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ガチャ1026回目:海流の内側

 壁に辿り着けない事に驚愕しつつも、視界を飛ばす事数分。ようやく俺の視界が限界地点に激突した。どうやら、ようやく壁に届いたようだが……。


「この広さ、『696ダンジョン』の第四層を彷彿とさせるな」

「ん。めちゃくちゃ広い」

「あちらは実際に動けるのは各島々でしたが、こちらの海に移動不可の場所はなさそうですね。広さで言えば、こちらの方が数倍ありそうです」

「この階層はあまりにも広大すぎる為、探索が思うようにできていませんわ。幸い、第四層へ続く階段は見つかっていますので、長居される方もあまりいません」

「そうなのか? めちゃくちゃ広いから、狩り自体は自由気ままにできそうなのに」

「この島から一定の距離を離れると、途端に海流の流れが激しくなる場所があるのですわ。その為、『泡魔法』を使用して海底で戦闘をしていても、油断すれば流されてしまいまして、その結果方角が掴めずに迷子になる方が続出したのです。幸いな事に、海流に流された冒険者の内半数ほどは無事に帰ってこられたのですが、残りは……」


 彼女の言葉には万感の思いが込められていた。てか、この階層に来る冒険者って、普通に考えて相当なレベルだよな? それが方向感覚が狂うレベルで流されるって、どんな激流だよ……。


「ただ、その被害についても大まかな海流の位置が判明した今となっては、流され続けていればその内第四層への階段近くを通るので、それを目印に自力で脱出できるようにもなりました」

「ふむ」


 そこまでの情報が解明されるまでに、かなりの数の犠牲がありそうだな。けど、海流に飲まれた冒険者の半数は無事に戻れたってのは、中々ラッキーな話だ。


「しかし、ここまで広いと俺だけじゃ対処できない。アズ、クリス。俺の予備の視界になってくれるか」

「はい!」

『はーい♪』


 2人を両側から抱き寄せ、『鷹の目』と『視界共有』を付与する。


「それではわたくしは、ショウタ様とは対角線上になるように動きますわ」

『じゃ、あたしは島の周りを塗り潰すようにぐるぐると広がっていくわねー』

「任せた」


 そうして3人がかりでマップの情報を広げていき、数十分かけてようやくマップが完成した。


「ふぅー。ようやく終わったか」

「とても疲れましたわ……」

『マスター、褒めて褒めてー?』

「ああ。2人ともよく頑張ってくれたな」

『んふー♪』

「ふふ、頑張った甲斐がありましたわ」


 2人を纏めて褒め倒している間、他の面々は完成したマップに夢中になっていた。中でも彼女達が気にしているのは、広大なこのマップを回遊している複数の()()の表記だろう。

 俺もマップを埋める際に何度も目視したから、その姿はタッチすれば詳細は見れるのだが、最初は目を疑った。……今皆が見ているのは、いつぞやのスタンピードで出現した、巨大なカメにそっくりのモンスターだな。

 流石に『鷹の目』では相手のステータスは覗き見れないから、その強さは分からなかったが、赤丸である以上レアモンスターである事は確定している上に、全部で3つある赤丸はカメだけではないのだ。残りの2種は、サメっぽい姿の奴に、クラーケンのような見た目のイカだった。いずれも赤丸であり、発見してから十数分経過しても優雅に泳ぎ続けているところからして、こいつらは時間で勝手に出現するタイプか、もしくはダンジョンボスが意図して配置した中ボス的存在かのどちらかだろう。


「クリス、こいつらの撃破報告は?」

「ありませんわ。いえ、そもそも存在を確認できていなかったはずです。3体とも、先ほどお伝えした海流の外側にいますから」


 なるほど。流れの速い海流を越えなければそもそも接敵できないということか。そして海流自体危ないから無理に超えようとする猛者もいないって感じかな。……いや、クリスの口からそんな言葉が出るという事は――。


「次の階層は海流の内側にあって、稼げる階層は4層以降にあって、なおかつ海流の外側に向かった連中は1人も帰ってこれなかったのか?」

「その通りですわ」

「ふむふむ。海流はダンジョンギミックっぽいし、マップを全開放すれば海流の流れも見れそうではあるが……それをしたらさっきまでの苦労が水の泡だしな」

『そうねぇ。今すぐにそれの確認はしたくないわね』


 そしてマップには当然モンスターの赤点も映ってはいるのだが、こいつらは水中の奥深くにいるためか、『鷹の目』からは確認できなかった。

 てか、この海流の流れもある程度今のマップでもどの辺りに流れてるか視えなくもないな。モンスターの赤点は海全体に満遍なく分布しているが、明らかに何もない空間が存在していた。その形状は若干楕円を描いていて、その付近には内外問わずモンスターは近寄らないように動いているようだ。


「クリス、海流の内側のモンスターは1種類だな?」

「はい、その通りですわ」

「よし。そんじゃまずはそのモンスターの面を拝みにいくか」


 俺達は改良型バブルアーマーを纏って、次々に海へ飛び込んだ。



◇◇◇◇◇◇◇◇



「おー」


 その光景は第一層とは異なり、見事な珊瑚礁が広がっていた。上空からでもそれがある事は見えていたが、やっぱり直接視るのとではインパクトが違うな。


「うーん、十二分に観光地として使えそうではあるが、来るまでが面倒すぎるな」

「ん。一般客のことを考えると、ここのモンスターも面倒そう」


 そう言うミスティの視線の先には、クリオネのような生物が水中を泳いでいた。まあその全長は、1メートルを越えてたんだが。


*****

名前:ブルークリオネ

レベル:45

腕力:280

器用:180

頑丈:120

俊敏:320

魔力:300

知力:400

運:なし


(アーツ)スキル】水泳Lv2

(マジック)スキル】念動力Lv1、水魔法Lv2、水流操作Lv2、魔力回復Lv1

★【(エクス)スキル】ぬめりアーマー


装備:なし

ドロップ:ブルークリオネの肉

魔石:小

*****


 ふむ、魔法を使うクリオネかぁ。

 その辺をただ泳いでるだけなら、鑑賞目的にも使えそうだが……ダメっぽいなぁ。明らかに、こっちに敵意向けてるし、ちゃんとアレもモンスターみたいだ。

10/10よりコミカライズ2巻の予約が開始されました。

https://tobooks.shop-pro.jp/?pid=188675392

よろしくお願いしまーす!!

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― 新着の感想 ―
クリオネの補食はイメージブレイカーですね(笑)
こんにちは。 クリオネかぁ…。やっぱりリアルのやつみたく、頭パカッしてキモい見た目の攻撃してくるんでしょうね。
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