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ガチャ1012回目:久々の欠片

 俺達は一度陸地に登り、そのまま反対側の海へと飛び込み目的地へと向かった。途中でヒトデを数十体煙に変えつつ、目的の場所へと辿り着くと、そこには……。


「渦?」


 ダンンジョンなのだから当然海流なんてものは無く、波も雰囲気的にシステムが発生させているだけ。潮の満ち引きなんてものも存在するわけがない。そんなダンジョンの海に、不自然に渦潮が発生していた。

 といってもその規模は微々たるもので、小さな竜巻のようなものが水中に発生している程度のものでしか無かったが。だが、それによって海水の流れに変化が生じているんだろう。渦潮に呑まれたヒトデが滅茶苦茶群がっている。さっき別のところをコインが指し示した時も、マップではヒトデが群がってたみたいだし、あっちもこんな感じだったのだろう。


「まあ確かに、これは説明されるよりも見た方が早いな」

「はい。そしてこれも常に発生している訳では無く、かなりランダムで発生するんです」

「やっぱりか。……ってことは、この階層でそういう場所、何個か見つかってるとか?」

「はい、その通りです、ショウタ様」

「ははーん。そういうことね。ダンジョン側が分かりやすく目印を立ててくれてる訳だ。まあ普通の奴は、渦潮とヒトデっていう二重の意味で危険なこの空間に、わざわざ近付こうとはしないだろうが」


 そこまで言えば全員理解したようだ。そう、この渦潮の根っこにはトリガーを納める場所が存在しており、しかもランダムで移動をしているという事だ。そしてネックはそのランダム要素だろう。

 クリスの説明によると、あの渦潮は不定期に発生しているらしい。だとすればトリガーポイントを探すにはまず渦潮を見つけ出し、あのヒトデの群れをなんとかした上で、渦潮に飛び込む覚悟がないといけないわけだ。中々にいやらしい造りをしてるじゃないか。


「このいやらしさ、696に通ずるものがあるな」

「ん。そんなダンジョンを約10年間、1度もスタンピードを起こさずに共存してきた事は、素直に尊敬できる」

「ふふ、ただ『運』が良かっただけですよ。なにせ、出現したのが首都のど真ん中ですから」

「第二陣の100番台は、そういう傾向が特に強かったですからね~」

「そうなんだ?」

「はい。日本にも首都圏に出現した高難易度の100番台がありますでしょう?」

「……あ~」


 そういや『上級ダンジョン』もNo.は128だったな。そうすると、200にいる奴はわざと高難易度の激戦地を首都に放り投げたのか。うーん、それだけだとそいつが悪辣かどうかは判別できんな。


『まあそうね。最初の0番台から400番台は、この星の主要な都市国家群の中でも繁栄している場所に集中的に出現するように設計されてたものね~』

「その傾向が強いとは言われてたけど、やっぱりダンジョン側でもそういうルールがあったのね」

「ではアズさん、500番台から900番台は、人の少ない場所に出るという認識に間違いは無かったのでしょうか?」

『ええ。ただ、出やすくなるってだけで、街中に出る事もあるとは思うわよ。それこそ、696や810なんかがいい例よね』


 ま、どっちも都市のど真ん中と言えばど真ん中だからな。そして都市近郊から離れた山奥という立地の777もあるが……今のところ、どっちにも出るけどどっちかに偏るほどでもないか。

 そして最後に1000番台からは水中にも偏りが出始めたと。


「さて、余談はさておきあの渦を攻略するか。とりあえずヒトデを退治しよう」


 水中における魔法は威力が落ちる上に、対象は複数。その上渦潮のせいで威力が分散しそうだから、完全に不向きだな。となれば武技スキルな訳だが、ここで槍も弓の技も効果は無いだろうし、属性技も水のせいで威力がた落ちだ。

 となればやっぱり、いつものが効果的かなぁ。


「……『閃撃・一刀破断』!!」


『斬ッ!!』


 巨大な『閃撃』が渦潮ごとぶった斬り、いくつものドロップと煙が散らばって行く。

 そしてそんなアイテム群をクリスは水流を操作することで、器用に手元に全て集めきるのだった。明後日の方向に吹っ飛んで行ったものもあったのに、本当に凄い操作力だな。


「相変わらずすごいな、クリスは」

「ふふ。やはりショウタ様に褒められると、照れてしまいますわ」


 そんな風に照れる彼女を嫁達で褒め倒している間、しばらく様子を観ていたが、破壊した渦潮は復元したりせず何も起きなかった。けど、2種類のメダルは変わらず同じ地点を指し示している。

 発生源の存在しない渦を破壊した事で、何も起きなくなったのだろうか。あのやり方で正解だったのかは定かではないが、とりあえずメダルを持って進んでみるか。


「ふむ……。おっ」


 コインを手に握った状態で目的の場所まで足を運ぶと、突然小さな台座のようなものが何もない空間から突如として現れた。どうやら、コインを持った状態でないと姿を現さない仕組みらしい。

 台座には丁度2つの丸いくぼみがあり、そこにコインをはめるとカチリと音が鳴った。そしてコインを2つ嵌められた台座は次第に輝きだし――。


『ガコンッ』


 どこからともなく宝箱が出現し、台座は消失していた。


 名称:深海の宝箱Ⅰ

 品格:なし

 種類:宝箱

 説明:シザー・スターのメダルを捧げる事で出現する宝箱。


「『Ⅰ』ねぇ……」


 こりゃ、階層ごとにありそうだ。

 中を確認してみると、光が飛び出し俺の中へと入って行った。その光景に懐かしさを感じつつ、俺は自分のステータスを確認した。

 どれどれ。


*****

管理者の鍵(中枢):100

管理者の鍵(末端):001、450、454、525、601、607、666、696、777、810、1086、1097、1099

管理者の鍵(破片):190(1)

*****


「お、久々の破片だ」


 ここもまた、楽しくなりそうだな。

読者の皆様へ


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