ガチャ1064回目:真の担い手
地面に突き立てられたポセイドンの槍を、皆が囲んでしげしげと眺めている。
「また槍なのですね」
「ん。ショウタは槍と縁があるね?」
「不本意だけどな」
「それにしても、罰ですか……。いったいどういうものでしょう?」
「ショウタは触っても大丈夫だったの?」
「いや、なんかめっちゃ冷たかったから、もしかしたらそれが罰なのかもしれない」
この武器の特性がそうなだけかもしれんが。
「勇者様は結構な数のスキルをお持ちですけど、それでも罰が発動するのは厳し過ぎる気がしますねー」
『ふーん……。ねえクリス、貴女が持ってみなさいよ』
「え、わたくしですか?」
『『水』と『水の親和力』のスキルがある以上、親和性で言えば断トツですよねっ』
「まあ確かに。クリス、頼むよ」
「ショウタ様の頼みとあらば。……いきますわ!」
クリスが槍の前に立つと、ゆっくり慎重に槍を掴む。……うん、特に異常は見受けられないな。
そのまま持ち上げて地面から引っこ抜くと――。
『ズズッ……!』
槍はクリスの力に呼応するかのように強烈なオーラを発した。
「おおー」
俺の時はこんな現象は起きなかったし、こりゃマジで俺には資格が無かったオチか?
「……とても軽いですわ。それに、ショウタ様の言う寒気や冷気は感じられません」
「こりゃ確定だな。『水』……というより『水の親和力』のスキルを持つことで十全に使用可能になる武器か」
それにこの感覚……。完全開放されたグングニルに近いエネルギーを感じる。
名称:ポセイドンの槍【神器】(解放)
品格:≪幻想+≫ファンタズマ+
種別:神器【槍】
武器レベル:94
説明:神話に登場する神器武装を具現化したもの。十全に使い熟すには持ち主にも相応の素養が求められる。絶大な力を授ける反面、水との親和性スキルを持たないものには相応の罰が下される。使用者の能力に合わせ、本来の力が解放されている。周囲の水をエネルギーに変換し、術者の敵対存在に対して自動的に攻撃。また、水は飛来する投擲物にも自動的に迎撃する。エネルギーをすべて消費する事で、武技スキル『海神槍』が使用可能。
神器スキル【水精の支配者】:魔力を10000消費することで発動。水の中位精霊を複数召喚し、戦いをサポートする。
★周囲の水は全てこの槍の味方となる。
★水エネルギー 0/1000
あーうん、完全に覚醒してら。
俺は見た情報をありのまま皆に伝えた。
「と言うわけで、これはクリス用の武器だな」
「申し訳ありません、ショウタ様。まさかこのような形になるとは……」
「良いって。それだけこのダンジョンが、クリス向けだったってだけだ」
「はいっ。これを使って、もっとショウタ様の御役に立ってみせますわ」
「ああ、期待してる」
正式にクリスの武器である事を俺が宣言した事で、クリスは皆から祝福されていた。クリスも最初は手放しでは喜べない表情を浮かべていたが、すぐに切り替えて素直に受け止めていた。
そんな彼女達の様子を見て、アズは意味深な笑顔を浮かべてそっと俺に耳打ちして来た。
『ねえマスター、『水』もそうだけど、『水の親和結晶』を譲った事、後悔してない?』
「いや全然」
『あらそう?』
俺が即答した事で、アズは拍子抜けしたような顔を浮かべ、クリスは表情こそ変えなかったものの、安堵したような気配を出した。さてはアズめ、クリスを気遣ってこんな事聞いて来たな?
どうやら、昨日の尻叩きでまた仲が深まったみたいだな。
「それに、『大精霊』に再挑戦できる可能性はまだゼロではないわけだし、もしそれが叶わなかったとしても、他のダンジョンで出会えるかもしれないしな」
正直前者は絶望的だが、後者はまだなんとかなりそうな気がするんだよなー。
「ん。そうなの?」
「だって考えてみればさ、『風』があるダンジョンにだけ4属性の大精霊が存在するっておかしな話だと思うんだよ。ここにもいるかもしれないし、居なかったとしても『土』に居たりするかもしれないじゃん?」
「……ん。それは確かにそう」
ちょっとメタ読みではあるが、今の反応からしてミスティは素だった。だから、多分ここには『大精霊』や下位の精霊なんかの目撃情報はなくて、クリスも把握していないと見て良いだろう。まあでも、だからといって絶対にいないと判ずるには早すぎる。この階層みたく未発見なだけかもしれないし、しっかりと根こそぎチェックしないとな。
そしてアズは、明らかに顔を背けていた。その反応でもう答えが出ているようなもんだが、まあ気付かなかった振りをしておこう。
「とりあえずクリスは、スキル倉庫から槍とそれを扱うためのスキルを必要なだけ取っておいてくれ。圧縮が必要なら手伝うし、ポイントも使って良いからな」
「承知しましたわ」
とはいえ、俺は常日頃から嫁達には欲しいスキルがあれば獲得するようには言ってるんだがな。最初は皆遠慮してたが、全員が使用しても有り余るくらいにはスキルが余剰している現状、その駆け引きはほぼ無駄だからな。
さて、これでこの階層でのやり残しは済んだはずだし、マップを全解放するか。
【未確定地域の情報を探査しますか?】
【YES/NO】
「YES」
【探査対象の空間情報を計算中】
【探査対象に地下空間の有無を確認中】
【探査対象に生息するモンスターを観測】
【探査対象の知覚妨害機能を検査中】
【探査対象エリアの魔力の流れを観測】
「……ふむ。見逃しは無いみたいだな」
海底の全てを見てまわったわけでは無かったので、直接視れていなかった海域の海底付近にたむろしていたモンスターの群れが表記されたくらいで、見落としたギミックや隠し宝箱などは存在していないようだった。
こういうのも自分で探索してみたくはあるんだが、いかんせんここは広すぎる上に、今でさえ大量にあるスキルや宝箱が更に数倍になるであろうことを考えると、虚無感が顔を出すからな。妥協せざるを得まい。
「よし、それじゃ第四層に向かおうか!」
次はどんな階層なのか楽しみではあるが……ここみたいに広い空間は、しばらく御免被りたいな。
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