ガチャ1068回目:魔法実験
『シャアッ!』
『シャアアッ!』
「ほいほいっと」
飛び掛かってくるマムシの首を落とし、なおも飛び掛かってくる頭と胴体は跳躍で回避。更にそこを狙いすましたかのように新手のヘビが襲い掛かって来るが、それも事前に察知していたので難なく撃破。
それにしても、久々にまともな『二刀流』の出番が来たな。この密林で戦う場合は、入り組んだ地形による狭さに対する対策と、攻撃と同時に防御が可能な武器を選ぶ必要があるからな。それを考えると、このチョイスが一番最適だろう。魔法主体でも良いんだが、いかんせん魔法だと倒してやった感が薄いんだよな。爽快さはあるんだけども。やろうと思えば『風の鎧Ⅶ』なんかを発動すれば、攻撃後の回避が不要になる可能性が高いんだが……できれば回避は常に磨いておきたいしなぁ。あまり甘えるのは避けたい。
いやでも、今後の戦闘バリエーションや、『戦乱波濤』の進化を考えれば、色んな戦いを模索・実践していくのも大事か。
「んじゃまずは……『風の鎧』」
俺を中心として暴風が吹きすさび、その風が実体となって身体に纏わりつく。緑に近い半透明の力が、俺の周辺で蠢いている。これなら連中の攻撃……もとい最後っ屁を完全に無効化出来そうな気がするな。
レアモンスターが使用しているところは度々見てきたが、自分が使うのは何だかんだ初めてだな。
「ん。珍しいね、ショウタが防御系の魔法を使うの」
「初めて見るかも」
「ですね~」
「ま、色々試してみたくなってな」
『自分にできる事を振り返るのは大事よ。ま、できることが多すぎたせいで、そこに辿り着くのが遅すぎだけど~』
「はは、かもな」
その後、密林の中を歩き続ける事1分ほど。モンスターと出会うまでの道中でも、この『風の鎧』の効果は発揮され続けた。道を塞ぐ雑草やら枝葉なんかは俺が近付くだけでバラバラに切り刻まれ、本来あったであろう環境的な妨害のことごとくがこの魔法の前に無力化されて行ったのだった。
確かにこれは便利ではある。だがなんというか危険極まりない魔法でもあるんだよな。こんなんじゃ嫁も含め、誰も近寄れないじゃないか。……まあ、密林でイチャつく気はないけどさ。
『『シャア!』』
『シャアア!!』
「お」
と思案していると3体のマムシと遭遇した。先ほどと同様に襲って来たマムシ連中の首を落とし、最後っ屁を回避せずに眺めてみる。
『ズバッ!!』
分断された頭も、地面を這って近付いて来た胴体も、全て枝葉と同じようにバラバラに刻まれ、煙となって消えていった。
「なるほど、こうなるのか」
確かに便利だな。……そういや、スキル保管袋にも『風の鎧』はあったよな。改めて視てみるか。
名前:風の鎧
品格:≪遺産≫レガシー
種別:マジックスキル
説明:風の鎧を身に纏い、他者からの攻撃に対して高い防御能力を得る魔法。風属性に分類される魔法の所持数、及びスキルレベルに応じて効果上昇。
ふむ。防御能力どころか、迎撃機能まで備わっている気がするのは、スキルがⅦにまで強化されているのと、関連スキルが多数あるおかげか。
今まで使ってこなかったのがちょっと勿体なく感じるくらいには便利な魔法だった。今後も鬱蒼とした密林やら森とかでは積極的に使っていくべきだろうか?
さて、他の鎧系統も4属性は全てⅦまで強化してある。どんな結果になるかみてやるか。
「『風の鎧』は解除して、次は『土の鎧』だな」
俺を中心として土砂が舞い、それらが集まり砂岩となり、いくつもの岩塊が発生して周辺を回り始めた。さっきまでは半透明なエネルギーが守ってくれていたけど、今度は物理的な岩の壁か。俺が身体を動かせばそれになぞるように寸分違わず連動してくるし、動きが阻害されることは無いみたいだが……いかんせん、視界が塞がれるのはちょっとな。物理的な防御力は多少なりともありそうだが、俺ほど『頑丈』が高いと、その機能も今更感があるよなぁ。
ま、とりあえず試すか。
◇◇◇◇◇◇◇◇
結果的に、雑草や枝葉には押しのける以外に何ら効果はなかったし、時折隙間から入ってくる始末だった。たぶん攻撃じゃないからだろうけど、これにはちょっとマイナス点。けど、一応飛来してくるマムシの頭や胴体には物理的な岩が行く手を遮り、圧し潰して迎撃すらしてくれたので、これはプラス点。プラマイ……多少プラスくらいかな。これで迎撃してくれなかったら『防御能力(笑)』だっただろう。
次に試すは『水の鎧』だな。
「これは……どうなんだ?」
『泡魔法』とは異なり周囲を清流が囲んでくれているが、この水が一体何を防いでくれるというのか。雑草や枝場には当然効果は無し。マムシの頭や胴体は弾いてはくれているものの、風や土と違って再起不能になるような破壊効果までは得られていない。これは、ハズレかな?
「ショウタ様、失礼しますわ」
「ん?」
「サンダーボルト」
『バチチッ!』
不意にクリスから呼び止められ、振り返ると同時に雷光が飛来する。回避することなど頭になく、その煌きを目で追っていると、周囲を漂っていた清流が障壁のように広がり雷光と激突。そのまま雷のエネルギーは清流の中を伝播していき、最終的に地面に流れて霧散して行った。
「おおー」
「『水の鎧』の本質は、このようにエネルギーの吸収・分散にありますわ。参考になりましたか?」
「ああ、ありがとう。……ごめん、ハズレとか思っちゃって」
「いえ、わたくしも失礼しましたわ。理解していただくためとはいえ、いきなり攻撃をしてしまって……」
クリスは普段温厚だけど、どうやらちょっとムッとさせてしまったらしい。まさか『雷魔法Lv5』のサンダーボルトで、いきなり実践してくるとは……。皆も驚いて固まってる。
まあ、自分のアイデンティティーを否定されたら怒るのも無理ないか。反省しよう。
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