ガチャ1052回目:過去の調査
にしても、改めて見るとめちゃくちゃデカいカメだよな。アイツはこっちを見下ろしてはいるが襲ってくる気配は今のところない。好戦的ではないのか……? いやでも、強者の気配はビンビンに感じるしなぁ。前回同様50メートル圏内に近付いたら襲ってくる系だろうか。
「にしても……」
心なしか、マップを通してみた時よりもデカく感じるんだが……。
もしかしてコレも、阻害系スキルの効果か?
「なあ、あのカメ……やっぱりデカいよな?」
「ん。あの時のスタンピードと比べると、あっちが子供に見える」
「おかしいわね。マップで見た時、もっと小さく感じたんだけど」
「やっぱりそう思うか? マップで見た時は数十メートル規模のカメに見えたが、今はどう見ても200メートル以上はあるよな??」
皆がうんうんと頷いた。
なら錯覚じゃないのか。アズは何か知ってそうな顔をしてるけど、今は聞かないでおいてやろう。他に心当たりがありそうなのは……。
「クリスが持ってる情報で、コイツのネタバレがあったら公開して良いぞ」
「承知しましたわ。海流の外側ですが、勿論調査をしなかったわけではありません。ドローンを飛ばしてみたり、『魔法の鞄』に素材を入れて監視塔を建築してみたり、色々と試してきたんです」
「ほほぅ。で、成果は?」
この階層に来た時、監視塔なんてなかったしな。襲撃で壊されたか、風化してダンジョンに吸収されたか。
「ドローンはなぜか海面より10メートル以上高い位置へ移動しようとすると制御不能になり、低空移動させても海流を超えればフィッシュの群れにより撃墜されましたわ。そして監視塔の建築はモンスターに邪魔される事は無かったのですが、やはり10メートルを超えると途端に抗いようのない嘔吐感が襲ってくるようになったのです」
「ほうほう」
「その嘔吐感もレベルがあればある程度無視できたのですが、当時の参加したわたくしでも、20メートルを超えると立っていられませんでしたわ」
「それってさ、魔力が枯渇した時の症状に似てる?」
「あ、はいっ。それに近いものでしたわ!」
「あれかー……。アレは辛いよな」
レベルが上がった今となっても、できれば味わいたくはない類のものだ。
「そんな状態じゃまともに周辺を見渡したりは難しいよな。でも撮影なら……あー、機械類は制御不能になるんだっけ」
「はい。ですので10メートル以上の高さから得られる情報は、全て人の目で判断するしか無いのですわ」
「あの激烈な気持ち悪さの中でか」
「はい。激烈な気持ち悪さの中でですわ」
吐き気とやらは多分、高い場所から見渡せられないようにするための措置なんだろう。俺も、この階層の全長は、海底を歩き回った事で大体掴めて来たけど、半径だけでも最低10キロはある巨大な階層だ。
つまり、中央島からマップ端までを見通すにはそれなりの高さが必要なのだが、20メートルの高さを稼げているのならば、ある程度の情報は視界に入ってきそうなんだよな。
「ん。けど20メートルもあれば、10キロ先くらいは余裕」
「そうね。物理法則は今のところダンジョンも外も同じみたいだし、障害物も視界阻害の霧もないこの階層なら、それだけあれば十分見えるはずよ」
「なるほど」
射手2人がそういうなら間違いないな。
まあ、吐き気でヤバイ状態で正常な判断ができるかって問題はあるけど。
「その時に、3種のレアモンスターらしき姿は、一応確認されてはいました」
「さっきは未確認だって話だったけど、アレはそういう事ね」
「はい。ネタバレ防止にと、嘘にならない程度に誤魔化しをしました」
できた嫁だ。
間接的に望遠鏡とかで観測はしたけど、きちんと海流の外に行って直接確認したわけではないからな。10キロ先の存在が本当にダンジョン内に存在しているものなのか、確かめようがないんだし。
だって、他の海系のダンジョンやここの第一層とかも、階層の端は存在しているけど、その向こうにだって景色は続いているのに、進む事はできないのだ。見えない壁で通れないだけで、見ている分には本物の風景が続いている。だから監視塔とやらで覗き込んで見えたソレが、ダンジョンの風景として壁の外側に映った光景なのか、フィールドの内側にいる存在なのかは検証できなかった訳だ。
なら、ホンモノがいるかどうかの証明は誰にもできていなかったと。ドローンも、レアらしき存在の場所に辿り着く前に雑魚に落とされるしな。となれば、『存在を確認できていなかったはず』という言葉に嘘は無い事になる。そりゃあ俺も気付けない。
「やっぱできた嫁だ」
「光栄ですわ」
他の嫁達からも拍手が贈られる。特にリリスなんかは、目をキラキラと輝かせていた。
「それで、その時得られた情報はどういったものだったんだ?」
「はい。まず『クラーケン』は他のダンジョンでも出現情報がありましたから、ダンジョンの景色に映っていても違和感が無いとされていましたわ」
「割と存在がポピュラーだもんな」
日本でも、『中級ダンジョン』や『上級ダンジョン』辺りにも出るって話だし、割と海関係なしにどこにでもいるんだよな。
「続いてサメですが、これはヒレが時折顔を覗かせていた程度であったため、目撃情報はさほどありませんでしたわ。なにせ、あの吐き気の最中にちょっとヒレが海から出ている程度ですから、見間違いの線もありましたし……」
「なるほど」
それは仕方ない。
「最後にこちらのカメですが、カメとしては認識されていませんでした。ただ、陸地があるとだけ認識されていましたわ。今となっては結界の外に島がある事自体異常ではありますが、遠見で島が発見された当時はそうでもありませんでしたから……」
「確かに」
他の海MAPのダンジョンでも、結界の外は見渡す限りの大海原で、島なんて影も形も存在しないからな。『ハートダンジョン』の第二層、『グアムダンジョン』の第一及び第二層、『1099ダンジョン』の第一層なんかもそうだった。
だがそれは、海系のマップが他のダンジョンでも当たり前に存在し始めた今なら判別できる情報だが、ここのNo.は190で、出現当時はまだ2年目だ。島が見えている事自体異常かどうかは、判別するには情報が足りなさすぎるし、各国との連携も必要だろう。
ロシアは鎖国ではないにしろ、ダンジョンを自国で抑え込める質と数は有していた分、貴重な資源の情報を国外と交換する事は少なかったはず。その結果、アレがモンスターである説が浮上したのも、それなりに年数が経ってからとなったのだろう。
「なるほど、ありがとう。ためになったよ」
「それは幸いでしたわ」
さて、こんだけ長話をしていてもあのカメはこちらを見つめたままで、下に降りてくる気は無いらしい。メダルが激突した衝撃はそれなりのはずだし、好戦的じゃないにしてもアレは攻撃として認識されてるはずだ。それでも来ないって事は、上の島が完成されすぎていて、海に沈みたくないとかなのか?
ヤシの木なんて生える環境みたいだし、そこを海に沈めちゃ色々とダメにはなりそうだもんな。……異世界のヤシの木が地球のと同様かどうかはさておくとして。
「あっちからは来ないみたいだし、こっちから近付いてやるとするか」
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