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ガチャ1085回目:第五層へ

「これまた、すげー光景だな」

『キュ~』


 第四層を突破した俺達は、渦潮が消えて静まり返った湖底を歩いて、問題の第五層へとやって来ていた。

 そこは一見すると第一層や第三層のような装いで、白い砂浜とそれを囲むように広がる大海原が存在していた。けど、その2つとは明らかに異なる点があるとすれば、遠くに見えるあの水の壁の存在だろう。第四層の階段から降りた状態で左右や背後を見れば、そこにはこのダンジョンではよく見た無限に続いていそうな海が広がっていた。けど、前方のあれはどう考えてもダンジョンギミックであり、ただの水の壁などではないだろう。その証拠に、水の壁は明らかに()()()()()()()()()()()()おり、その様相はまるで滝のようであった。

 海に降り注ぐ異様な大瀑布。これぞ正にファンタジーだが、あの上には一体何があるのか。……いや、クリスの言葉から推察するに、あの上に第六層が存在するのかもしれない。


「ん。これこそファンタジー」

「目の前に広がっているのは湖ではなく、普通に海なんですよね?」

「現実ではありえない光景ですね」

「見るのと聞くのとでは全然違うわね」

「……にしても、稼ぎ場と聞いていたが、本当に人が多いな」


 流石に第一層ほどの賑わいはないが、『初心者ダンジョン』の第四層の時みたいに、入口近くでは10組前後の冒険者達がキャンプをしていて、非常に賑やかだった。

 まあ、どちらかというと賑やかを通り越してざわついている訳だが。その理由は彼らの視線を見れば分かりやすいな。注目の的になっているのはルミナスと……ん? 俺??


「はて……?」


 なんで俺なのか考えていると、俺たちを囲んでいた冒険者の中から、女性が飛び出して来た。彼女はまるで何かを見つけたかのように真っ直ぐこちらへと駆け寄って来る。

 その人が見ているのはルミナスでも俺でもなく……。


「はぁーい、クリス! 元気してた?」

「ポリーナも久しぶりね」


 お、現地の友達か。ロシア語だけど何言ってるか聞き取れるのは、飛行機で移動中に軽く勉強したのと、『知力』パワーのおかげだよな。


「あなた達の事、とっても噂になってるわよ! 私のチームはここで1週間ほど過ごしてるんだけど、その間毎日のように飛んでくるあの通知って、やっぱりクリス達の仕業!?」

「ふふ、最初は驚くわよね」

「やっぱり! それじゃあこの方が、クリスが夢中の人なの?」

「ええ、そうよ。とっても素敵な人なの」

「わぁお。あのクールレディのクリスがねー♪」


 なんだか盛り上がってるみたいだし、少し離れたところで情報収集するか。


「クリス、せっかくの再会だ。俺は向こうでこの階層の情報収集をしてるから、そっちはいつもの電波塔を設置しながらでいいから、お喋りしてて良いぞ」

「あ、はいショウタ様。ありがとうございますわ」


 見せつけるようにキスをしてから、皆と一緒に移動する。そうして俺達が選んだのは、島の中で一番大瀑布に近い場所だった。といっても、狭い島である以上、どこを選んでも数十メートルの誤差でしかないのだが。

 あの大瀑布、目算でだいたい3kmほど先か? 結構遠いが、第三層の広大すぎる階層に比べればぬるく感じるな。


『キュ? キュ~♪』

『マスター様、こちらへどうぞ♡』

「ああ、頼むよ」


 ルミナスのぷにぷにボディを背もたれにしつつ、キュビラのモフモフを抱いて片目を閉じる。

 さ、調査開始だ!



◇◇◇◇◇◇◇◇



「……ふぅ~」


 終わった終わった。にしてもまあ、なんというか凄い階層だな、ここは。

 まず第四層から続くこの島は、マップでいうところの南西部分。そのほぼ角っこ近くに存在していた。そしてあの大瀑布はマップの右側……東の1/3ほどを占めていた。いうなれば大瀑布を正面とした場合、島の背後に見えている大海原は完全な偽装であり、ほぼ壁なのだ。そしてマップの7割ほどは海であり、その先にある大瀑布は『鷹の眼』をもってしても()()()()()()。いや、正確に言うならば、視えているのにダンジョンの壁と同じような感じで、そこから先に進めなかったのだ。

 だが、『アトラスの縮図』は明らかにその先にもマップが続いているかのように景色を描いていた。ということは、スキルの格によって進む事ができなかったんだろう。恐らくは、ダンジョンギミックを解いて自力で向こう側に辿り着いて初めて、その先の景色が拝めるんじゃないかな。


「エンリルなら行けてたのかな?」

『どうかしら? このギミックが一定ランクのスキルを弾くだけなら、通れたかもしれないわね』

『ですがその場合でも、『視界共有』だけ途切れていたかもしれないです』

「ああ、そのパターンもあるのか。それは困るな」


 まあ、エンリルならいち早く異変に気付いて即座に戻って来てくれそうだが。


『ですが、スキルを断ち切るとしても、マスター様との繋がりを断ち斬れるほどの防壁は無いはずですから、そこは安心して頂ければと』

「まあ流石にな。そんな意地悪すぎるギミックがあったらたまったもんじゃないしな」

『キュキュ~?』

『ふふ、私達ペットとは少し枠組みが異なりますが、マスター様にとても信頼されている先輩達ですよ』

『戻ったら挨拶しないとですね♡』

『あなたのお兄ちゃん達になるだろうから、きっとすぐ仲良くなれるわ♪』

『キュ~!』


 そんなペット組の話を眺めているとクリスが戻って来た。


「ショウタ様、ただいま戻りましたわ」

「ああ、おかえり。楽しめたか?」

「はいっ。それから昨日のドロップアップについて、早速影響が出ているようですわ。皆様とても感謝していて、お礼を伝えて欲しいと申しておりました」

「お、そうか。そりゃ良かった」


 注目されてたのはそれだったか。

 それに、ここでは魚肉が取れるんだっけ。となれば、魚肉を落とす魚と、クラゲみたいなスライムの2種は確定しているわけだな。

 この階層でもやっぱり、水中には視界を飛ばせてないから、マップにはモンスターがほとんど映ってないんだよな……。ああ全く、今から楽しみだ。

 

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