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ガチャ1138回目:寒空の下

「んじゃ2人とも、準備はできたか?」

「ああ、バッチリさ」

『行けるのじゃ!』


 ドロンと煙に包まれたタマモは、小狐の姿となって俺の胸元へと飛び込んでくる。


『くふー。御主人の中は暖かいのじゃ♪』

「あんまり興奮しないでくれな。尻尾がくすぐったい」

『むむ、気をつけるのじゃ』


 小狐の姿になっても、タマモの尻尾は9本あるからなぁ。モフモフの尻尾が9本も嬉しそうに動かされると、流石にくすぐったすぎてな。


「それじゃあ、行ってらっしゃい」

「お気を付けて」

「ファイトですわ!」

「ご武運を」

「ああ、行ってきます。攻略班は作戦の通り、いつでも出られるようにしておいてね」


 そうして俺とエスはロープで強く結ばれ、エスを俺が背負う形で飛行を開始した。俺が背負われる形も想定はしたんだが、それだとタマモのスペースが無くなるからな。

 エスの服の中に入るのは嫌だろうし、俺も多少は妬くだろうから当然却下となり、この形に落ち着いたのだった。



◇◇◇◇◇◇◇◇



『おおー、絶景なのじゃー!』


 飛行を開始してすぐに、タマモはご機嫌モードになった。尻尾が暴れているが、このくらいなら許してやろう。


「エス、以前より飛行が安定したな」

「兄さんに言われたように、シルヴィを安全に運ぶために練習を重ねたからね」

『愛の力なのじゃ?』

「そうかもね」


 そうして他愛のない会話をしつつ、俺達は飛行場に到着した。前回のスタンピードの時にお世話になった輸送機と一緒に、記者団も待ち構えていた。

 そういや、来てる可能性が高いってサクヤさんに言われてたな。


「あー、どもども」

「兄さん、僕は先に乗ってるね」

「この薄情者めー」


 手際よくロープを外したエスはそそくさとヘリに乗り込んでいく。


「アマチ様、おはようございます」

『おはようございます!』

「はい、おはよー」


 記者会見の時のメンツだったので、気楽に挨拶を交わす。


「先ほど協会より新ダンジョンの情報が通達されましたが、あれは事実なのでしょうか?」

「そうですねー。新たに出現したのは空に浮かぶダンジョンですね。去年海底ダンジョンが出現したばかりなのに、もう新しいタイプが出て来てしまいましたね」

「とても楽しそうですね」

「ダンジョン攻略は俺の生き甲斐ですから」


 笑い声が各所から上がる。

 新タイプのダンジョンの出現に、不安に思ってる人はいないようで何よりだ。


「ところで、かのダンジョンには2人で挑まれるのですか?」

「いえ、攻略自体は特殊な方法で仲間を呼んでからになります。そのためにはまず少数精鋭で乗り込む必要があるんですけどね」

「なるほどですね」

「それと2人じゃないですよ。もう1人ここにいますから」


 そう言うと、首元から顔を出していたタマモが狐顔でドヤる。可愛かったのでそのまま顎を撫でてあげた。


「えっと、その小狐ちゃんですか?」

「コレは変身してるだけで、皆さんご存知の俺の嫁の1人ですよ。タマモ、変身を解いてくれ」

『むむ、仕方ないのじゃ』


 服の中から地面に飛び降りたタマモが人型へと変身する。そうして現れた姿に、記者団からは驚きの声が上がった。

 そういや、タマモの変身を表で見せるのは初めてだっけ? まあ、俺自身あんまりその変身は拝んでないんだけど。


「んじゃタマモ、おいでー」

『くふー♪』


 見た目幼女のタマモを抱き上げ、改めて記者団に向かって思ったままを伝える。


「と言う訳なんで、今からこの3人で乗り込んできます。攻略にかかる日数までは、ちょっと内部構造次第なんで分かんないですけど、いつも通りそう長くはかからないと思いますんで。では」


 そう言って軽く会釈をし、フラッシュを背に受けながら輸送機の後部から中に乗り込んだ。

 そしてエスの対面座席に座ると、運転手から確認のアナウンスが流れる。


『アマチさま、出発して問題ありませんか』

「大丈夫でーす」

『では、出発します!』


 そうして輸送機は、目的地に向かって飛び立った。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 1時間後。

 膝に乗って甘えてくるタマモを可愛がりながらエスと雑談していると、運転手の緊迫した声が流れてくる。


『アマチ様、レーダーに反応あり! まもなく目視でも確認ができます!』

「おっと、到着か」


 座席から立ち上がり、運転席まで歩いて行くと遠くに岩塊が浮かんでいるのが見えた。


「おー、浮いてる浮いてる」

「ダンジョンなら割と違和感のない光景だけど、外でもこの光景が拝めるとは思わなかったね」

『全くなのじゃ』


 俺達の呑気な会話に、運転手の緊張も少し解れたようだ。


『アマチ様、どこまで接近しますか』

「そうですねー。変な磁場が出ていて操作不能になるのも怖いですし、この辺で良いですよ。エス、構わないよな?」

「勿論」

『変化なのじゃ!』


 エスとロープで結び合い、小狐に変身したタマモが服の中に飛び込んでくる。よし、いつでも行ける。


『では10カウント後に後部ハッチを開けます! 突風と冷気にご注意ください!』


 アラームが鳴り渡り、後部ハッチが音を立てて開く。以前は百メートル程度の高さから飛び降りたが、今はその100倍以上の高さにいる。そこの高さにまでくると、下界の季節は関係なしに、気温はマイナス50度近くになるとか。

 俺ら2人は人間辞めてるし、もう1人は人間ではなくモフモフ族だが……ここまで極限状態だと普通に寒いな。


『うぅー、凍えるのじゃ~』


 タマモもブルブル震えている。

 ここはさっさと飛び降りて、各種防壁魔法で冷気を遮断するに限るな。


「行くよ兄さん」

「おう!」


 さあ、空中ダンジョンに乗り込むぞ!

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