ガチャ1010回目:高速スピナー
「……クリス。それも、『水』の応用?」
「はい。正確には『泡魔法』と『水』の応用となりますわ。取得するまでは試行錯誤がありましたが、それほど高度な事はしていないのです」
「という事は、『エレメンタルマスター』を手にした俺達も、似たような事ができるって事?」
「はい、恐らくですが」
「おお……!」
それは気になるな。
……ん? でも待てよ? 『エレメンタルマスター』をゲットしてからそれなりに日が経っているし、こんな便利な技法があるなら、クリスの性格を思えば皆に共有していてもおかしくは無いはずだ。けど、誰もその魔法を試さず俺と同じようにバブルアーマーを展開している。
となると、これは……。
「もしかして皆、俺が聞くのを待ってた?」
「ん。どうせならショウタと一緒に学びたいと思って」
「うえぇ、マジで? 本当に待っててくれてたの?」
「あ、ですけど全部がそうという訳では無いですよ? ショウタ様が必要としそうな技法だけは後回しにして、それ以外のものはちゃんと教えてもらいましたから」
「そうね。例えばアイテム回収のための水の操作だとかは、先んじて教えてもらっていたわ」
「俺もその方法は、どうやってるのかなんと無くわかりはしても、詳細は知らないから知りたくはあるんだけども」
「勇者様自身、アイテム回収そのものを嫌がっている訳では無いことは重々承知していますよー? ですけど、私たちがいる以上ご自身で率先してなされることは滅多にありませんし、適材適所ですっ」
「ですがショウタ様が望まれるのでしたら、この後レクチャーして差し上げますわ」
「ああ、よろしく頼む……っと」
そうして話している間にこちらに勢い良く向かってきていた物体を、俺はすんでのところでキャッチした。水中を回転しながら飛来してきたそれは、ヒトデ型のモンスターだった。
*****
名前:スターフィッシュ
レベル:14
腕力:68
器用:77
頑丈:45
俊敏:20
魔力:80
知力:40
運:なし
★【Eスキル】高速スピン、毒の棘
装備:なし
ドロップ:煌めく星砂
魔石:小
*****
「何かと思ったら、ヒトデかよ」
手裏剣のように縦回転してくるから何かの遠距離攻撃かと思ったけど、まさか敵そのものとはな。しかも、ちゃっかり毒を持ってるし。
俺が掴んだのは星のへこみ部分だが、このヒトデには裏面だけじゃなく、星の外側部分にもビッシリと棘が出ていた。その全てが毒を持っているんだろう。つまり、今俺が掴んでいるところもしっかり毒があるということだ。
まあ、俺の『頑丈』をもってすれば、油断していたとしてもこの程度の棘に皮膚が貫かれることは絶対にないし、毒もまた同じだ。ただ、一般の人たちなら致命傷になりうる危険性があるのもまた事実だな。
「ここさぁ、観光客が遊んでいる場所からそれほど離れてない距離だけど、大丈夫なのか?」
「はい。生息域と行動圏はかなり特定できているので、あの方たちは明確な安全地帯で遊んでいるんです。ですので、そこから飛び出さない限りは事故は起きていないんです」
「ほーん」
といっても『ハートダンジョン』のようにダンジョン側で明確な安全地帯が取り決められている訳じゃないんだし、油断はできないと思うんだがなぁ。でもまあ、注意深く観察してみれば、彼らが遊んでいるところには安全区域を示すためなのか、ブイや浮き輪のようなものが浮かんでるし、あの内側にいればヒトデが襲ってこないと分かってるからこそ、のんびり遊んでいられるのかも。
今俺の手の中で藻掻いているヒトデは、結構な距離から感知はしてきたが、奥の方にいる連中はこっちに来る気配は無いし、今回はたまたま俺達が飛び込んだ位置が、連中の感知範囲ギリギリだっただけなのかもな。
「ここの解放が終わったら、こいつらの感知範囲を狭めるとか、活動範囲そのものを奥に押し込んでやるとするか」
「宜しいのですか?」
「ああ。いつでも遊べる遊び場は、広い方が楽しいだろうしな」
そう言いつつ、俺はヒトデを握り潰す。煙が噴き上がり、手の中には魔石と少量の砂が残るのだった。
名称:煌めく星砂
品格:≪希少≫レア
種類:アイテム
説明:スターフィッシュから少量のみ採取できる希少な砂。これを使って作成されたガラスには、星の輝きが散りばめられる。
「だいぶお洒落な素材だな」
しかも、本当に少量らしい。今までなら俺が倒せばどんな素材だって最大量ドロップして来たのに、今回ばかりはほんのちょっと。
具体的に言えば、大さじ一杯分程度の砂しかドロップしなかったのだ。これが最大量だとしたら、流通させるのも大変なレベルだろう。
「タマモならいい感じに処理できそうだが、数が欲しいな」
「そうね、ガラスにするっていうなら、相当な量が必要になるはず」
「一粒も無駄に出来ないし、こいつらの倒し方は遠距離じゃなく近距離か、握りつぶすのが得策か」
地面に落ちたら、普通の砂と見分けがつきそうにないしな。
とりあえずこいつはバブルアーマーの内側に取り込んでから鞄に仕舞ってと。
「じゃあ、クリス。その『泡魔法』と『水』の混合化したやり方を教えてくれ」
「畏まりましたわ。地上に上がりますか?」
「いや、このまま水中でやろう。どうせ失敗しても全身びしょ濡れになるだけだし、なんなら、このまま雑魚を100体倒すまでに使いこなしてみたいところだな」
「ふふっ、頑張ってくださいね」
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