ガチャ1046回目:クリティカルヒット
海底を直進し続けること十数分。俺達はようやくお目当てのモンスターが目視可能な地点にまで辿り着いた。
「海の底から見上げる『クラーケン』というのも、中々オツなものだな」
「趣がありますわね」
「ん。わびさび?」
「中々ない光景ではありますけど、風情はないかもです」
「泳ぐ災害ですからね」
「50メートル以上先だけど、どうするショウタ。先手打つ?」
「いや、どうせなら視える距離まで近付こう。ただ、恐らく現時点で奴もこっちには気付いていると思うんだよなぁ」
俺たちが地上にいるならともかく、水中は奴のホームだ。感知系能力がなくても、俺たちが会話することで発生する空気の振動やらで察知することは難しい話ではない。
敵意らしきものは、まだ感じられないが……今回ばかりはルミナスのような友好モンスターではないのは確実だな。そういう気配がする。
「……おっ」
1人突出して前に出ていたところ、50メートル圏内に入った瞬間敵意が飛んできた。
*****
名前:オーシャンクラーケン
レベル:280
腕力:2750
器用:3000
頑丈:2400
俊敏:1000
魔力:20000
知力:3000
運:なし
【Bスキル】剛力Ⅴ、怪力Ⅴ、阿修羅Ⅳ、怪力乱神Ⅲ、鉄壁Ⅴ、城壁Ⅴ、金剛体Ⅳ
【Pスキル】身体超強化Lv5、水耐性LvMAX、物理耐性Ⅲ、貫通耐性Lv8、自動回復Ⅳ、再生Lv5、体術LvMAX、格闘術LvMAX、弁天術LvMAX
【PBスキル】破壊の叡智Ⅲ、水の聖印Ⅲ
【Aスキル】気配感知、危険感知、反響定位、粘液生成、暗視Ⅲ、衝撃Ⅲ
【Mスキル】水魔法LvMAX、濁流操作LvMAX、海魔法LvMAX、宵闇魔法Lv5、混沌魔法Lv5、魔力超回復Lv5
★【Eスキル】ぬめりアーマーⅤ、墨弾、超速再生、超軟体
装備:なし
ドロップ:オーシャンクラーケンのゲソ、ランダムボックス
魔煌石:中
*****
「ほぉー」
以前のスタンピードで出た奴の完全上位互換だな。スキルとレベルが順当強化されてる。
普通にダンジョンボスクラスといっても遜色ない強さだな。
そして不思議なことに、奴は敵意をこちらに向けてはいるものの、こちらへと身体を向けることなくそのままぷかぷかと海面に浮かんでいた。
「……ふむ」
気になった以上試さざるを得ないな。俺はおもむろに後ろへ跳躍して、10メートルほど距離をとった。そうすると、奴はこちらへの興味を失ったかのように敵意が霧散し、再びその場でぷかぷかし始めたのだった。
そして2つのメダルは、相変わらず目の前の『クラーケン』を差し続けている。
「あー……そういうことね」
理解した俺は、その場で嫁達に説明をした。
「テリトリーに入らなければ無害なレアなのね」
「そして離れれば深追いもしてこないと」
「互いに手傷を負った状態でも、離れれば追ってこない可能性があるんですね」
「そこはまあ『直感』だけどな」
「ショウタ様の『直感』ほど信頼に足るものはありませんわ」
「ですが、メダルについては戦う必要はないかもしれないというのは、どういうことでしょう?」
「そこはルミナスがメダルを返却した事で思いついた奴だから、違うかもしれないんだが……とりあえず、無駄に余ってるメダルで試してみるか」
俺は懐からフィッシュのメダルを取り出し、『オーシャンクラーケン』に向けて全力投球した。海を裂いて飛ぶメダルは、何の抵抗も受けずに奴の懐にまで届き、そのヌメッたボディに激突。するとメダルは光を放ちながら消失した。
「お、ビンゴか?」
そのまましばらく待っていると、奴の身体から光が排出され、勢いよくこちらに向かって飛んで来た。
それをキャッチして詳細を見てみれば、想定通りの結果が記載されていた。
名前:メダル【フィッシュ】
品格:≪最高≫エピック
種類:トリガーアイテム
説明:ブレードフィッシュを討伐した証。
★しかるべき場所に奉納することで道が開ける。
★海流の王の力が宿っている。
★クラーケンの力が宿っている。
「ビンゴ。やっぱり戦闘しなくてもメダルに登録できればそれで良いんだな」
「ん。強敵と戦わなくても攻略を進められる。……優しさ?」
「優しさと言える……んでしょうね」
「高難易度ダンジョンですし、回避ルートもあるという事でしょう」
「だからといって、あたし達まで回避する必要はないけどね」
「勇者様、このまま戦闘開始されますか?」
「……いや、残りのメダルも変換してからだな。戦闘が終わったら交換できないかもだし、今やっちゃおう」
とはいえ、1回ずつ投擲するのも面倒だ。けど、全部投げて1つ以外全ロストとなると悲しみが襲いかかってくるので、フィッシュのメダルを5枚同時に投擲することにした。
「せりゃ!」
メダル5枚が海を裂きながら飛翔し、奴の本体に激突した。
『ドドドドッ!!』
「あれ?」
『……ッ!?』
予想だにしない結果になった。
最初の1枚はぶつかった瞬間にしっかりと光に変わっていったが、残りの4枚は全て実弾として激突。ちゃんと攻撃判定になったらしく、知覚範囲外であるはずなのに奴からはちゃんと敵意が向けられていた。その上、あのメダルは『最高』というそれなりの高ランク物質による実弾だ。かなりのダメージが入ったみたいだな……。
「あー……。やっちまったな」
『やっちゃったわねー♪』
『すっごく怒ってますよー』
『どんまいですっ、マスター様!』
敵対してもダンジョンに登録されたシステムはきちんと機能を果たしたらしく、光に変わったメダルは俺の元へとしっかりと帰って来て、残りの4枚はポロポロと海底へと沈んでいった。あれらはクリスが回収に動いてくれるみたいだし、残りは戦闘中に投げるとしますかねー。
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