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ガチャ1062回目:最後の締め

「クリス、こっちにはなにがあるんだ?」

「特に何もなかったはずですわ。強いて言うなら、ショウタ様もよくご存知のものがあるとしか……」

「ん?」


 俺達は、メダルの指し示す先を求めて、島の中央部へと向かっていた。と言っても、この階層の中央にある島はそれほど広くはない。せいぜい、先程のカメの島よりちょっと大きいくらいの……直径200メートルくらいの丸い島だ。

 そんな狭い島だからか、話している間にもう着いてしまった。しかしここは……。


「ああそうか、第二層に続く階段か。んで指し示す場所は……その裏側か」


 ここの第一層もそうなのだが、階層を移動する階段は壁の中に存在するタイプではなく、階段だけが存在するタイプだった。まあ要するに、半透明な足場が3メートルくらいの高さにまで階段状に続いていて、登りきる手前辺りでワープする仕組みだった。

 ちなみにこの階段、階段を登る過程を通らずともちゃんと階層移動はできるらしく、1段飛ばしどころか全段飛ばしで一気に最上部に着地してもワープするようで、横着が許される仕組みらしい。その上、横の壁が存在しない造りの為か、階段の側面や背面から飛び移ってもちゃっかりワープは起動するそうなのだ。

 まあでも、ダンジョンからのしっぺ返しが怖いのか、律儀に1段1段登る冒険者が多いらしいのだが。

 そんな階段の丁度裏手。最上段がある足場の丁度真下の辺りをメダルは指し示していた。そしてそこには、あからさまな石板が設置されており、見る人によっては墓石に見えなくもないソレには見た事もない文字が彫られていた。


「なんか見え覚えあるなー、コレ」

「ん。696ダンジョンで見た攻略ヒントの石碑」

「あー……。アレか」


 アレと一緒なら、しばらく凝視していれば……うん、頭の中に文字が浮かんできた。


『円環に証を』

『外海の王に証を』

『我が前に証を』


「……全部書いてんじゃん」


 チラリとクリスを見ると、彼女はブンブンと首を振った。


「いえっ、わたくしが知る限りでは、最初の一行しか浮かび上がって来なかったはずですわ」

「そうなの? じゃあ、攻略進捗に応じて碑文が追加されていく仕組みか」


 昨日だけで全工程を一気に行っちゃったもんなぁ。


「ところで昨日は聞きそびれてたけど、第一層や第二層にもこれと同じようなものはあったって事で良いんだよな?」

「はい、そう聞いておりますわ。それと合わせて支部長に確認をとったところ、第一層と第二層で獲得できるメダルはベテランの冒険者達の活躍もあり確保まではできていたようです。ショウタ様にはそちらを攻略の足がかりにする為、お渡しするつもりだったようですわ」

「なるほどな。あの時、話を聞かなくてよかったわ」


 んで、証となるメダルを用意できたという事は、それに付随して鍵の欠片を獲得していた冒険者もいたという事か。でも第三層は海流の外側に行かなきゃいけない訳で、そこで詰んでいた訳だな。


「ん。もし手渡しされてたら、ショウタ萎え落ちしてたかも」

「やる気8割減ですねー」

「危なかったですね……」

「攻略支援のつもりが、まさかド級の妨害になるとは誰も想像つかないでしょ」

『ではマスター様、確認されますか?』

『まずはやっぱり通常のメダルからよね』

『おにいさん、どうぞ』

「ああ、ありがとな」


 リリスからクリオネとフィッシュのメダルを3枚ずつ貰う。メダルの示す先は……丁度この石板の根元だな。


『ピンッ』


 2枚のメダルを軽く弾いて石板にぶつけると、メダルは光を発しながら消失。続けてゆっくりと石板も消えてなくなった。そしてそのまま待っていると、石板があった場所に台座が出現した。その台座には穴が2つしか存在しておらず、先ほどのメダルが既に嵌め込まれた状態だった。

 ……2つだけか。もしかして、ここ以外にも台座があるのか? そうして一抹の不安を抱えていると、台座は輝きだし正面に宝箱が出現した。


『ガコンッ』


 名称:深海の宝箱Ⅲ

 品格:なし

 種類:宝箱

 説明:4種の王に認められたクリオネ・フィッシュのメダルを捧げる事で出現する宝箱。


 まあでも、それより優先すべきはこっちか。

 俺は気持ちを切り替え宝箱を開ける。すると中から光が飛び出し、俺の中へと入っていった。


*****

管理者の鍵(中枢):100

管理者の鍵(末端):001、450、454、525、601、607、666、696、777、810、1086、1097、1099

管理者の鍵(破片):190(1)、190(2)、★190(3)

*****


 コレで良しと。んで、2セット目の使用場所は……うん、変わりなしと。台座も出たままだしな。

 そうして俺は続けて同じように宝箱を獲得していき、『青のメダル【Ⅲ】』の確保と、第三層のスタンピード機能をロックさせることに成功したのだった。


「これで本来の目的は達成だな」

「ショウタ様――」


 何か言おうとするクリスの口元を指で押さえる。


「クリス、そういうのは全部終わってからな」

「……はい♡」

「んじゃ、大本命の確認をしますかね」


 『メダル【クラーケン】』、『メダル【シャーク】』、『メダル【千年亀】』を取り出して改めて魔力が伸びる先を確認する。……やはり、ポイントはこの台座で間違いないようだ。だが、窪みは2つだけなんだよな。

 そう思っていると、メダルに呼応するように台座が輝きだし、3つ目の窪みが出現した。


「あ、そういうことね。んじゃ、カチッとな」


 メダルを嵌め込むと、台座は今度こそ消失し、空間に亀裂が奔る。そこは真っ暗な暗闇が広がっていた。見た目は不穏だが、嫌な予感は一切しないそれは、何だか見覚えがあった。


「……道が開けるってそういうことか」


 宝箱のアレじゃん。そう理解した後の行動は早かった。

 俺は両手を突っ込み、中に存在するアイテムを引っ張り出す。すると俺の両手の中には、1つの宝箱が存在していた。

 その宝箱は……虹色に輝いていた。


「おお、『プリズムの宝箱』だ!!」

「「「「「『『『おおー!』』』」」」」」


 『幻想(ファンタズマ)』確定の宝箱! ここで来てくれたか!!

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