ガチャ1054回目:滅びの光線
『時空魔法』――。
それは時間や空間を操る事すら可能となる。文字通りスキルの中でも最上位に位置し、使いこなせれば最強になれるであろうチート級スキルだが、当然いくつもの制限が掛かっている。まず第一に、普通の人間には最初の魔法すら行使する事はできない。
その点は種族が『ハイ・ヒューマン』に進化する事で解決した……かのように見えた。実際は最初の条件を満たしたにすぎず、真に使いこなすには無限の魔力を内包しているダンジョンと繋がっていなければならないほどに、魔力をドカ食いする欠陥魔法だった。
現に、初回に試した時間停止魔法『タイムストップ』は、数万ある俺の魔力が数秒で底をつくほどの燃費の悪さをしており、実戦では使用不可能と判断され半封印を余儀なくされた。だが、『時空魔法』を取得する事で使用可能となる魔法はそれ1つではない。他系列の魔法と同様に、いくつかの魔法が行使できるようになっていた。
問題があるとすれば『タイムストップ』ほどではないにしろ、ほとんどの魔法が燃費が悪く、常用すればすぐに魔力が底をつき、吐き気に悩まされる点だろうか。そんな魔法群の中で、比較的消費が軽めの魔法が1つだけあった。それが――。
『時空魔法』……タイムアクセルだ!
『ドバ――ッッッッ!!』
破壊を体現した極太のレーザーが、先ほどまで立っていた場所を通過するのが見える。 そのレーザーは大気も海も何もかも破壊し、遥か彼方まで伸びているのが見える。射程は優に数百メートルはありそうだな。
一応視てみるか。
名称:滅びの光線
品格:≪高位伝説≫ハイ・レジェンダリー
種類:エクススキル
説明:対象を原子レベルにまで崩壊させる滅びの光線。体内に特殊な器官を持った伝説上の古代生物のみが使用可能。その規模は術者の格と体積によって大きく異なる。体内魔力を極限まで消費する。
★威力参照:術者の腕力・頑丈・知力の乗算。
★同格未満のスキルを完全に無効化する。
射程は書いてないが、書いてることが恐ろし過ぎるな。『結界破壊』の能力は無いが、『伝説』以下のスキルを無効化するのなら、『固有』でしかない『金剛外装』はやはり蹴散らされる定めにありそうだ。
そう思っていると、奴の目がギョロリと俺を捉えた。
『……ッ!!』
「うおっと!」
危ない危ない。回避されたことに気付いたカメが顔を動かし、光線で薙ぎ払いをしてきた。
予想通り、奴が顔を動かせばそのレーザーも合わせて動く。だが、首の可動域よりも外側に出てしまったら、奴が攻撃を止めずにそのまま嫁達のいる下方へと対象をズラす可能性がある以上、ギリギリまで俺が引きつけなければならない。
しかし、奴のレーザーは方向転換から到達までの速度が、今までの魔法とは次元が違う。まるで懐中電灯を向けられたときに、照らされる光を避けるレベルの速度が求められているような気さえする。そんなもの、普通の速度系フルブーストだけではとてもじゃないが足りていない。
あの光線の速度を上回るには、ブーストの元となる俺の速さそのものを増加させる必要がある。それは単純なステータスの増強や素早く移動する技術の会得だけでは、到底至る事ができない極地であり、本来なら不可能な事象だろう。それを可能とするのがこのタイムアクセルだ。
『……ッッ!!』
「あっぶね、カスった!」
このタイムアクセルは、『時空魔法』Lv1で取得した魔法で、当然『ハイ・ヒューマン』専用だ。効果は単純明快。
魔法の効果時間中『自身のあらゆる速度を2倍』にするというものだ。これだけ見ればすごく便利に思えるが、デメリットは当然いくつもある。
まず、燃費が良くない。タイムストップほど規格外の消費量というわけではないが、秒間100から300前後消費している気がする。『魔力超回復LvMAX』を2つ重ね掛けしているおかげで、15秒につき240回復するが、焼け石に水だろう。現在の俺の魔力は5万2千ほど。最短3分ほどで魔力が枯渇する計算だ。
次に、あらゆる速度が2倍になる影響か、加速中の疲労蓄積が尋常ではない。身体操作、空間把握、情報処理、反射神経、体感時間……普段何気なくしている動作の、ありとあらゆる要素が全て2倍となって重くのしかかってくる。まるで、達人同士の戦いで起きる世界がスローになる感覚を、強制的に味わわされ続けているかのような感じだ。
だが、それらの時間が2倍になろうとも、世界の速度は何も変わっていないのだ。世界の速度はそのままであり、人間が耐えられる耐久性までは上がらないのだから。
俺が初めて『迅速』のスキルを獲得した時もそうだったが、一定の速度を出し続けるには、『頑丈』のステータスも一定値ないと身体が壊れてしまうからな。
『……ッッッ!!!』
「グッ! まだ、か……!?」
普通に避けて回避ができないなら、魔法で自分を加速させれば良いのだ。
そう思ってやってみたが、練習で使った時よりもひりつきが段違いだ。体感時間は2倍どころか、数十倍になってるんじゃないかと錯覚するほどの長い時間、俺はギリギリでの回避を続け……。
『……ッ』
「ぜっ……はぁ、はぁ!」
ようやくカメの放つ破壊光線は止まった。
カメもあの技を使うのは相当気力を使い果たしたらしく、疲弊が見えるが……それは俺も同じだ。タイムアクセルだけでなくフルブーストも解除する。通常の時間軸に戻って来た俺は改めて奴を『解析の魔眼』で見る。
すると、奴の体内にあった膨大な魔力が、ほとんど残っていないことが見て取れた。それとは逆に、奴の背に広がる島には芳醇な魔力の塊が見えた。島と奴とでは別の扱いなのか……?
「しかしこの様子じゃ、しばらくは、『水魔法』くらいしか、使ってきそうにないな……はぁ」
俺も、まともに動けそうにないぐらいしんどいけど。
……とにかく、最初の目的を果たすとしよう。俺はフラフラになりながらも懐からメダルを取り出し、息も絶え絶えな様子のカメの額に、思いっきり放り投げた。
『……ベチッ!』
「ん……?」
放り投げたメダルは奴の額に激突すると、小気味良い音を出しながら跳ね返り、海の底へと沈んでいった。
「この方法でも、駄目なのかよ……!」
地獄のような時間を乗り越えたのにこの結果は、ちょっとくじけそうになった。
読者の皆様へ
この作品が、面白かった!続きが気になる!と思っていただけた方は、
ブックマーク登録や、下にある☆☆☆☆☆を★★★★★へと評価して下さると励みになります。
よろしくお願いします!










