ガチャ1083回目:大台突破
『……』
『レイクアサシン』は、出現して湖面に降り立って以降、じっとして動く気配がない。恐らくは『思考誘導』に集中するためなんだろうが、俺達が誰一人として認識を外さないことを次第に知覚し始めたようだ。奴は態勢を変えると器用にも湖面でバックステップをし、俺たちから距離を取ろうとした。
「逃がすかよっ!」
『……!』
『ガキンッ!』
剣と、奴の腕にある鋏が激突する。
湖面を自由自在に動ける『レイクアサシン』の後を追うために、意識の何割かを移動に割かせることで見失わせる魂胆だったのだろうが、『水渡り』のスキルや移動系のスキルは、今更意識せずとも無意識に使えるように徹底的に反復練習をして刷り込んである。普通の冒険者なら今ので見失っていたかもしれないが、同じと思われては困るな。
「この程度で見失うとでも思ったか?」
『……!!』
種が割れて仕舞えば、コイツの芸もそこまでだ。まあ正直いうと、奴の姿を捉えたまま離さないでいるのは、一度知覚から逃せば再度捉えるのが苦労しそうであるのに加えて、誰を攻撃してくるかわからない点にある。もしこの場にいるのが俺だけなら一度意識の外に蹴り飛ばして、遊び相手にしても良かったんだがな……。
そもそも、コイツと遭遇したのがダンジョン内で助かった。ダンジョンならモンスターを倒す事で発生する煙から出現することが確定しており、待ち構える事ができる。けど、スタンピードだったり、向こうの世界で遭遇する時なんかは、遭遇して即座に感知するのは非常に難しい。そうなると、コイツの危険度は急激に跳ね上がる事になる。
ほんと、ダンジョンのレアモンスターシステムに助けられたな。
「終わらせてやる。ハーフブースト! 『閃撃双連・無刃衝Ⅳ』!」
『斬ッ!』
【レベルアップ】
【レベルが88から612に上昇しました】
無数の断片へと切り裂かれた『レイクアサシン』は、瞬く間に煙へと変わっていった。
「ふぅー」
『キュ? キュー?』
残心していると、ルミナスが足元から顔を出して上目遣いで見てくる。翻訳がなくても「終わった? 終わった?」と催促して来ているのが分かる。
「ああ、終わったよ」
『キュ~~!!』
甘え足りなかったのか、全力で飛びついてくるルミナスを宥めつつ、ドロップアイテムを確認する。宝箱は……記載にあったランダムボックス枠である『ミスリルの宝箱』と……。
名前:青の宝箱【レイクアサシン】Lv――
品格:≪遺産≫レガシー
種別:モンスタードロップ
説明:190ダンジョンでのみ出現する特殊な宝箱。
★特殊なモンスター枠のためレベルは存在しない。
いつものか。
「イレギュラーが出たりはしないみたいだな」
「そのようですね。『レイクアサシン』も出現は1体だけでしたし、強力な分存在そのものが特殊だったのかと思いますわ」
「だなー。それにしても……こんなん、いると分かってなきゃ対処なんてできないだろ。アズ、お前の世界ではこういう連中が溢れかえってたのか?」
『ふふ、それこそまさかよ。流石にこれほどまでに厄介な奴は、自分のねぐらに引きこもってたわ。それこそ、ここに潜んでいたインビジブルシュリンプが住まう地底湖の奥深くとかにね』
ああ、やっぱりこいつらに繋がりはあったのか。同族……というにはちょっと見た目が違うけど、系列としては同じモンスターだったのかな。隠蔽特化だったし。
『あ、マスター。『解析の魔眼』だけど現時点で27個目だから、作るとしても2個でお願いね』
「お、そうか。もうそんなに溜まったか。じゃあ今回は『解析の魔眼』を2個と、『魔眼適性』は1個にしておくか」
レベルをスキルに変えてと。んじゃ残るは『魔眼適性』を揃えるだけだな。
「ん。ショウタ、今『運』はいくつになったの?」
「そうね、そろそろ良い具合なんじゃない?」
「ん? そういやそうだったな」
レベルをスキルに変える事に夢中になってて、そっちの事を完全に忘れてた。
チェックしてみるか。
*****
名前:天地 翔太
年齢:21
レベル:12
腕力:52022(+51992)
器用:52026(+51996)
頑丈:52010(+51980)
俊敏:51895(+51865)
魔力:51782(+51756)
知力:51858(+51832)
運:100124
*****
「うん、10万超えてたわ」
「「「「『『『おお~!』』』」」」」」
『キュ~?』
よくわかってないルミナスを撫でつつ、今後の事を考える。
『運』をここまで伸ばしたのは出現させるガチャの内容をより良くするためというのは大前提ではあるんだけど、一度始めた以上魔眼セットはちゃんと最後までやり遂げたいんだよなぁ。まあ『魔眼適性』は正直言うと、無くても使えるっちゃ使えるんだけど、普段使いするには負担が大きいからな。やっぱりあるに越したことは無い訳で。
『風』の産地である『696ダンジョン』に潜んでいたボスの事を思えば、このダンジョンのボスも並大抵の存在じゃないだろうし、それにここの外には大犯罪者が潜んでいる可能性はぬぐいきれない訳で……それを思えば早い段階でガチャを回して、強くなるに越した事はないんだよな。
うーん……。よし、聞くか。
「クリス」
「はい」
「このダンジョン、何層まであるんだ?」
「!!」
俺から聞かれるとは思ってなかったんだろう。クリスだけでなく、他の皆も驚いていた。
「……一般的な認識としては、次の第五層が最下層ですわ。ですが、わたくしが『水』を手にした特殊な場所がこのダンジョンの層として認識されているのであれば、第六層が最下層になると思いますわ」
「そうか。第五層広い?」
「はい、第三層ほどではありませんが、広大ですわ」
「分かった。ありがとう」
なら、また乱獲する事になるだろうし、『魔眼適性』の生産を最優先とするか。
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