ガチャ1078回目:観光資源
俺達は渦がなくなり平和になった湖底を進んで、新たに出現した洞窟の入口までやって来ていた。
「ここが新たに出現した洞窟なんですね」
「ん。岩陰にひっそりと入口があるあたりがいやらしい」
「こんなのばっかねー、ここ」
「性格悪いですねー」
「この先のモンスターが、新たな資源として使えればいいのですが……」
「美味しく食えればなんでも良いさ」
『キュー♪』
んじゃ、マップもそうだが一度視界を飛ばしてる俺が一番前で良いだろう。洞窟内は最初こそ湖と繋がっているため水没していたが、途中から水は無くなってしまったため、ルミナスには水を纏って浮いてもらう事にした。流石に新しい場所という事もあってか、安全のためにもちゃんと空気を読んで、俺にのしかかって来たりはしないようだった。
まあでも、洞窟そのものが新鮮なんだろう。ルミナスは楽し気だ。
『キュー、キュキュー♪』
洞窟内は光のない完全な暗闇であったため、嫁達に複数の明かりを付けてもらいつつ、足りない部分は『暗視』スキルでカバーする。
そうして進み続けていると、俺たちは目的の場所へと到着した。
「おお、生で見るのはやっぱり違うな」
ここの壁や天井は、様々な色味を秘めた光源が埋められているのか、常に明るく幻想的な光景を作り上げていた。
「なんて幻想的なのでしょう」
「綺麗ね……」
「これだけでも十分資源足りえますわ」
『ここは……宝石湖ですか。となると……』
『宝石湖……!? では、あれがいるんですね!』
お、キュビラとリリスは知ってるのか。2人でヒソヒソと話して盛り上がっている。まあでも、俺の耳にはバッチリ届いてるんだけど。
となると、アズも当然知ってそうだな。
「この風景を肴に飲むのも良さそうですねー」
『お、良いわねーそれ♪』
「ん。でもどこか懐かしいね?」
「ん? ああ、そうだな」
この光景、『ハートダンジョン』最下層である第五層の前半部分にそっくりなのだ。あっちも湖底に埋められた水晶が様々な輝きを乱反射して、幻想的な光景を作り上げていた。一応あそこはデートスポットの最深部に位置してはいるのだが、その光景を一目見たいとカップルだけではなく様々な人たちからの関心が集まり、毎日予約がひっきりなしに来ているという。
第一層から最下層までの道のりはそれなりに長く、総じて4kmから5kmくらいはある。そんな道中、管理者権限で本来いたはずのモンスターは全て近付かせないようにしてあるとはいえ、道を踏み外せば当然モンスターがいるのだ。やってくる観光客の中には、方向音痴だったり地図が読めなかったり、無駄に自信があって自身や周囲を危険に晒す大馬鹿者が紛れ込むのは世の常であり、そんな彼らを警護する為の人員は必要不可欠。
特に『ハートダンジョン』では、引退した冒険者の受け皿として彼らを働き手として受け入れており、俺が改造する前から活躍していたのだが……最近はかなりの人手不足で大変そうなのだ。なんせ、どこぞの誰かさんがスキル普及率を根底から覆し、一般的な冒険者にも手に入れやすい環境を整えたのだ。それにより、スキルが手に入らず先に進めなくなり、引退せざるをえなかった者達が復帰を望むようになったのだ。
更には以前不意に誕生してしまった『聖域』を有効活用するべく、サクヤさんが新たに土地を買い取りそこに大掛かりな治療用の設備を建設。そこで大怪我により引退していた冒険者達を受け入れ、現役に復帰させているのだという。勿論ただではなく魔石ノルマが課せられるそうだが、今の環境なら余裕だろう。
んでその結果、大量に雇っていた引退冒険者達がここぞと辞めていき、『ハートダンジョン』は猫の手も借りたいくらい人員不足に陥っているとかで、ヨウコさんが嘆いているとかなんとか。……正直ゴメンとしか言えなかったので、孤族の子達を手伝いに派遣できないか検討中である。
まあでもそれはそれで、デートや景色に集中できなくなりそうなんだよな。困ったものだ。
閑話休題。
「観光資源としては使えるだろうけど、道中が『ハートダンジョン』以上に大変だから、ここまで人を呼ぶのは難しいだろうな」
「そうですね……」
「『泡魔法』が必須ですもんね~」
「それに、どんなに綺麗でも危険は危険だ。向こうはただの通り道でしかなかったが、こっちはモンスターが潜んでるんだし」
「遠くで眺めるだけならまだしも、近付くなんて危険極まりないわよね」
「ん。『妖怪ダンジョン』みたいに階層入れ替えとか魔改造できなくもないけど、そこまでする意味はない」
「そうだな。さっきの肉のドロップアップだけでも十分な気がする」
「残念ですが、欲をかきすぎるのは良くありませんし、その通りですわね」
クリスが納得してくれるなら、方針は変えずに済みそうだな。
んじゃさっそく、モンスターの確認といきたいところだが……。
「やっぱ、姿は見えないな? 透明度の高い水だから、それなりに奥まで見えてはいるんだが……」
「変ね。気配はするんだけど、どこにも見当たらないわ」
「ん。……乱射すれば、その内当たるかも?」
「それはそれで面白そうですけど、やっぱり直接は見ておきたいですよね~」
「ショウタ様、マップには映っていないのですか?」
「……映ってないんだよな」
「気配はすれども姿は見えず、ですか。完全に隠蔽特化のモンスターのようですね」
「まるでルミナスだな」
『キュ~?』
俺達が盛り上がっている間もペット組は話に入ってこない所からして、心当たりは絶対あるよな。深窓の令嬢だったリリスですらも、さっきから口を手で覆って何も言わないようにしているところからして、かなり名の売れた存在みたいだし。
「……アズ、ここのモンスターだが、美味いか?」
『そうね、美食として有名だったわ』
「リリスですら知ってるくらいには?」
『そうなるわね~』
「なるほど。……じゃあ1体捕まえて来てくれるか?」
『任せて♪』
そう言ってアズは湖へと飛び込んだ。
さて、どんなのが出てくるかなっと。
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