ガチャ1057回目:ほうれんそう
アズ達が乗り込んでかれこれ十数分が経過したが、降りてくる気配はない。マップで見る限り背中の中心部付近に集まってはいるみたいだが……。
まあ、本当にデカいカメだし、探索にも時間がかかるのかもな。
「そういやさ、このカメにはどんな夢を見せてるんだ?」
『分からないですよ?』
「え、わかんないの?」
『はいです。ドリームナイトメアは、対象が望む夢を見せるスキルなので、実際にどんな夢なのかは、相手の夢に入り込まないといけないのです』
「はー……。俺の時みたいに?」
『はいです。ただ、目の前に姿を現す必要はないですけど』
「なるほど」
それでどうしても姿を現す必要があるのなら、望む姿に変わって対話する感じかな? いろんな使い方ができそうなスキルだし万能そうだな。
っていうか、俺ですら対処不能で一発昏倒させられたくらいだし、やろうと思えば世界征服もしちゃえるくらい多様な使い方ができそうだが……サキュバス達は平和主義っぽいし、悪い考えの連中がいなくて良かったかも。
そんなことを考えていると、こちらの顔をじっと見つめていたリリスと目があった。
『……おにいさん』
「んー?」
『実は悪いことを考えているサキュバスも、あっちにはいたんですよ?』
「そうなの? てか、リリスも考えが読めたの??」
『はいです。ただ、お姉さま達と違って表情を読んだというより、触れ合ってることで感情が伝わってきたので、そこから考察してみただけなんですけど……』
「それができるだけでも十分すごいけどな」
リリスを撫でていると、今度は少し離れた場所で泳いでいたルミナスと目が合った。うーん、なんだかめっちゃ寂しそうな顔してるぞ?
そういや、危ないから退避させてたんだったな。けど現状は問題は無いっぽいんだよなぁ。リリスの眠りの維持も大丈夫そうだし、こっちに呼んじゃってもいいかも。
「リリス、ルミナスが寂しそうだからこっちに呼んでも良いか?」
『ふふ、良いですよ~。わたしもルミナスも、おにいさんのペットですから♡』
ペットはペットでも、ちょっと意味合いは違ってくるけどな。
そうして俺はルミナスを手招きし、2人纏めて撫で回すことにした。
◇◇◇◇◇◇◇◇
ルミナスとリリスを可愛がること十数分、ようやく嫁達が帰って来た。
その様子からして、成果はあったようだ。
『ただいま~♪』
「おー。おかえり」
「ん。ショウタ、ぎゅってして」
「おー、順番にな」
珍しくミスティを含めて他の皆が甘えモードになっていたので、順番にハグをしてから成果を聞いてみる。
『まず第一目標だったメダルはちゃんと交換できたわ。クリオネ3枚と、フィッシュ5枚ね』
名前:メダル【クリオネ】
品格:≪最高≫エピック
種類:トリガーアイテム
説明:グラスノーチラスを討伐した証。
★しかるべき場所に奉納することで道が開ける。
★海流の王の力が宿っている。
★クラーケンの力が宿っている。
★シャークの力が宿っている。
★亀の力が宿っている。
名前:メダル【フィッシュ】
品格:≪最高≫エピック
種類:トリガーアイテム
説明:ブレードフィッシュを討伐した証。
★しかるべき場所に奉納することで道が開ける。
★海流の王の力が宿っている。
★クラーケンの力が宿っている。
★シャークの力が宿っている。
★亀の力が宿っている。
うん、完璧だな。
「……ん? 第一?」
他に乗り込んだ目的とか、あったっけ?
「あ~……。マリーとアズがね、カメの背中に自生していたヤシの実を採取してたの。それだけじゃなくて、途中からはヤシの木をまるごと引っこ抜いてたりもしたわ」
「マジで?」
んなことしてたの!?
「流石に木そのものを引っこ抜くのは、メダルの交換が終わった後にしてもらいましたが……カメが目を覚ますのではとヒヤヒヤしましたわ」
「とてもハラハラしました……」
「ん。お酒に目がくらんだアズは、マリーよりも行動力があってびっくりした」
「わ、私は実と樹液だけのつもりだったんですよ? ただ、木そのものがあったほうが増やせるとアズさんが仰ってたので……」
まあ、うちの環境なら異世界の植物だろうと栽培も増殖もお手のものだろうけども。てかそもそも、実の採取はできるとは知ってたけど、木そのものはいけなかったはずじゃ……。このカメが特殊過ぎて、そんなイレギュラーもいけたりするのか?
