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ガチャ1081回目:超乱獲

 俺は素早く動いて『インビジブルロブスター』の背後に回り込み、背中からガッチリと掴み上げる。こいつは体長2メートルくらいの巨大ロブスターではあるが、攻撃魔法もスキルもない、隠蔽に特化しただけのレアモンスターだ。掴み上げてしまえばそのハサミも満足に振るう事もできまい。哀れにもジタバタともがくだけの哀れな存在と化してしまう。


「録画チェックはしてもらうけど、一応その前に今の段階でもできる事はしておこう。皆、触っておいてくれるか? もちろん正面からじゃなくて、後ろからな」


 見えない嫁達一人一人に触らせることで認識させ、全員がある程度その存在を認識させられる状態にする。それを確認した俺は、そいつを空中に放り投げ、矢で射抜いてやった。

 するとあっさりと奴は煙に変わり、そのまま何者にも変化せずにすぐ宝箱を排出した。


「おっと、あっさり」

「ん。レアⅡもなしなんだね」

「ちょっとガッカリですねー」

「けど、ドロップアイテムとして『インビジブルロブスター』の死体がそのままドロップしたな」

『ふわぁ、食べ応えありそうです……!』

『これは、1体だけでは足りませんね……!』


 まったくだ。全身がドロップアイテムとして出てくるのなら、もっと狩りたくなるよな。


「ショウタ様、宝箱です」

「ああ。ありがとう」


 テレサから宝箱を受け取り確認する。


 名前:青の宝箱【シュリンプ】Lv5

 品格:≪最高≫エピック

 種別:モンスタードロップ

 説明:190ダンジョンでのみ出現する特殊な宝箱。

 ★最高位の報酬しか入っていない最高レベルの宝箱。


 まあ、こっちは当然レベル5まであるよなー。中身はっと……。


 名前:メダル【シュリンプ】

 品格:≪最高≫エピック

 種類:トリガーアイテム

 説明:インビシブルロブスターを討伐した証。

 ★しかるべき場所に奉納することで道が開ける。


 うん、これも変わらず。


「んで指し示す場所は……この地底湖の中か。それはまあ後で確認するとしてだ」

「ショウタ様、ここからは乱獲のお時間ですか?」

「そうだなー。やり方はどうするかな」


 レアⅡがいない場合でも、特殊レアがいないとも限らないしな……。


「一応誰か1人でも掴まえておけば見失う事はない訳だし、クリスの水牢に閉じ込めておけば複数同時撃破もできるんじゃない?」

『良いわね、それ』

『豪勢な食事になりそうですね♡』

『キュー♪』

「そうだな。皆、手分けして頼む」


 そうして、各自が方々に散らばりエビ狩り祭りが始まったのだった。



◇◇◇◇◇◇◇◇



「……なあ、もう良いんじゃないか?」


 クリスの作った生簀には、『インビジブルロブスター』がギッチギチに詰め込まれていた。普通の生簀は中に入った生き物が限られた範囲を泳ぎ回る事ができるが、こいつらの場合動き回られて認識できなくなっては大変なため、クリスが1体ずつ拘束を施し動けないようロックが掛けられていた。そのため、この生簀の中には身動きができないまま『インビジブルロブスター』が何十体も積み上げられて行っていたのだが……。1体に付き5段まで積み重ねられ、それが横に3列、奥にも何列か存在していた。


「ギチギチですねー」

「沢山集まりましたね」

『すごいですー!』

『これが全部丸ごとドロップですか……。凄い数になりますね』

「そうだな。でも、いくらモンスターとはいえ、やりすぎは良くないぞ」


 昨日の『ブレードフィッシュ』ほどではないとは思いたいが、かなりの数が集まっているはずだ。奥に何列あるか、俺は数えてないし。


「そうですわね……。わたくしも少し、数えるのが億劫になっていたところですわ」

『キュー♪』

「というわけで、皆中断して集合ー! この辺にしておくぞー!」


 そうして声を掛けると、すぐに戻ってきた嫁もいれば、100体が近かったのかしばらくしてから戻ってきた嫁が何人かいた。まあ、アズとミスティとシャルの3人なんだが。

 彼女達の両手にはしっかりと『インビジブルロブスター』がガッチリと捉えられていた。アズは分かるけど、ミスティとシャルは器用なことをするよな。逃げようとする奴を足で踏みつけながら、両手は銃/弓で攻撃を仕掛けつつ、ドロップアイテムは風を使っての回収作業。マルチタスクを幾つやってんだか。


『クリス、これもお願いねー♪』

「ん。よろしく」

「いやー、張り切りすぎちゃったわ」

「順番にお願いしますわね」


 あーあー、まだ増えるのか。


「えーっと、それで結局、全部で何体だ?」

「そうですわね……(5段×横3列×奥6列)+追加6体で、96体ですわね」

「うわ……。ちなみに昨日の『ブレードフィッシュ』って、何体だった?」

『確か82体だったかと』


 超えてんじゃん。


「皆、やりすぎだね」


 そりゃあうちの家族は人数が多いし、1人当たり複数個食べる前提だとすればこれくらいの数は必要になって来るだろうけどさ。またいつでも来れるんだし、飛ばし過ぎでしょ。


「ん。けど、こんなに狩れるのは今しかないと思ったの」

「スタンピード間近の状態で湧き設定が限界まで膨れ上がったタイミングじゃないと、こんなに山ほど狩れないと判断したのよ」

「……まあ、確かにそうかもな」

『それに、今日を逃したらここも賑わうと思ったのよー。人で溢れかえるだろうし、隠れられるといっても弱いモンスターだもの。マスターの力でこの階層もドロップ率が上がる事を考えれば、人でごった返す可能性が高いわ』

「あー……。まあ、そうか」


 弱くて高品質であることを思うと、綿毛虫がドロップする綿毛虫の玉糸を思い出す。連中は元々のドロップ率が渋く、『運』が10程度では100体倒してようやく1個ドロップするかしないかと言われるほどの激渋ドロップだった。あれもドロップアップの影響で多少マシになったそうだが、今回のドロップ対象は嗜好品だ。それに綿毛虫と違って倒す事に顰蹙を買わないし、美食という点を考えれば人で溢れかえるのは確実だろう。彼女達の言い分もわかるな。

 それに、高ランクがやってくれば空気を読んで身を引く制度がまかり通っているとはいえ、海外だとどこまでそれが浸透してるかも不明だしなぁ。


「そういうことなら仕方ないな」

『お仕置きは……?』

「もしかして期待してる??」

『そ、そんな事ないわよ?』


 アズが挙動不審である。その反応はどっちとも取れるが、まあ別に誰かに迷惑かけた訳でもないし、この程度のわがままは可愛いもんだ。


「お仕置きはしないよ」

『そ、そう』


 やっぱ、残念そうだよな。

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