなものを公開したらもっと広範囲に知られちゃうわよ」

「良いんです。それが他の冒険者の助けになって事故が減るのなら」


 協会職員の……。

 特に、マキの心の負担は軽くしてあげたい。


「アマチ君……。ありがとう、この恩は忘れないわ。一応ミキさんにも相談したいから、明日アマチ君の方からも伝えて貰えるかしら」

「任せてください。ついでに、『甲殻騎士』の情報と動画もお願いしていいですか?」

「え、あれも!?」

「一般の冒険者じゃ、滅多に出会えないと思いますけど……()()()()()出会ってしまいかねませんからね。その情報を知ってるのと知らないのとでは、生存率に違いが出て来るでしょうし。……幸い、第二層にはセーフエリアがありますから、そこまで逃げ込むことが出来れば何とかなるって目算もあります」

「そうね……。先日、アキちゃん達からセーフエリア確定という情報が届いた時、私達も実験をしてみたの。閉園後に、東西それぞれの砂浜で、シザークラブを数匹から数十匹呼び寄せて、北側エリアに逃げ込んだらどうなるかを。奴らは足が遅いから、遠くにいる場合と、超近距離まで近寄ってきた場合の2パターンでね」


 おお。面白い試みだな。


「結果は、どんな状況でも、全てのモンスターが私達を見失って、元の場所へと戻っていったわ」

「へー」

「レアモンスターも同じ挙動をしてくれるか分からないけど、一応リュウ支部長が管理している『上級ダンジョン』では、以前に似たような事例があったと記録に残っているわ。私達協会の認識としては、ダンジョンってどこでも同じルールが適用されているものなの。だから、その点は問題ないと思うわ」

「では、よろしくお願いします」


 そういうと、困ったような顔でヨウコさんが彼女達を順番に見た。


「……ここまで言っておいてなんだけど、あなた達も、それでいいの?」

「ショウタ君なら問題ないですよー」

「彼のやりたいようにさせてください」

「旦那様なら、どんな問題も解決してくださいますわ!」

「もしトラブルが来ても、私達で支えれば良いだけです」

「……ほんと、羨ましいくらい固い絆で結ばれてるわね」

「俺には勿体ないくらい、できた彼女達ですよ」


 いや、本当に。

 こんな理解ある素敵な女の子達と出会えるなんて、本当に()()()()()()



◇◇◇◇◇◇◇◇



 その後、ヨウコさんに『デスクラブ』から得た身の一部をお裾分けして、動画に関しては後日うちの専属達が編集して送信するという形で落ち着いた。

 次のオークションは2日後だし、仕事の合間に編集するらしいので、まあ十分間に合うだろう。


 そうして俺達は、ダンジョン協会第810支部を後にしたその足で、別荘地下に置いてあった移動用の新車に乗り込み、アイラの運転で我が家へと帰ってきた。ちなみに植木鉢類は、今朝の時点で全てアイラの袋に収納してもらっている。


 過ごした時間は正直我が家も別荘も同じくらいだけど、一応真の拠点としては『初心者ダンジョン』側が正だから許してほしいところだ。

 ……誰に許しを乞うてるかわからんが。


 久々の我が家のソファーで羽を伸ばしていると、アイラと話していたアヤネが駆け寄ってきた。


「旦那様、旦那様。ポストに、旦那様宛の封書が届いてましたわ!」

「ん? 封書?」


 しかも、俺宛てに……??

 面倒な契約やらその他書類は、全部アキやマキが代理で済ませてくれたはずだから、俺に直接届く物なんて本当に限られていると思うんだけど……。

 うーん、全然思い浮かばないぞ。


「はい、お母様からですわ。恐らく例の件の招待だと思うのですが……」

「それって……歓迎会のこと?」

「中身を見てないので、恐らくとしか……」

「じゃ、読もうかな。アイラ、危ない物は入ってないんだよね?」

「はい。確認済みです」


 手紙の封を切り、中身を取り出すと高級そうな招待状と一緒に、手紙が添えられていた。


 最初は丁寧な挨拶から始まり、小難しい言葉が並べられていたので頭が痛くなってきたが、我慢しながら読み続けると、重要な事が書いてある部分を見つけた。


「えーっと、日程は1週間後。オークションの翌日に、当屋敷でアマチ様の歓迎会を行います、と。ふむ、彼女は全員連れて来てOKと。なるほどね」


 手紙から顔を上げると、いつの間にやら皆が集まっていた。彼女達にも手紙を見せるが、怪しい点はどこにも見当たらないらしい。


「サクヤさんのお家に招待……。ショウタ君、どうする?」

「アキは、行きたいって顔してるね」

「だ、だってー! 憧れの人だもん。でも、ショウタ君の判断に任せるからね」

「サクヤさんは私達……いえ、ほとんどの受付嬢が憧れるほど、美しく立派な人です。ですが、実の娘であるアヤネちゃんが怖がるくらい、厳しい人であることも存じています。お会いしたい気持ちもありますが、ショウタさんの判断を信じます」


 招待の内容としては、俺が来ることは確定って感じではあるけど、協会は支部長クラスの人に呼ばれたら、基本呼び出しに応じなくてはならないらしい。けど、アキやマキの言い方からして、Aランクはそれすら断る事が出来るのか?


 まあ、俺はそもそも予定なんて物を立ててから行動してるわけではないんだよね。だから、暇かと言われれば常に暇だ。彼女達の心配もありがたいけど、この呼び出しは危ない予感はしないし、俺は行きたいと思う。

 それに、このサクヤさんはただのお偉いさんじゃない。アヤネのお母さんなんだ。言うなれば、俺の未来のお義母さんの1人な訳だ。

 ああでも、面と向かって言うのは恥ずかしいな。特に、アキとマキのお母さんであるミキ支部長には特に。


「旦那様……」

「アヤネ、お母さんに会うのは怖いか?」

「ちょっとだけですが、怖いですわ。でも、わたくし、旦那様と一緒にダンジョンに入って、成長しましたの! だから、大丈夫ですわ!」

「おう、成長したアヤネを見せてやろうな!」


 アヤネの頭を優しく撫でると、彼女は嬉しそうに返事をした。


「はい、見せてやりますわ!!」

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― 新着の感想 ―
[一言] 読者視点では不穏なところ見せられてるから怖いなぁ。
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