ガチャ1047回目:触手遊び
予想しないタイミングで『オーシャンクラーケン』と敵対してしまったが、ここで手をこまねいていると嫁達にも敵意が向きかねない。こういう手足が何本もあることで、文字通り攻撃の手数が多い相手の場合、敵愾心を分散させると、しっかり周りにも攻撃し始めるからな。
俺が弱かったときはそれで助かっていた部分もあるが、今なら全部の手足が一度に襲い掛かって来ても対処できるはずだ。
「行ってくる!」
海底を蹴り、一気に距離を詰めようとすると、奴はぐるんと身体を回転させて頭をこちらに向けて来た。
『……!!』
何をしてくるのかと思ったら、イカスミを吐いて来た。スキルにも『墨弾』ってあったし、アレがそうだろう。激突すれば痛いだろうが、本来の目的は海を黒く染めて相手の視界を奪い、その粘性で身動きを取れなくする点にあるんだろう。だから本来なら、防ぐよりも回避を優先するべきなのだろうが……。
「浄化っと!」
避けても嫁達ならそつなく対処するだろうけど、これが通った場所の水が黒く汚されると、後々邪魔になるからな。綺麗さっぱり消し去ってやった。
「ふむ……。浄化の出力が以前より増したかな?」
最初のスタンピード遭遇時はじんわり消えていった記憶があるけど、今回はザッと消えてくれたな。色々関連スキルも増えて来たし、ステータスも桁違いだからなぁ。何が参照されてこの結果になったのか、もう検証のしようがないな。
『……!!』
「おっと」
自慢の『墨弾』が消されたことが想定外だったのか、それともプライドが傷ついたのか、今度はマシンガンのように乱射して来た。どれ一つとして俺に直撃するコースが無いが、これは完全に視界を潰しに来てるな。
「浄化浄化浄化っと!」
なのでこちらも負けじと浄化を連発し、海を汚す側と綺麗にする側の戦いが始まったのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
『……』
しばらくすると、奴は墨を吐かなくなり大人しくなっていた。
心なしか萎びて見える。
「ふぅー、ようやく品切れか?」
いくらスキルに昇華されているとはいえ、墨自体は奴の体内で作られた加工物であり、魔力のように外部からエネルギーを取り込んで形を成している訳じゃないからな。『魔力回復』の有無に関わらず、在庫が尽きればしばらくは撃てなくなるのが自然の摂理だな。
「ショウタ様、こちらを」
「お、ありがと」
いつの間にか背後にやって来ていたクリスから、メダルを渡してもらう。さっき海底に落としちゃったやつだな。
1枚ずつじゃないと効果がないことは分かったんだし、次に投げる奴を考えないとな。変換済みはフィッシュの2枚だけ。未変換はフィッシュ4枚とクリオネ3枚だ。とりあえず優先すべきは1セットを作っておくことではあるが、揃える為にもクリオネから行くべきか?
……いや、非戦闘中にしか変換されないかもしれないし、もう1枚フィッシュで行っとくか!
「せりゃ!」
『!!』
メダルの投擲を攻撃だと思ったのだろう。奴はいくつもある触手でガードしようと動いた。まあさっきはそれでダメージを受けたんだから警戒するのも当然と言えば当然か。
だが、メダルは触手に激突するとダメージや衝撃が発生する事なく、光に変わって消失した。
『!?』
「ああ、ボディじゃなくても良いのか」
なら、もし回避行動を取られても、どこかに当たれば良いならなんとでもなるな。
そのまま最接近し、繰り出される触手攻撃を泳ぎと『濁流操作』、『空間魔法』などで回避に専念していると、先程投擲したメダルが排出され俺の所へと戻って来た。
「これで3枚目と」
『……!!』
「んじゃ、このまま全部変換しちまうか」
だけどあまりに接近しすぎたせいか触手による猛攻が激しく、メダルを取り出す暇は無かったので代わりを呼ぶことにした。
「『天罰の剣』」
『『『『『『斬ッ!!』』』』』』
『……ッ!!?』
召喚された『天罰の剣』は6本。こいつらは俺の意志に従って行動し、邪魔な触手を全て削ぎ落した。斬り落とされた触手は全て海底へと落下し、ゆっくりと煙になっていく。
イリスが見たら残念がりそうな光景ではあるな。
「んじゃ、今のうちにっと」
全ての触手を奪われ身動きができなくなった奴に、クリオネのメダルを放り込んだ。今の攻撃で奴の体力はごっそりと減っただろうけど、コイツには『自動回復Ⅳ』と『再生Lv5』の2つがある。放っておけばまた勝手に触手は生えてくるし、体力も無尽蔵に回復するだろう。
とりあえず、触手は再生した傍から天罰に斬り落としてもらい、メダルが全て交換完了するまでは生きていてもらわないとな。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「よし、これで終わりっと」
『……』
全9枚のメダル交換が終わり、その間にも無数の触手が斬り落とされた事で奴の精神はボロボロの様子だった。イカスミを吐き切った時以上に萎びてる気がする。
「んじゃ、ご苦労さん」
俺は武器庫から魔帝の剣を取り出し、頭頂部から垂直に振り下ろして一息にトドメを刺してやった。
『斬ッ!』
【レベルアップ】
【レベルが78から365に上昇しました】
そして『オーシャンクラーケン』から出た煙は、そのまま一カ所に集まることなく霧散してしまい、アイテムをばら撒いて消えていった。宝箱2つを排出して。
「これは……そういうことか?」
読者の皆様へ
この作品が、面白かった!続きが気になる!と思っていただけた方は、
ブックマーク登録や、下にある☆☆☆☆☆を★★★★★へと評価して下さると励みになります。
よろしくお願いします!










