ガチャ1058回目:解体現場
『わたしが、お姉さまのお尻を……!?』
お尻ぺんぺん権を貰ってリリスは驚き半分興奮半分といった具合だった。こういうところを見てると、リリスはアズの事を姉として尊敬はしてるけど、やっぱり本質的にはサキュバスなんだよなぁ。めっちゃウズウズしてるのが見て取れる。
普段は畏れ多くてできないけど、合法的に叩けるチャンスだしな。それに嫁の何人かも、ちょっと楽しみにしてる様子だ。まあ俺も初日に叩いたくらいだし、その気持ちはわかるけども。
「ルミナスは都合上今してもらったけど、皆が実行するのは夜の時間なー」
「「「「「『はーい』」」」」」
さて、リリスがこうなった結果ある意味当然の流れだが、スキルの効果が切れ始めてる。カメの瞼がピクピクしてる。1分もしないうちにカメが目を覚ますだろう。
だから、早急に始末をしなければならない。
「リリス、あとどのくらいで目覚める?」
『え? ……あ、ごめんなさいです! えっとえっと、30秒もしない内に目が覚めちゃうかと……』
「そんだけありゃ十分だ」
そう言って透明な足場から降りて、水の上に立つ。『空間魔法』の足場は、俺のステータスで補正が入っているとはいえ結構脆い方だからな。本気を出せば乗っているだけで粉々に砕け切ってしまうだろう。
「ハーフブースト! グングニル!!」
強敵だし図体もでかいから、貫通させるにはそれなりに力を込める必要があるだろうけど、今コイツは夢の中だ。となれば『Bスキル』を使っていない状態な訳で、硬度もステータス表記そのままだ。
そんな状態の奴相手に、フルブーストまで使う必要はないだろう。
『……ッ?』
おっと。
俺の攻撃の気配を察知してか、カメに変化が生じた。このままではすぐにでも目覚めてしまいそうだな。まあ、こっちも『力溜め』のチャージ時間は確保できた。このまま一気に解き放つ!
「どおおおおりゃ!!」
『ズ……ドパッ!!』
カメの頭部に到達したグングニルは、そのまま内臓を食い破り尻尾の先まで貫通。一瞬頭蓋骨部分に触れた際に抵抗を感じたが、その後は特に問題なく突き抜けることに成功し、カメには巨大な空洞が出来上がるのだった。
そしてその穴を埋めるようにして血液が噴き出し、海水が流入。遅れるようにして煙も発生し始めた。このまま放置していれば全身が煙に飲まれていくはずだが……そこには何か違和感があった。
「なんだ?」
違和感の正体ははっきりしないが、普通のモンスターの消失とは何かが違う。体積がデカいだけでは説明のつかない妙な感覚。
それが何かは分からないが、やれることは全てやっておくべきだと俺は判断した。
「クリス、奴の血をできるだけ回収してくれ。他の皆は俺と一緒に肉の確保だ!」
本来はドロップする前のアイテムは全て煙に代わって消えてしまうもの。だが、俺の『直感』がそうではないと警鐘を鳴らす。俺は彼女達の返事を待たずに、グラムを武器庫から取り出して突撃した。
「うげ、ひでぇ臭いだな」
巨大な空洞となったカメの体内に入り込むと、そのまま肉に刃を突き立てた。そこで、違和感の正体に気付いた。
「やっぱり、煙は肉や血からは発生していない……?」
となれば、回収できる可能性が高まったな。煙の発生源がどこかわからんままだが、この際構わん。
『ザザザザザ!』
体内に入り込んでいた海水と血液が分離し、クリスの手元に集まっていく。そのまま血液はキュビラとリリスが回収作業を手伝うようだ。なので俺はやって来た嫁達と一緒に解体担当と回収担当に別れてカメの内部を血と肉と骨へと分解していく。今までは倒したモンスターは勝手に肉や素材に代わって行ってたから、こんな作業をするとは微塵も想像してはいなかったが、貴重な経験だな。
解体担当は俺、アズ、テレサ、シャル。
回収担当はミスティ、マリーだ。
「獲物の解体なんて何年振りかしらっ! 規模感全然違うけどっ!」
『『千年亀』の血肉かー。向こうでも超激レアアイテムね』
「ん、皆がんばれー」
「切り取りが終わった肉は適当に足元に転がしてくださいねー」
「ショウタ様、ここから先は骨が多いようです。分断して頂いてもいいでしょうか」
「任せろ。『閃撃・無刃衝』!!」
『斬ッ!』
目の前の肉壁がブロック肉となって幾重にも積み重なった。
今ので数百キロ以上の肉が採れたと思うが、こいつの体積から考えてもほんの一部でしかないな。
◇◇◇◇◇◇◇◇
回収作業を始めてかれこれ20分ほど経過した。未だにその全貌は見えず、回収もグングニルが開けた大穴近辺で作業するのみだ。
『マスター、煙の発生速度が増えてるわ。全部の回収は無理そうよ~』
「手の届く範囲で十分だ。それと、完全消失する前には撤退するから、あまり奥まで行くなよ!」
「勇者様、血の臭いにつられてフィッシュの群れが集まって来てます。リリスちゃんが対処してますけど、そろそろキャパを越えそうですよ~」
「わかった。ミスティ、シャル、撃滅してこい! カメの経験値がまだ入ってきてないから、レアはキープな!」
「ん。おっけー!」
「任せなさい!」
そうして4人での作業を再開して10分ほど経過したところで、周囲の視界の8割ほどを煙が埋め尽くしていた。……そろそろ限界っぽいな。
「よし。足元のアイテムだけ回収して、撤退だ!」
「「はいっ!」」
『は~い♪』
そうして体内から脱出し、嫁達の元へと戻って来たところで、俺の前に通知が表示された。
【レベルアップ】
【レベルが65から744に上昇しました】
ああ、ようやくちゃんと死んだか。って事はやっぱり、あの状態でも生きていた判定なのか? 頭から尻尾まで大穴開けられて? どんな生命力だよ……。んで血肉は……やっぱりちゃんと獲得できちゃってるな。木や実を採取できたところからして、その辺だいぶ特殊なモンスターだったみたいだ。
しかし、雑魚のフィッシュがレベル55もあるから、大量に寄ってきた連中の始末だけで56から65にまで上がってしまう誤算はあったが、600レベルの『極大魔煌石』の前ではその程度誤差だよな、うん。
そうしみじみと考えている内に、カメの肉体部分は完全に煙へと変質し、散り散りになっていく。そして俺達の前には討伐報酬であるドロップアイテムが突如として出現。更に、カメがいた場所には元々海が無かったかのように陸地が生成され、甲羅の上に存在していた島が丸々残される形となったのだった。
……これ、倒した後でも交換できたってオチか??
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