ガチャ1055回目:他の手段
『……』
「ぜぇ、ぜぇ……」
お互いに疲労が溜まりまともに動けないまま、睨み合いが続く。ぶっちゃけた話、疲労を無視して撃破を優先するのであれば、取れる手段はいくらでもある。最悪、気絶してぶっ倒れても嫁達がいるからな。別にスマートな撃破だけを目的としてる訳じゃないし。
ただ、今回コイツと戦った一番の理由は、メダルの更新のためだ。第二がコイツの撃破で、第三がコイツのメダルを確保することではあるんだが、優先順位としてはやはり2と3はオマケだ。
だが、肝心のメダル更新は、外殻でも額でもダメとなれば、残るは……。
「うおりゃっ!」
手持ちのメダルを、だらしなく開いた奴の口の中へと放り込む。ルミナスと同じであればコレでも問題なく働くはずだが……。
『……』
「ふぅ、ふぅ……」
口だけでなく顔がデカいから分かりにくいが、ちゃんと嚥下はしたはずだ。だが……なんか、ダメっぽいぞ。メダルが出てくる気配がない。単純に、塵のように小さな異物が喉元を通ったかのような感じになってる……?
「ちっ、なんかそんな気はしてたんだよな……」
他の2体と比べて、明らかに難易度が高すぎる。『クラーケン』やサメは50メートル以上離れた場所からメダルを投擲してぶつければ良いだけなのに対し、このカメは普通の存在ではない。まず一般的な冒険者であれば、こいつがそもそもカメであることを認識する事すら難しかったはずだ。そんな状態でカメ本体の顔や手足、果ては体内に放り込むなんて真似は不可能だろう。だから、ちょっと攻略をする視点のレベルを下げて見返す必要があったんだ。
「……はあ、仕方ないか」
観念した俺はカメに視線を合わせたまま、下方にいる皆に向けて手招きした。こうなりゃ、彼女たちに手伝ってもらう他ない。
しばらくすると皆が全員浮上してきた。最初はアズが率先して動いたが、構わず全員来るようにジェスチャーを織り交ぜつつ手招きをし続けた事で、ちゃんと伝わったようだ。
『マスター、呼んだ?』
『お手伝いが必要ですかー?』
「ん。珍しいね、ショウタが戦闘介入を許すの」
「勇者様、私達のためにお疲れさまでしたっ」
『戦闘が終わったら、いっぱいマッサージ致しますねっ』
「この疲労もわたくし達を守るために頑張ってくださったものですし、代わりになれるならいくらでもお手伝いしますわ」
「そうね、何でも言ってねショウタっ!」
『キュ~』
「ご安心ください。私の盾であれば、数秒は耐えてみせます」
「ああ、ありがとう」
強敵の前に悠長にお喋りする気は無いんだが、皆が集まってもこのカメは疲労の色が取れず、攻撃よりも回復を優先する様子だった。
なら、こっちも安全確保を第一としようか。
「それじゃアズ、大事なことから確認だが、このカメは『千年亀』っていう古代生物らしいんだが、知ってるか?」
『ええ、知ってるわ』
「あの凶悪な光線は、『滅びの光線』ってスキル名だったんだが、あれって連発できるものか?」
『いいえ、それは無いわね。あんなのが連発できたとしたら、異世界は文字通りコイツらに滅ぼされてたわ』
「はは、だよな」
なら安心だ。完全にガス欠みたいだし、視えないスキルの中に魔力を急回復したりするようなものも含まれてはいないという事だ。
「よし、それじゃ作戦を伝える。まずリリスを除いた全員は、メダルを持って奴の背に広がる島に上陸をしてほしい。普通の人間にはこいつが島に見える以上、島のどこかにメダルの情報を更新する為のポイントが存在しているはずだ。それを見つけて、全てのメダルを更新して欲しい。フィッシュのメダルは1個、完全に駄目になったから……クリオネ3つとフィッシュ5つだな」
『了解よ』
「ん!」
「OK!」
「「「『はいっ』」」」
『おにいさん、わたしは何をすれば?』
「あー、リリスは……足止めを手伝ってくれるか?」
『足止め……ですかぁ!?』
リリスが仰天したような声を上げた。まあそうなるよな。
「まず、敵対してなければ問題なく島には上陸できただろうけど、今は戦闘中じゃん? 素直にコイツが島に乗せてくれるとも思えないし、乗った後も暴れられちゃ探索もままならないだろ?」
『それは、そうですけど……。わたしに足止めなんて無理ですよぉ!』
「俺が戦っても結局は同じ事だからさ。だから、お前のサキュバス能力で眠らせたりできないかなと」
『……あ、そっちですか』
リリスは心から安堵したような表情を見せた。
「流石にリリスの戦闘能力に期待はしてないって」
『そう言われるのは心外なんですけどぉ』
「どっちだよ。直接戦闘であのカメとやりたいなら止めはしないけど?」
『む、無理です!』
だよな。
『テイム』後にあの黒騎士を倒したことでレベルは急激に上がりはしたものの、うちの嫁達と比べるとリリスがこのチームで一番弱いからな。それに本人の気質も、直接戦闘には不向きな物だし。サポート役に徹しさせるのが丁度良い。
『でもでも、もし術中にあんな攻撃を受けたら、ひとたまりもありませんっ』
「そこは大丈夫だ。アズ曰く連発はしないって話だし、俺も奴の体内魔力がほぼ空になっていることは知覚できている。それに、もし撃たれそうになったとしても1度目視した以上俺の『予知』は仕事するし、お前1人くらいなら抱えたまま移動はできる。……あ、ルミナスはカメの真下辺りで一応待機な」
『キュ~!』
『わ、わかりました……。頑張ってみますっ……!』
「ああ、よろしく頼むな」
さて、目論見通りなら陸地に交換ポイントがあるはずだが……。
無かったら詰みだけど、果たしてどうかな。
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