ガチャ1079回目:不可視のモンスター
地底湖。
隠形タイプ。
美食。
「うーん……なんだろ?」
「ショウタ様のお口に合う物が出るといいのですが……」
「まあそこは大丈夫だろ。俺がお願いしたとは言え、アズが自分から取りに行くくらいだしな」
『はいっ、マスター様ならきっと気に入ってくださるかと♡』
『そうですっ! とーっても美味しいんですよっ!』
キュビラとリリスがいつになくハイテンションだ。どちらも尻尾がよく揺れている。
でもそのモンスター連中、困った事にまだ俺の目に映らないんだよな。『鑑定』系統も、相手を認識できなきゃ見る事はできないし、相当隠れるのが上手いモンスターなんだろう。問題があるとすれば、俺ですら発見が困難なソレを、一般の冒険者が狩れるのかという点だ。高級食材がゲットできる環境が出来上がっても、狩れなきゃ結局意味ないしな。
「アズさん達の反応を見る限り、お酒のアテにも良さそうですよねー」
「そんなに良いものなら、今晩か明日の食事は豪勢なものになりそうよね」
「期待してしまいますわ」
『キュー? キュキュー?』
「勿論ルミナスにも食べさせてやるからなー」
『キュー♪』
そんなふうに団欒を続けていると、アズが戻って来た。その両手に、何かを捕まえているが……なんだ? 透明の何かがいる……?
「アズ、それ……か?」
『ええ。流石のマスターでも視えないでしょー?』
「ああ。まったく視えん」
明らかに何かがそこにいるのは分かるんだが、姿形が全く見えない。ただ単に透明になるだけの能力なら、水が全身を覆う事でその輪郭くらいは視えるはずなのだが、それすらも見えない。
『んふー♪』
俺ができないことを見つけてアズは満足そうに微笑んだ。
『マスター、答えはいる?』
「いや、ちょっと考えさせてくれ」
『はーい♪』
まず、握ってるアズの手はしっかり認識できている以上、周囲の存在を全て認識不可にしたり、希薄にしたりするような荒唐無稽な能力ではないのは確かだ。そしてアズが掴めている以上、存在を無視させる事もできないらしい。気配は変わらずそこにあるしな。だが、直視する事はできない。
『解析の魔眼』なら異質な存在を見る事はできるだろうが、それはちょっと一般的ではない。ダンジョンは理不尽なところはあれど、ダンジョン制覇をするための道順であれば、本来の解決策というか、正規のルートは存在しているはずなのだ。逆に『ユニークボス』や『アナザーボス』なんかは、寄り道だから正規のルートなんて存在せず、理不尽な隠し要素があるんだろうけど。
なら、現状わかっている点から考え直してみるか。相手は気配だけはダダ漏れで、触れられている以上触覚は阻害できていない。けど姿形や音はまるで感知不可能。気配は疑いようのない物だが、視えないからこそ存在を疑ってしまっている訳だ。
となると、気配が感知できる事で逆に自分の感覚が信じられなくなって、その隙を突いてきているのか?
「存在を疑う事で視えなくなっているのか……?」
『……♪』
なら、疑う心を忘れ、感じてる気配を絶対的な物として認識すれば……。
「おっ」
視えた。
アズの手の中でビチビチと威勢よく暴れている半透明のエビが。
*****
名前:インビジブルシュリンプ
レベル:15
腕力:60
器用:100
頑丈:60
俊敏:50
魔力:100
知力:20
運:なし
【Aスキル】隠形
★【Eスキル】意識転移、透明化
装備:なし
ドロップ:インビジブルシュリンプの剥き身
魔石:中
*****
「透明なエビ……まんまだな」
しかも、レベルが15しかないくせに魔石のサイズは中と来た。こんなん、レアモンスター級に特殊な存在だぞ。
『んふ、流石マスター。自分で答えを見つけるなんて流石ね♪』
「あっ、あたしにも見えたわ! ……うーん、最初から剝かれた状態でドロップするなら、食べるのも楽そうね。ダシは取れないんでしょうけど」
「ん、バッチリ見えた。異世界のエビならきっと美味しいはず!」
「うぅ~、見えません……」
『キュ~??』
「エビ? エビがいるんですか?」
「ショウタ様、どうやって見れば良いのでしょう」
ふむ。ハンター、ガンナーである2人は視覚情報よりも気配を第一に考えてるからか、こいつの特性も即座に見破れたようだな。他の3人とルミナスはまだ困惑しているようだけど、教えてあげればすぐ視えるようになるだろう。
『あ、マスター。実はコイツの見つけかたはそれだけじゃないの。直接触れれば見えるようになるのよ』
「それって、実際に掴む事でいる事の確証が持てるからか?」
『そうかも?』
「そこは分かってないのかよ」
『だってー。人語を解せる者の中に、『意識転移』? なんていう特殊なスキルを持ってる奴なんて見た事ないんだもん』
「なら仕方ないか」
そうしてアズは見えない彼女達一人一人に触れさせ、見えるようにしていった。
「わ、立派なエビですね~!」
『キュキュ!? キュキュ~!』
「隠蔽に特化している為か、全体的に弱いモンスターのようですわね」
「これは、映像を見たときにイリスちゃんが踊り食いをしたそうにプルプルしている姿が目に浮かびますね」
「それな~」
皆へのおみやげもかねて、乱獲するとしますか。マップでは見えないから総数は不明だが、そこかしこから気配はしているし、この湖には数百体は潜んでいるだろうからな。
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