ガチャ1073回目:西側探索
さて、西の湖に来たわけだが……。
「でけえな、あの渦」
『キュー』
直径30メートルはありそうな巨大な渦潮だ。ここからではその中心部は深すぎてこの角度ではよく見えないが、あの規模からして湖の底にも届いていそうなんだよな。
んでメダルは……。うーむ、やっぱりどう見てもあの渦の中心部……しかもその最底辺を指している気がするな。アレは直接行くしかないんだろうなぁ。外から放り込んでも多分ダメかもしれない。
まあ、25個もあるから1個くらい無駄にしても良いんだけどさ。
「ルミナス、あの渦はお前ならどうだ?」
『キュー? キュキュー♪』
『面白そうだって言ってるわよ』
「あー、つまり巻き込まれても遊び半分で突破できるってことか?」
『キュ!』
さすがは海流の王か。この程度の渦、屁でもないと。
「んじゃ悪いけど、東側と同様湖の中を調べたい。お願いできるか?」
『キュキュ!』
ビシッと敬礼を披露するルミナスに『視界共有』を施し、片目でマップを確認する。
「んじゃ、頼むわ」
『キュー!』
そうしてルミナスに調査を任せてから5分後。2度目とあって慣れたのか、ルミナスは西側の湖も完全に網羅して戻って来た。当然、湖の底も渦の底もだ。
簡潔に言えば、こちらにもモンスターはいなかった。東側と同様にぽっかりと開いた穴の中に次層へ続く階段が存在していたくらいで、特別何もないのだった。
『キュー♪』
「よしよし」
ルミナスを撫で回しつつ思案する。こうなってくると考えられるのは……ふむ。
「クリス、この階層に石碑は?」
「見つかっていませんわ」
「ほぉ、未発見か」
まあ、あんな鬱蒼とした密林の中にポツンとあっても見つからないよな。もしくは湖の中とか? 実はルミナスの視界に入ってはいたけど、マップを埋めるのに夢中になっていたのと、ルミナスの泳ぎが高速すぎて見逃してた可能性もあるな。
「ここは探しても良いんだけど、もうなんとなく読めたしなぁ」
「ん。私もなんとなく予想がつく」
「第一層の焼き直しよね?」
「ですがショウタ様と一緒に行動していなければ、危ないから近付かないでおこう程度の認識だったと思います」
「ですねー。風景や背景としてしか考えられていなかったかもです」
「まさかあの渦が他の入口になっていたとは思いもよりませんでしたわ」
「ん?」
他の入口……??
なんか、気になる言い回しだな。
「クリス」
「え? あっ、はい……」
つい言ってしまったと言う顔をしていた。
「安心しろ、俺もコレがそうなんじゃないかなって思ってたんだ」
「いえ、申し訳ありませんわ。これが全てではないんです」
「……ほぉ?」
これが全てではない。と言うことは、『水』を手に入れる際にクリスが挑んだ試練は、この渦に飛び込むことだけではなかったと言うことか。
あの渦が試練の一部でありつつも、まだこの世界に残り続けているという事は、他のギミックも兼ね備えているという事だろう。なら、姿形が一緒なら、その時の試練としての側面は残り続けているのだろうか?
……多分残っていそうだな。正攻法以外の手段であの渦の中心に近付けば、ちょっとばかし面倒な事になると『直感』が言っている。まあ、ちょっと面倒というだけで、俺にとってはさほど危険ではないんだろうけども。
「クリス、あの渦は空から中心部に近付けばどうなるか知ってるか?」
「渦潮が襲ってきますわ」
文字通り周囲の水全てが敵になるのか。
「俺が試しに飛び込んでみたらどうなると思う?」
「ショウタ様の今の実力なら、恐らく全て避けきれると思いますわ。ですが、始まったら最後、いつまで続くのか誰も分かりませんわ」
「今まで誰か挑戦したのか?」
「ドローンを飛ばしただけですわね。即座に撃ち落とされましたが」
「なるほど」
「殺傷力を極限まで高めた水の砲弾がドローンを貫いた事で、誰も挑戦しようとは思わなくなったそうです」
水の砲弾。なんだか覚えのある話だな。
ちょっと気にはなるし、本来のギミックを消化した後でも残っていたら挑戦してみるか。
「んじゃ、メダル交換に行ってくるか。一応安全のために俺と……ルミナスと、クリスが来てくれ」
「はい」
『キュ~』
モンスターもいない上に、ルミナスが造った海流よりも弱い流れの渦潮だ。普通の人間じゃ無理でも、今の俺達なら問題ないだろう。それに、『水』を得る前のクリスでさえ突破できたんだ。今の俺が負けてたまるかってんだ。
「お気をつけて、ショウタ様」
「ファイトー!」
『おにいさん、がんばって!』
「ん。いってら~」
『失敗しても救助してあげるわよ♪』
「不吉なこというなよ。そん時はルミナスに手伝ってもらうから」
『キュ!』
「勇者様が波に飲まれるシーンを子供が見たら、泣いちゃうかもしれませんねー」
『そうですね。マスター様が楽しそうにしてさえすれば、問題ないかもしれませんが』
「家にいる嫁達を心配させたくないから、頑張るよ。……クリス、一応聞くけどコツとかある?」
「『水泳』スキルとある程度のステータスがあれば、あの程度の渦はどうってことありませんわ。それに、今の私達には『泡魔法』もございますし呼吸に困る事はありません」
「そっか。でも、クリスが挑戦した時は『泡魔法』はまだなかったんだよな? なら、俺も使用しないで挑んでみたい」
「ふふ、承知しましたわ」
てか、その『泡魔法』も使ったら最後、渦から敵認定される可能性が無い事も無いしな。……まあ、渦をガン無視して湖の中を好き勝手動き回ったルミナスの身に何も起きてないから、『泡魔法』くらいなら大丈夫な気もするけど……使ったら負けな気がする。
読者の皆様へ
この作品が、面白かった!続きが気になる!と思っていただけた方は、
ブックマーク登録や、下にある☆☆☆☆☆を★★★★★へと評価して下さると励みになります。
よろしくお願いします!










