ガチャ1134回目:一年周期
「アズ、タマモ。何が起きたか理解してるんだよな?」
『ええ、ただ予想していたわけではないの』
『わっちも、こうなるとは思ってなかったのじゃー……』
「ふむ。まあ怒ったりしないから、説明してくれるか?」
『うーん、その前に、マスターが忘れてる事を思い出した方がいいと思うわ』
そういやそんな話だったな。周囲の反応からして、こんなクソでかイベントではなかったみたいだけど。
『マスター、この世界で1年に一度起きる出来事は?』
『御主人が楽しみにしていたものじゃー』
「1年に一度? 誕生日以外で? 楽しみ……ああ、もしかしてダンジョンか?」
『そうよ』
『本当に忘れてたのじゃ?』
「忘れてたっつーか……ぶっちゃけ何月何日が発生日だとか、あんまり把握してなかったんだよな」
まずダンジョンは、毎年いつの間にか出現していたし、だいたいこの時期に出るくらいのイメージしかなかった。正直1年前の今なんて、黒色スライムの先がどうなるかとか、そんなことしか頭になかったしな。
「でもショウタ君。毎年この時期になると次のダンジョンの出現位置とか、テレビやネットが盛り上がってたでしょ? 気にしなかったの?」
「興味なかったし」
「でも、今は興味ありますよね? 調べなかったんですか?」
「次に攻略するダンジョンはどこにしようかとか、『バトルアリーナ』の設定とかしか頭になかったから……」
次に出てくるダンジョンのことなんて、記憶になかったのだ。
「『楔システム』による結界の拡張は意識していても、何のために広げていたのかを忘れていたと」
「そうなるなー」
「とっても旦那様らしい理由ですわ……」
『でもでも、ステータスが現れたタイミングは覚えてるでしょ?』
「……文字通り世界が変わった日ではあるんだが、あの頃は本当に色々ありすぎてな。記憶が定かじゃないんだよなぁ」
自衛のためにも本能が忘却してくれたんだろう。あまりにも嫌なことがありすぎた。
周りにいた嫁達が何も言わずに抱きしめてくれる。
「そういうわけでだ。全然把握してなかった」
「そう……。忘れていたわけではなかったのね」
「あ、義母さん。被害はどうでした?」
「特に大きな被害はなかったわ。ただ不思議な事が2つあったわ。まず、震源地が複数あるようなの。けど、津波の心配はないみたい」
震源地が複数同時かつ、津波は起きない……よく分からないが、大きな被害はないのならよかった。
「さて、まず俺の記憶が正しけりゃ、ダンジョンの出現のたびにこんな事になっていたら、流石の俺でも覚えてるはずだ。そんなのがあればダンジョンの発見も容易くなってただろうし、今回の地震は初めてのケースで間違いないか?」
「そうね。タイミング的にこの地震はダンジョン出現による影響の可能性が高いわ」
「ダンジョンは音もなく出現するのが定石だったもの。だからこそ辺境の地や海の中なんて場所に出て来たダンジョンの存在には困らされたものだわ」
やっぱり。
「んでアズ、タマモ。心当たりはどんなものだ?」
『ええ。1つは当然『楔システム』による結界よ。楔なんて名称なんだもの、地球の地層か位相かは分からないけど、楔を打ち込んで向こうの世界からの侵入を防いでいると仮定した場合、向こうからダンジョンが来るタイミングで衝突する可能性があった訳』
「その衝突が、さっきの地震?」
『可能性の話よ。普通に考えて、結界があるなら自動的に避けてくれそうなものじゃない?』
まあそれは俺も考えていた。『楔システム』もダンジョンの流入も、全てダンジョンの作り手が創り上げたシステムだ。今のこの状況も想定していなくちゃおかしい。
基盤システムを複数人が手掛けていたら話は別だが……。
「で、タマモも同じ考えか?」
『ちょっと違うのじゃー』
「ふむ。聞かせてくれ」
『今までと系統の違うダンジョンが出て来たから、世界が揺れたのかと思ったのじゃ』
「ほう」
今までのダンジョンをジャンル分けするなら、都市近郊、辺境、水中だ。それ以外となると……なんだ?
「それじゃ、答え合わせをしようか。アイラ、『ワールドマップ』を」
「畏まりました」
俺の言葉を待っていたかのように、アイラは長大なテーブルを取り出したが、そこでクリスが手を挙げた。
「ショウタ様、この場で宜しいのですか?」
「ああ、構わない。心配ありがとな」
「はいっ」
「では、皆様どうぞご覧下さい」
そうして、地図が広げられた。
それが何を意味するのか、初見の者達含め、全員すぐに理解できたようだ。緊張した面持ちで、地図を食い入るように見つめている。まあ、そんな中でシュウさんは分かりやすく目を輝かせていたが。
「さて、今回出たのが今までと同様であるなら、1101番から1200番なんだよな」
「そうなるわね。早速、見覚えのない位置にダンジョンが出現しているようね」
「海に出現したダンジョンの数が前回よりも多いわね。40個くらい増えてるんじゃないかしら」
「その中でも、比率としては日本海や太平洋に点在している数が多く感じるのぉ。作為的な何かを感じんか?」
「『楔システム』の結界に弾かれた影響かしら?」
「今までのように、アメリカ側のダンジョンを攻略して一気に広げるという戦法は、今後は難しくなりそうですね……」
と、支部長達が今後の事を思ってか各々が所感を漏らす。まるでここが支部長会議の場であるかのような雰囲気だな。別に良いけど。
にしても、随分と海ダンジョンが増えたな。今回やってきた魔王だか神だかは、支配地域が辺境だったんだろうか。
「……ん?」
俺は新たに出現したダンジョンに小さくない違和感を感じた。そのダンジョンの位置は北海道から見て遥か東……太平洋の北側辺りといったところだろうか。これまた辺鄙なところに出現したもんだが……。妙だな。
理由は分からんが、今までにない違和感を感じる。俺がたった1つのダンジョンに集中して凝視していることから、他の面々も気になったのかそのダンジョンを見つめ始めた。
「……あっ」
コイツ、動いているぞ!?
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