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ガチャ1015回目:最大警戒

「でもさ、そいつがマップスキルによる感知を無効化するスキル持ってたら、これでの判別はできなくない?」

「そうかもしれませんが、絶対に持っていないと確証は持てていませんので、注意するに越した事はないですよ」

「それもそうか」


 もし俺達に敵意を飛ばしていた存在がその『強奪』野郎だったと仮定して……。特異な存在であるそいつなら、俺が敵意に気が付いて反応した事にも、逆に気が付いていてもおかしくはないはずだ。となれば、そんな状態で接近を考えるなら慎重になるだろうし、なんならアンタッチャブルと判断して勝手に距離を置いてくれるかもしれない。

 でもそれは楽観視し過ぎかもな。わざわざ()()()()()あんな熱烈なラブコールを送って来たのだ。より一層敵視されていてもおかしくはない。

 自惚れるつもりはないが、俺の行動は今や世界が注目している。そして俺が娶った女性陣についても知らない奴はいないだろう。そんな中、嫁が抱えていた問題ある『696ダンジョン』と『100ダンジョン』、それから『666ダンジョン』が制覇されたのだ。残る他の高難易度ダンジョンも時間の問題だと思われていただろうし、どこかに焦点を絞って待ち伏せするのも不可能じゃない。待っていれば、その内相手が勝手に来るんだからな。


「……ん? なあ、そいつは指名手配されてて、顔も全国的に割れてるんだよな。そして徒党を組まずに基本的に個人で動いている。ってことは行動が制限されているはずだし、となれば飛行機も乗れないし、船での移動も難しい。そんな奴がサクヤさんからこの付近にいると指定されるってことは、奴はユーラシア大陸でしか動けないのか?」

「はい、その通りです」

「そして国によっては見つかり次第撃たれるって事が決まってる以上、通れる国も決まっている訳だ」

「そうなりますねー」

「国家間を移動するには当然検問などがありますし、ダンジョンにより文明が発達してからは不法入国の難易度が跳ね上がっています。ですが、アーティファクトの中には一定時間顔を隠したり、姿形を別の物に変えたり、存在を誤認させるものや、存在を消し去るものまで様々ですから、防壁も完璧ではありませんわ」

「ふむふむ」


 それでも、そんなアーティファクトも万能じゃない。大体は時間制限がついてるし、発見後即時射殺される国には、長期滞在せずにさっさと通り抜けるなりして避けるだろう。中々壮絶な人生だ。

 それにしても、『強奪』なんて二つ名を持つくらいだ。自らそうなる道を選んだって事は、強いスキルは何が何でも自分の物にしたいだろう。とすれば、どんなスキルを持っているか謎なのに、やたらと強いと思われている俺の存在は、そいつにとっては極上の餌でもあり、目障りな存在のはずだ。なら尚の事、俺が感知した存在が『強奪』本人だった場合は、俺に認識されたからと言って身を引くなんてありえない。絶対に仕掛けてくる。

 仕掛けるとするなら、どのタイミングが有効だろうか……?


「ま、俺達がやる事は変わらん。注意しつつも攻略を進めて行こう」

「ショウタ。安全に行くなら一度帰って、日本で散々存在をアピールしてからちょこちょここっちの攻略を進めるとかでも良いんじゃない?」


 嫁達がうんうんと頷いた。

 まあそれも1つの対策ではあるんだろうけど。


「ある意味、そいつは外をうろつくモンスターみたいなもんだ。安全なエリアを広げていくことが目的なら、そいつは存在そのものが邪魔だ。俺を狙ってくれてることが可能性として高まっている今なら、逆に俺も狙って返り討ちにできる機会だと思うんだよな」


 こんな危険人物は、子供たちの未来のためにもきちんと摘み取っておきたいからな。


「これを逃したら、もうチャンスは無いかもってことですか?」

「まあ俺の『運』があればまた遭遇するチャンスは巡ってくるかもだけど、その間も被害者は出続けるだろうしな。その手の情報は皆がシャットアウトしてくれはするだろうけど、裏でそういうことが起きてるのはちょっと寝覚めが悪いし。それに悪意ある人間は楔の結界じゃ弾けないから、内側に入り込まれても迷惑でしょ」

「ん。それはそう」

「勇者様がそう判断されたのでしたら、応援しますっ」

「警戒は引き続きわたくし達にお任せくださいっ」

「アズさんも、協力をお願いしますね」

『ええ、勿論よ。あたし達クラスでも油断すると持っていかれそうな相手みたいだし、協力は惜しまないわ。リリス、あんたの能力、期待してるわよ』

『はいっ。できる限りの事はしますっ!』

『ではマスター様。改めて第二層に向かわれますか?』

「そうだな。移動するか」


 皆で改良型バブルアーマーを纏い、海へと飛び込んでいく。第二層へと続く階段は、もう目と鼻の先だった。


「おぉ、海の中に階段か。こりゃ本当に珍しいな」

「ん。そもそもこのダンジョン、色々と不親切。二階層へ行くのに水中に潜らされるのに、『泡魔法』が第一層に配置されてない」

「確かにそうだな。クリス、その辺どうなんだ?」

「確かにダンジョン出現当時は『泡魔法』の存在自体が知られていなかったのもあって、ほとんどの人は酸素ボンベとダイビングスーツで潜っていましたわ。ただ、なぜかそういう装備をしているとモンスターから優先的に攻撃されたりもして大変だったと聞きますわね」

「あ~」


 空高くに飛び上がれば優先的に攻撃されるのと同じように、酸素ボンベなんていう現代的な装備を身に着けてたらダンジョンに目を付けられるのか。そりゃ大変だ。

 そして今の言い方的に、『泡魔法』の入手手段は一応用意されているのか……?


「ですので、わたくしが『水』を取得する前は、素潜りで通り抜けていましたわ。幸い……えっと」

「良いよ、言って」

「はい。第二層に入ってすぐの場所に、息継ぎするポイントがありましたから」

「そうなのか。んじゃ、第二層に降りるとしますかね」


 そうして俺は意気揚々と。そして嫁達は警戒心を露わにしながら階段を下って行くのだった。

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