『お姉さま、酷いですよ~! そんなことしてたなんて~!』
『リリスのスキル効果は理解していたもの。あのくらいでは起きないと確信してただけよ』
『でもでも、一度目を覚ましたら再度眠りにつかせるのが難しい事、お姉さまもご存じですよね!?』
『だ、大丈夫でしょ。根っこは甲羅の内部にまでは届いていなかったしね♪』
それは抜いた後判明した事実であって、抜く前の時点では分からない事象じゃないのか? いや、『千年亀』のことをアズは知っていたわけだし、生態も知っていたか……?
だとしてもだ。例え内部に届いていなかったとしても、甲羅の上に存在していた物体をベリベリ引き剥がしたら、嫌でも気になるだろ。眠りが浅ければ目が覚めるくらいには。
「……アズ。本音は?」
『ええっとぉ。起きてもマスターならなんとかしてくれるかな~って♪』
「はぁ~……」
クソデカため息が出る。
なんとかするっちゃするし、できなくはないだろう。全快には程遠いとはいえ、休息と睡眠の結果、奴の魔力もそこそこ回復している。再び『破滅の光』が飛んで来たとしても、気を使う相手は奴の背中と、俺の両腕の中だけだ。
発動までのモーションは長いし、首の可動域よりも外に出るくらい訳はないが……。
「キュビラは止めなかったのか?」
『申し訳ありません。止めはしたのですが、マスター様が喜ぶと言われて……』
『マ、マスターも向こうの世界の植物は気になるでしょ? それも、『千年亀』の背中に自生する植物は、とっても貴重だから採取できる機会もそうないのよ?』
まあそれは確かに気になるしよくやったと言ってもいいところではあるが、それをタダで許しちゃうのは違うよな~。
せめてやる前に一言くれてたら、怒ったりはしなかったのに。
「分かった。アズには罰を与える」
『ええ~!?』
「もしカメが起きていたとして、島に行ってた組や、俺とリリスは問題なかっただろう。けど、ここにはルミナスがいたんだ。途中から俺が問題ないと判断して手元に抱いてたんだ。アズはその事に気付いていたか?」
『……見てなかったわ』
「それじゃあダメだな? その理由の説明は必要か?」
『……いえ、要らないわ。皆、ごめんなさい。迷惑かけたわね』
理解が早くて助かるよ。
リリス1人ならともかく、身体のデカいルミナスを一緒に抱えながらの移動は……正直言ってきつい。奴が目覚める事を事前に察知してルミナスを逃がすこともできるかもしれないが、それができる保証も無い訳で。もしもの時は嫌な予感が発動するかもしれないが、それも確実ではないのだ。
……ちゃんと反省はしてるみたいだな。アズが珍しくしょんぼりしている。これなら、多少刑は軽めにしても良いかもな。
「罰として、アズはケツ叩きの刑な」
『えっ? それは、マスターがしてくれるの??』
アズの尻尾がピンッと立った。反省はどこいった。
「それだとご褒美だろ。……木は何本採取したんだ?」
『4本だけど……』
「なら尻叩きは4回ずつだ。執行者はこの場にいる嫁全員からな」
『……はぁい』
アズは渋々と受け入れた。まあ俺も叩いても良いんだけどな? いい音しそうだし。執行タイミングは……夜で良いか。
いや待てよ? 執行すべき相手がまだいたな。
「ああそれと、リリスとルミナスも参加な。迷惑掛けられたんだから、しっかり叩いとけよ~」
『ええっ、わ、わたしもですかぁ!?』
『キュ~??』
ルミナスはよくわかってなかったので、尻叩きについて説明をすると、なんだか楽しそうにその場でアズの尻をペシペシしていた。これで許す辺りルミナスも懐が深いなぁ。
読者の皆様へ
この作品が、面白かった!続きが気になる!と思っていただけた方は、
ブックマーク登録や、下にある☆☆☆☆☆を★★★★★へと評価して下さると励みになります。
よろしくお願いします!










