ガチャ1066回目:形状把握
俺達はいまだに祈りを捧げ続ける彼らを放っておいて、少し離れた場所に上陸する。ルミナスは地上にも上がれるが、どこから探索するかはまだ決まっていないので水面に待機だ。
『キュー、キュキュー?』
『そうよ。皆、あんたが助けてくれたことに感謝してるみたいよ』
『キュー♪』
「なあクリス、ロシアの人達は信心深いのか?」
「そうですわね……。冒険の前には願掛けや生還のための祈りなど、迷信に縋る者が多いですわ。わたくしはそれほどでもないのですが」
「ふうん。……とりあえず、アレに害はないんだな?」
「はい、そこはご安心頂ければと」
んじゃ、早速視界を飛ばすか。まずはこの階層の全景を見ておかないとな。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「ふーむ……。変な形の島だな」
「やはりこのような形でしたのね」
「ん。8の字?」
「それかメビウスの輪ね。でも島が角ばってるし、砂時計みたいな感じ?」
「島の陸地部分も狭くはないですし、何かに例えるのは難しくないですかー?」
皆が島の特異な形状にあーでもないこーでもないと盛り上がっているが、結局のところこの島は、ほぼ真四角の広大な島の中に、巨大な湖が2つも存在しているということだ。そして俺たちが出てきたのは東側の湖の最南端で、西側の湖では巨大な渦が発生している。まるで蟻地獄のような様相だが、アレはどういうギミックなんだろうか……。
そして島の外側は第一層や第三層同様砂浜とビーチではあるが、10メートルもしないうちに不可視の壁にぶつかるよう設計されていた。念のため外周部分はアズとクリスにも視点飛ばしを手伝ってもらったが、水中にはこれといってモンスターの姿も宝箱も存在しないようだった。
逆に、陸地の大部分にある原生林には、それなりの数の宝箱が眠っているようだった。その内のいくつかは直接拝んでみたが、全て『金の宝箱』だった。
「クリス、この宝箱の中身って、高確率で『泡魔法』とかが入ってたりする?」
「はい♡」
「なるほど、そういうことか」
第一層や第二層のレアでも手に入るけど、『運』の兼ね合いもあるからこっちの方が入手手段としては効率が良いもんな。それくらい流通手段がなけりゃ、ここまで第二層以降とかも賑わったりしないか。
「今更だけど、第二層以降に進出する冒険者って、どのくらいの割合で『泡魔法』持ってるんだ?」
「そうですね……。第一層の時点ではまばらですが、第二層に来る冒険者となると8割くらいでしょうか。レベルが2桁さえ超えていれば最初の海底洞窟は簡単に超えられますから」
「なるほど」
「ちなみにですが、第三層は誰も狩っていないので良いとして、第四層に来る冒険者は全員持っておりますわね」
第四層への入口は、それなりの水深だからなぁ。間が悪いとクリオネも邪魔してくるし、安全策としては必須なんだろうな。
「けど、クリスが『水』を入手した時は持っていなかったんだよな?」
「そうですわね。あの時は無我夢中でしたが、なんとなくできる気がしたのです」
クリスは懐かしむような表情を浮かべた。そしてその視線の先は、マップの西側だった。
……まさかとは思うが――。
「クリス、『水』の試練ってこの渦に飛び込むことだったりするのか?」
「……! そうですわ。どうしてお分かりに??」
「いや、なんとなく。以前に入手に関してふんわりとした説明も受けていたしな。『泡魔法』も持たずにダイブして、勇気を示したら貰えるタイプだったのかな」
俺ならこの渦に飛び込めるだろうか?
実際に見てみないことには判別できないが、今の俺ならともかく前の俺だったら……。どうだろうな、確信めいた何かがないと試すに試せないかも。
でもクリスの言い分的には、『直感』に従った感が否めないんだよなぁ。聞いてる限りではクリスは『水』を得る前から海に慣れ親しんでいたのかもしれないし。俺の場合は泳ぎが得意とは言えない……いや、ステータス発現後は高確率で溺れるようになってしまったから、どんなにレベルを上げたところで確信には至らなかっただろうな。『水泳』のスキルを手にしてようやく自信が戻って来たまであったし。
「渦は後で確認するとして、まずは雑魚敵だな。森の方は確認できたし、東西南北変わらずに同種の敵だったけど、湖の中がなあ……」
『これだけ視界が悪いと、水中に視点を動かしても探すのも一苦労よね』
そうなんだよなぁ。透明度の低い水中の探索は、視界を飛ばすだけでは確認が難しい。というか面倒が勝つ。でもここでマップ機能を全開にするのは時期尚早というか、負けた気になるので使いたくない。
『キュー? キュキューキュキュキュ』
「ん?」
『あ、そうね。マスター、ルミナスに湖の探索してもらうのはどう? 水の中で、この子の速度に勝てる者はいないわよ』
「あー、確かに。それは良い考えだ。手伝ってくれるか?」
『キュー♪』
俺はルミナスに『視界共有』を施し、マップの埋め方を説明した。浅い場所なら問題ないが、深い場所なら完全把握に2、3周する必要性を説明する。
まあルミナスは頭の良い子だし、軽く説明しただけで要点はしっかり把握できたようだ。
『キュー。キュキュ!』
ビシッと敬礼して見せる。相変わらず手が頭に届いてないんだけど、可愛いから良いか。
「それとモンスターは全部無視して良い。お前なら回避するくらい訳ないとは思うが、弾幕を張られた場合の対処として、『金剛外装Ⅴ』と『超防壁Ⅹ』を取得しておけ」
『キュー。キュキュ!』
『んふ、過保護ねー♪』
いくらうちに聖女がいてどんな怪我でも治せるからといって、俺は身内に怪我なんてさせたくないしな。ペットになった以上とことん甘やかすだけだ。
「んじゃ、行ってこい!」
『キュー♪』
さて、何が映るかなっと。
読者の皆様へ
この作品が、面白かった!続きが気になる!と思っていただけた方は、
ブックマーク登録や、下にある☆☆☆☆☆を★★★★★へと評価して下さると励みになります。
よろしくお願いします!










