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ガチャ1023回目:イレギュラーな宝箱

 『青の宝箱【イレギュラー】』を、皆興味深そうにしげしげと眺めている。


「ん。通常の1.5倍くらい大きい」

「思えば、宝箱って全て同じ規格でしたわよね」

「中身もそれだけグレードアップしてるのかしら」

「期待できますねー」

「アズさんは知っていましたか?」

『んー。ノーコメント♪』


 まあアズはそうだろうな。それもあってか、ペット組はちょっと後ろで見守っているようだ。


「そんじゃ、開けてみるか」


 いつものようにタッチしてみると、選択肢が現れたが――。


【どちらの報酬を獲得されますか?】

【タッドポールマンの撃破報酬2個】

【タッドポールマンの特別報酬1個】


「これは……いつもの指輪の効果じゃないな」

「この宝箱限定の内容かしら」

「特別……魅力的な提案ですわね」

「撃破報酬は、今までのメダル宝箱と同様のものかしら?」

「それなら、勇者様がまた戦えば簡単に獲得できそうですよねー」

「ん。それなら選択は一択」

「だなー」


 という訳で、特別報酬をタッチと。

 すると宝箱が輝き始め、いつものサイズの宝箱へと変質した。この青い輝きは……『アダマンタイトの宝箱』か。


「いくらレアⅢだからって、『極大魔石』程度で『アダマンタイトの宝箱』が出るって事は、ちゃんとグレードアップしてるっぽいな」

「どうする? 開けちゃう?」

「開けちゃうか」


 いつもは宝箱は持って帰ってから開けるけど、こんな変化を見せられちゃあな。

 再びタップすると、やはりというか選択肢が出てきてくれた。


【アイテム】

【素材】


「おっと、少なくともアーティファクトが来るかと思ったが、そうでもないか」

『あ、マスター。アイテムはよくわかんないけど、素材は結構良いものだと思うわよ。あたしが知ってる通りのものならね』

「そうなのか? じゃあ、アズの言う通りにしてみるか」


 アズがこう言うって事は、本当に良いものか、それかアイテムの方が良くないものかのどちらかだよな。両方の可能性もあるか。


「ポチッとな」


 そうして宝箱を開けると、中に入っていたのはエメラルドグリーンに輝く宝石だった。


 名称:蒼穹の蝦蟇結晶

 品格:≪遺産≫レガシー

 種類:素材/秘宝

 説明:海底洞窟に住まうカエル達が大切にしている秘宝。高度な錬金術の素材になるとも言われているが、彼らにとって大事なものであるため安全に持ち帰るのは非常に困難。

 ★所持しているとカエル系モンスターが集まってくる。


 ほほう。


「素材としても使えるし、ダンジョンだとカエル版の精霊石としても扱えるわけか」


 そう呟いていると、早速周囲に復活したカエル達がこちらに向かって動いている様子がマップを通じて目視できた。


「ん。驚きの吸引力」

「明らかに感知外からやってきてるわよね、コレ」

「宝石は今まで色々と見てきましたが、なるほど。引き込まれそうな魅力を感じますわ」

「これが彼らにとってお宝だというのであれば、納得ですねー」

「タマモさんの手に掛かれば、特別な何かが作れるのでしょうか?」

「それは本人に聞いてみないことには分からないなー。って訳でアズ、タマモへの連絡よろしくな。現物はしばらくこっちで使ってから送るよ」

『任せて♪』

「……っと、その前に」


 今のレベルならガチャを回せるはずだが……ふむ。


『マスター様、どうされました?』

『おにいさん、悩み事ですか?』

「んー、まあそうだな。例の『強奪』野郎のことを考えてたんだが、単純にガチャを回すよりも、警戒網を強めると言う意味で、ここにいる全員に『解析の魔眼』を振り分けた方が効果的なんじゃないかなと思ってさ」


 そう言葉にしても、皆よく分かっていない様子だった。だがアズだけは、しばらく考えたのちに何かに思い至ったような表情を浮かべる。


『なるほどね。確かにその『強奪』って奴が文字通りスキルを強奪するとしても、その手段は分かっていないのは、普通では知覚できない手段を使ってるからとマスターは判断したのね。けど、目に見えないものを見るなら、このスキルが必要不可欠よね』

「そういうこと」

『ただ、マスターも忘れてると思うけど『魔眼適正』のスキルが無いと結構負担がかかるわよ、このスキル。あたしはこっちに来る前から取得してたから問題ないけど』

「あー……そういやそうだっけ」


 最近は当たり前のように常用してるけど、取得した時は情報量の多さに頭がパンクしそうになったっけ。


『常用化を前提にするなら、『魔眼適正』のスキルもコピーしておいた方が良いと思うわよ。全員分の『解析の魔眼』を用意する事も踏まえると結構消費しないといけないと思うし、さっきの4つの使用先、変更する? まだ使われてないはずだけど』

「いや、そっちはそのままでいい。俺の『直感』通りなら、奴は今日明日中に仕掛けてくることはほぼ無いと思ってるんだ」

『そうなの?』

「ああ。奴は強欲だろうが、今まで捕まっていないところからしてかなり慎重なタイプだと思う。行き当たりばったりな行動はしないはずだ。だから知らないダンジョンに無作為に突撃してくる事はないと思ったんだよ。……まあ、奴がこのダンジョンに足繁く通ってたとか、情報収集してたとかなら話は別だけど」


 皆の視線がクリスに注がれる。


「そのような話は受けていませんが……念のため、支部長に確認しておきますわ」

「よろしく頼む。そんじゃ、カエルも集まって来たし、狩りを再開しようか」



◇◇◇◇◇◇◇◇



 数十分後。

 洞窟がほぼ広場と言っても差し支えないくらいに広がったことで、モンスターの出現速度も爆発的に増加。そして無限にやってくるカエル達のおかげで、あっさりとカエル300とデカカエル3体、風船毒カエル3体を撃破し、追加の『タットポールマン』の呼び出しに成功。

 レベルも5つ目の『解析の魔眼』に変換し、『タットポールマン』は暴れる前に速やかに確殺。


【レベルアップ】

【レベルが88から226に上昇しました】


 そうして通常の撃破報酬が出現するのだった。


 名前:青の宝箱【タッドポールマン】Lv――

 品格:≪遺産≫レガシー

 種別:モンスタードロップ

 説明:190ダンジョンでのみ出現する特殊な宝箱。

 ★特殊なモンスター枠のためレベルは存在しない。


 ほほう。

 まあ、こいつを呼び出せる時点で相当な『運』が必要になる訳だし、ここでまた『運』による再抽選は行われたりはしないか。

 

「こっちの中身は何かなーっと」

10/10よりコミカライズ2巻の予約が開始されました。

https://tobooks.shop-pro.jp/?pid=188675392

よろしくお願いしまーす!!

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