ガチャ121回目:巨木の内部
俺達は『ハートダンジョン』第一層、中央にある巨木へと辿り着いた。
見上げると、今まで宝箱が設置してあった木よりも一回り高く、更には1本1本の枝に高低差がある。これは……登るのが大変じゃないか?
「ご主人様、マップの方はどうでしょうか」
「……反応はない。けど、俺の『直感』は怪しいって言ってるな」
「映るにも、何かしらの条件があるのでしょうね。今回は対象から距離が離れすぎていて、見えていないのかもしれません」
「かもね。……アイラ、俺も登りたいところだけど」
「はい、こんな事もあろうかと、グラップリングフックを持って来ております」
「用意周到なメイドだな……」
「アイラの想定は、いつだって完璧ですわ!」
俺とアヤネが少し離れると、アイラは遠心力を使って、フックを頭上10mくらいの高さにある枝に引っかけた。
「ではお先に失礼します」
そう言ってアイラは、木の幹を足場に、垂直の壁を駆けあがっていった。
ほとんどフックに結び付けてるロープを使ってないじゃん……。
枝に辿り着いたアイラは、フックを外して、改めて枝に別のロープを結びなおした。そしてまたフックを頭上に投げる。
ふむ、つまりこの新しいロープで登れと。
これくらいなら、アヤネを背負いつついけそうだな。
「アヤネ、掴まって」
「はいですわ!」
アヤネと一緒にロープを登り、到着すればまたアイラが用意してあったロープで次の枝に。その工程を何度も繰り返し、俺達はついに天辺へと辿り着いた。大体、目算で80mくらいは登ったと思う。
ここまでくると、下を覗く気にもならない。
これは、いくら4桁ステータスがあったとしても、落ちたらひとたまりもないだろうな。なんだか『直感』的に、大丈夫のような気もしてるけど、怖いし試したくはない。
「ご主人様、お疲れさまでした」
「さすが旦那様ですわ!」
一息ついていると、2人から労いの言葉がかけられる。
「ああ、ありがとう。……で、目当ての物はなし、と」
俺は、到着した部屋を見渡す。
巨大な木の天辺。今までなら宝箱が鎮座していた開けた場所だったのだが、この部屋には不自然なほど何もなかった。部屋の地面や壁は、木の幹で出来ていて、天井は葉っぱで覆われている。窓は無いが葉っぱ天井のお陰で採光には問題なさそうだ。
いかにもな雰囲気のこの部屋は、ガランとしていて、本当に何もなかった。
「滅茶苦茶怪しい。ということしかわからんな」
「こんなあからさまな場所ですからね、なにかあっておかしくはないのですが……」
「何もないですわね……? でも、こんな場所、秘密基地にはもってこいですわね!」
「そうだな、あとは立地さえよけりゃな……」
流石に、毎回来るのにあの長いロープを昇り降りするのはしんどいぞ。浪漫はあるけど。
「でも怪しいのは確かだし、調べてみよう。アヤネ、危ないから入口付近には近づかないようにな」
「はいですわ!」
そうして部屋を動き回っていると、何かボタンらしきものが壁に設置されていることに気が付いた。ボタンの色合いは木と同色の為分かりにくいが、触れれば確かにそこにある。
念の為2人を隣に呼び寄せてからボタンを押した。
『ゴゴゴ』
部屋の中央に、下へと続く階段が現れた。
「隠し階段ですわ!」
「凝った仕掛けだなぁ。こういうのって、他のダンジョンでもあったりするの?」
「ギミック型ダンジョンであれば見かけますね。ですが、この様な平和なダンジョンに仕掛けられているとは……」
俺とアヤネで炎魔法で明かりを灯しフォーメーションを取る。俺が先頭、アイラが殿。真ん中にアヤネだ。
階段は螺旋状になっていて、この巨木をくり貫いて作られている様だったが……。一体どこまで続いているのか。
下手したら、登って来た以上に降りているのかもしれない。そんな事を考えていると、ついに終点へと辿り着いた。
「扉……?」
「旦那様、このマーク!」
「ああ」
扉にはレリーフが刻まれていた。『黄金蟲』だ。
けど、その扉にはドアノブらしきものがない。これも恐らく、対応する『トロフィー』が無ければ開かない物なんだろう。
「『真鑑定』」
名前:810-1
説明:810ダンジョン第一層配置の??? 対応する虚像を捧げよ
「やはり同じか」
そして、ここは宝箱ではなく扉だったから、緑のアイコンが出なかったのかもしれないな。
「ご主人様、『トロフィー』は目に見える物なのですか?」
「いいや、ステータスに映るだけだ。だから、持っている俺が近付けば、何か反応があるはず……」
レリーフに、ゆっくりと手を伸ばす。
すると、扉に触れた瞬間ピカッと光った。光が収まると、扉はすでにそこにはなく、中には小さな箱が置いてあった。箱には鍵がかけられておらず、無造作に開けると中にあった何かが、俺に向かって飛び込んできた。
「うわっ!?」
慌てて顔を覆うが、いつまで経っても痛みや衝撃を感じることはなかった。ゆっくりと目を開けると、空になった箱がゆっくりと消えていく光景が目に入った。
「何だったんだ?」
「旦那様、大丈夫ですか?」
「ああ……」
「私には、何かが旦那様に入っていったように見えたのですが……」
「けど、身体に異常はないな。……なら、ちょっとトロフィーを見てみるか」
*****
トロフィー:ホブゴブリン
管理者の鍵:810(1)
*****
「鍵……?」
ステータスからは、トロフィーが消え、代わりに鍵が表示されていた。
これは一体何の鍵だ?
念じてみるも、特に何かしら使えるものではないらしい。
トロフィーが消えて代わりに手に入った以上、対になっているのは間違いないだろうけど……。
よくわからないけど、こんなのがあるなら全部集めたくなるよな。
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