ガチャ1044回目:溢れる宝箱
俺達が見守る中、12個の煙はしばらく水中に留まり続けていたが、10分ほど経過したところでようやく動きを見せた。だがそれは、大多数が予想していたものとは異なり――。
「……おっと?」
全ての煙が霧散し、今までのアイテムを全てばら撒いたのだった。
「水よっ!」
『キュー!』
そのアイテム群はクリスとルミナスが力を合わせる事で漏れなく回収され、改めて作られた海上の簡易拠点にまで運ばれた。
『残念な結果になっちゃったわねー』
「まさか出ないとは思わなかったわ」
「ん。クリスナイスカバー」
「流石クリスさんですねー」
『ずっと構えていたようですし、先見の明があるのですかー?』
「いえ、万が一に備えていただけでしたし、慌てて簡易詠唱もしてしまいましたから、まだまだですわ。けど、間に合ってよかったですわ。ルミナスちゃんも、お手伝いしてくれてとても助かりましたわ」
『キュー♪』
「2人ともありがとなー」
クリスとルミナスを両隣に並べて褒めて撫でる。その喜びを表現するのを、クリスは目を細めるだけなのに対し、ルミナスは頭をぐりぐりと押し付けて来て、もっと撫でるように催促している感じだ。
この辺はもううちの子たちと同じかもな。
さて、切り替えていくか。
「まあ出なかったものは仕方がない。レアⅢのアイツにだけ再出現時間が設けられていた可能性があるし、ダンジョンの特性上、下手すると器を既に獲得していたために出なかった……なんてこともあり得るからな」
問題があるとすれば……。
名前:青の宝箱【フィッシュ】Lv5
品格:≪最高≫エピック
種別:モンスタードロップ
説明:190ダンジョンでのみ出現する特殊な宝箱。
★最高位の報酬しか入っていない最高レベルの宝箱。
この宝箱が12個も並んでいるところだ。
「流石にメダルは12個も要らないよなぁ」
「ん。使い道が無い」
「『魔石変換器』に突っ込むくらいでしょうか?」
「品格は『最高』止まりですし、さほど旨味はなさそうですよね」
「ま、無いよりはマシでしょ」
「そうですね~」
『キュ~?』
とりあえず、メダルがルミナスの反応するかは見ておかないとな。
そう思って宝箱に触れると、予想だにしない物が目の前に現れた。
【アイテム】
【アイテム】
「ふぁ?」
あまりに想定外の表記に、素っ頓狂な声を上げてしまった。
まさかここで選択肢が出てくるとは。
『もしかして、モンスターの数が多いからでしょうか?』
「挑戦回数が多いから、最高レベルの宝箱でも確率箱になってるってこと?」
「ありえますね~」
「ん。ダンジョンならやりかねない」
「でも、今のわたくし達にはラッキーな話ですわよね」
「ふふ、その通りですね」
全くだ。どうしようもないメダルだけだったものが、急に意味のあるアイテムに代わる事になったのだから。
とりあえず上の選択肢からだな。
名前:メダル【フィッシュ】
品格:≪最高≫エピック
種類:トリガーアイテム
説明:ブレードフィッシュを討伐した証。
★しかるべき場所に奉納することで道が開ける。
『キュ~!』
新しいメダルにルミナスは大興奮だった。
魔力の流れを視ても、やはりメダルから伸びる線はルミナスを指している。
「ルミナス、あーん」
『キュ~』
可愛らしく口を開けるルミナスにメダルを放り込むと、1度目と同様に光の球が口から勝手に出て来て、遅れてメダルも吐き出した。
メダルは前回同様『海流の王の力が宿っている』の一文が追加されているのと、目指す先がルミナスではない物を指し示している。行先はクリオネのメダルと同じみたいだ。そしてこの先には……例の『クラーケン』がいる方向だな。だけど、さっきルミナスと出会ったばかりの時は、全く別の方向を指し示していたような気がしたんだが……気のせいか?
まあそれは後で確認するとして、今はもう1つの方をチェックすべきだな。
「さーて、何が出て来たかなっと」
光の球は徐々に輝きが弱まって行き、その姿を現した。それは……コンパスのようなものだった。
ようなものと題したのは、本来のコンパスと違って指針が3本も存在していたからだ。だが、このマップに潜む巨大な存在の位置を明確にわかる俺達なら、それが何を意味しているのか丸わかりだったが。
名称:海王種探知機
品格:≪遺産≫レガシー
種別:アーティファクト
説明:ダンジョンに海王種が存在するかを探知する事ができる秘宝。ダンジョン外であれば白い指針が動き、もっとも近くに存在するダンジョンに向けて指針が方角を示す。ダンジョン内であれば出現させる条件となるモンスターやトリガーを黒い指針が指し示す。
★海王種が活動中の場合、ダンジョン内外問わず赤い指針で示される。
『ダンジョンマーカー』に近い性能はしてるけど、『海王種』って存在がいるかいないかを調べる専用のアーティファクトってところか。
「んで、赤い指針が3本ある訳だから、当然このイカとサメとカメは『海王種』というわけだ」
『キュ~』
「このモンスター達は、『海王種』という存在だったのですか」
「やはり向こうでは、きちんと区分されていたようですわね」
『んー……。マスター、『海王種』について解説は必要?』
「ああ、軽い感じに教えてくれ」
『分かったわ♪』
アズはアーティファクトをマジマジと見てから少し思案している様子だった。俺に通じるように、かつネタバレにならない範囲で考えてくれているんだろう。
『『海王種』ってのはまあ、簡単に言えば海に住む大型モンスターの総称であり、強さを表す指針でもあるわ。そんな『海王種』の中でも最低ランクの連中は、そのまま『王』って呼ばれてるの。ちなみにその次のランクは『帝』よ』
「最底辺で王なのか。ちなみに俺が今まで戦った中で、『帝』はいたのか?」
『マスターが戦った巨大亀やドラゴンはギリギリ『帝』じゃないかしら? でも向こうからだいぶ弱体化してるし、その辺は曖昧よね~』
「そうか……」
まあ、向こうの現役時代ではどんなに強くても、こっちに来る折に弱まってるんじゃなぁ。元は『帝』と呼ばれた化け物ですら、『王』にまでランクダウンとかありえる話か。
現役時代のボス連中かぁ。興味が尽きないな。
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