ガチャ010回目:不審な追跡者
ローファンタジー日間ランキング1位の栄誉を賜ったので、今日も3話投稿です。(これは1話目)
俺は今、ダンジョンの第一階層を歩き回っている。
先日取得した『自動マッピング』のスキルは、一度通った場所なら以後自動的に敵や人間を表示してくれるが、直接通っていない場所はたとえ他に地図を持っていたとしても反映されない。なので、中途半端に埋まっている状況が気持ち悪かったので、全部埋める事にした。
支部長からは2週間以内にと期限を言い渡されたけど、せっかくのマップスキルに穴が開いているのは気になって仕方が無いからな。こういう事は、スッキリさせたほうが集中できるってもんだ。
「これで連続討伐は30匹目。……念のため、そろそろ探しておくか」
昨日の探索では人目を避けて、ゴブリンの100匹討伐を優先していたからか、マップの進捗度は30%といった所だった。1度討伐されたゴブリンの再出現時間が短いこともあって、同じところをぐるぐると回り続けた方が効率が良かったからな。
けど、今日は逆に100匹討伐をしてしまわないよう注意していた。うっかり夢中になり過ぎると事故が起きかねない。まずはマップ埋めを優先しつつも、30匹目を超えた辺りからキラーラビットを最優先目標に切り替えて動く。
モンスターは人間が居なくてもダンジョン内を動き回っている。だから、『自動マッピング』に映る赤い点も、よくよく注視すればその移動速度や移動距離で、ゴブリンかキラーラビットかの見分けがついたのだ。この発見は大きい。
キラーラビットをマップで判別することが出来るのなら、ゴブリン連続100匹達成に再チャレンジするのも容易であるということだ。
「……よし、これでようやくマップが完成した」
そんなこんなで適度にキラーラビットを討伐しつつ、マップを埋め終わる作業が完了した。
改めて地図を見てみれば、『アンラッキーホール』と比べてこのダンジョンは非常に広い。外周部を回るだけでも1時間は掛るかもしれない。
この作業の最中レベルは11を超え、狩り過ぎた結果12にまで上がっていた。
本来なら経験値が勿体ない為、11になった瞬間回したいところだが、今回はガチャを回すことは出来なかった。なぜなら……。
「やっぱり、どう考えてもついてきてるよな」
マップに表示された、人間を表す白い点。そんな複数の白い点が、俺のいる場所から数十メートル離れた位置で固まっていた。最初は勘違いかと思ったが、この数時間つかず離れずの距離を保って、ピッタリとついてきていたのだ。
俺が通った道を歩いてきてるから、奴らはほとんど狩りをしていない。モンスターを狩って生計を立てる冒険者の在り方とは、明らかに異なる動きだ。
「こいつら、どれだけ暇なんだよ……。やっぱり、昨日のスキルオーブが不味かったのかなー」
マキさんに怒られたばかりだが、あれは確かに愚策だった。マキさんが心配してくれたことが嬉しくて、安心させたくて、つい調子に乗ってしまった。
今回はどうするべきかな……。
「1、逃げる。2、撒く。3、放置する。4、逆に挨拶に行く。……うーん」
1:逃げるのはこっちに負い目があるみたいだし嫌だな。それに、また付け回される原因になるかもしれない。
2:ダンジョン内で撒くというのも、場合によりけりだな。とりあえず保留。
3:触らぬ神になんとやら、気にせず放置するのも手だけど、付け回されてる間は下手にガチャを回せないのが痛いんだよな。
4:……これはどうなるかわからん。冒険者の知り合いがいないから、ストーカーされた経験談とか聞いたことないからなぁ。って、ストーカーされた人なんてそんなに沢山いる訳ないか。下手な事をするとまたマキさんに迷惑が行くかも。
マキさんかぁ……。
「あ」
とここで、妙案が浮かんだ。
「そうか、報告すればいいんだ」
それに、今回の狩りでまた『鉄のナイフ』が溢れそうになってしまっている。鞄にはギュウギュウに詰まっているし、ギリギリで収まってる内に、査定して処分してもらおう。
ついでに時刻はお昼過ぎ。良い感じにお腹も空いて来たしな。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「付け回されてる、ですか」
「そうなんですよ。どうしましょう」
協会に隣接されてるコンビニで昼食を買い、報告ついでに会議室で食事を摂る事にした。ちょうどマキさんもお昼休憩時だったらしく、一緒に食べる事になったのは幸いだった。マキさんと一緒に食事……。うーん、これはこれで、バレたら恨まれそうだな。
マキさんは弁当箱持参か……。もしかして、手作りなのだろうか。
「昨日の今日でですか……。でしたらショウタさん、第二層にいってみませんか?」
「あ、はい。一応昼からは第二層を予定してました」
「では第二層に行きましょう。あそこは平原エリアとなっています。その広さは第一層を上回る大きさなので、隠れて付け回すことは難しいでしょう。それでも追ってくるのなら、顔を拝むチャンスです。それから、今回からショウタさんがダンジョンに入る際は、見送りさせて頂きます。本来は専属が行うものですが、『専属代理人』である以上は構いませんよね?」
「ええっ!? 嬉しいですけど、良いんですか?」
「はい。それに、見送りをすれば誰が付け回しているのか、わかるかもしれません。第二層について来た場合は、その情報と照らし合わせて厳重注意としましょう」
「おおー」
思わず拍手してしまう。それを受けたマキさんは口角が上がった。美人だけど、こういうところは可愛いんだよな。
そうして楽しくランチタイムを終えた俺達は、そのまま査定をしてもらった。
午前中の討伐数はゴブリン230体、キラーラビット9体。
成果は『極小魔石』197個に、『鉄のナイフ』37本。キラーラビットからは『極小魔石』3個と『キラーラビットの角』2個。
ちなみにこれらアイテムの名称は、俺と同じように『鑑定』を持っている協会員達が集まって、公式としたものだ。協会にはその情報を集約したデータベースが存在していて、アプリである程度の情報が閲覧できるようになっている。例えば、実物写真や名前、買取価格などだ。
昨日はたかがナイフと侮って半分以上捨ててしまったが、ここでもマキさんに怒られた。というより溜息をつかれた。今後はダンジョン内で拾ったものは、ちゃんとアプリで調べるように、と。
ごもっともで。
「こんなに沢山取ってきて……。ショウタさんは、ダンジョンを枯らすおつもりなんですか?」
「すいません」
「ふふ、冗談ですよ。頑張りましたね」
そう言って微笑むマキさんに、見惚れてしまう俺だった。
ヤバイ、惚れそう。
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