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ガチャ1007回目:ワンパン

 やはりというか、この階層は遊び目的の人間が多いのか、レジャー施設のように賑わっていた。その為防具を身に付けた俺は嫌でも目立つというか、割りかし注目を浴びていた。


「そういや、俺の知名度ってこっちだとどうなんだ?」

「わたくしが嫁いだことは知れ渡っていますけど、ショウタ様のお顔まではあまり広まっていませんわね」

『ほら、マスターって顔立ちは普通だから♪』

「知ってる。……でもそうか」


 クリスの嫁いだ相手が話題性抜群の風貌をしていないから、良くも悪くも広まってはいないという事か。イケメンでもないが酷いみてくれでもないからな。

 まあどんなに酷くても、レベルが上がれば補正が働いて、平均的な価値観に基づいた肉体に微修正されていくって話だし、高レベルの冒険者はイケメンかフツメンかの2択になると言われている。

 まあつまり、俺の場合は元が普通のモブ顔だったから、そこにどんな補正がかかろうと、プラマイゼロで変化なしというわけだ。ただ、高レベルが持つ独自の強者のオーラは美醜の影響は全くなく等しく与えられるので、そこはまあ救いではあるが。


「とりあえず、人が少なくなるところまで行こうか。クリス、案内してくれるか?」

「はい、ショウタさま」


 今回エンリルがいないから、空からの偵察ができない分、マップ埋めがちょっと面倒だな。といっても、『鷹の目』を空に飛ばして自由に動かすことができるから、時間がかかるだけでできない事はないんだが。それでもまあ、マップの全開放に手を伸ばすほど大変でもないから、久々にこの不便さを堪能するとするか。


「ショウタ様。この辺りでしたら大丈夫かと」

「ああ、ありがと。そんじゃあマップを埋める作業をしていくわけだが、アズ。今回は急ぎではないんだし、マップ機能による全解放は、各階層のクリアまで禁止な」

『分かってる。あたしだって、マスターと一緒に攻略するのが楽しいんだもの。前回みたく、時間に逼迫しているわけではないのだし、のんびり行くわ』

「そっか。ありがとな」


 さて、そんじゃマップ埋め……の前に、目の前にいるモンスターの情報から見ておくか。アレは……カニかな?


*****

名前:ウォータークラブ

レベル:10

腕力:75

器用:38

頑丈:94

俊敏:9

魔力:100

知力:10

運:なし


★【(エクス)スキル】流水甲殻


装備:なし

ドロップ:ウォータークラブの甲殻

魔石:小

*****


「ふぅん?」


 『ハートダンジョン』のシザークラブと大差ないステータスだが、スキルがあるな。ちょっと濡れてる感じがするし、多少の攻撃は水で滑ったり弾かれたりする感じかな?

 まあ、この程度のモンスターの多少なんて、本当に()()だろうけど。


「クリス、あいつらの移動範囲って、砂浜限定か?」

「基本はそうですが、敵対者が海に移動すると追いかけてきます。その際機動力に変化が生じまして、ステータス以上の素早さが発揮されますわ」

「ほほーん」


 それは面白いな。けどそれだけだし、試しに素手で軽く殴ってみたらすぐ煙になってしまった。弱い。

 クリスが率先してドロップを拾い上げるのを見つつ、俺はその場に座り込んだ。


「んじゃ、今からマップ埋めするね。周囲の確認と警戒よろしく」

「はいっ」

「お任せください」

「ソファーをお出しましょうか?」

「いや、このままで良いよ。あとで砂掃除をするのは面倒だろうし」


 そうして視界を空に浮かべ、座禅を組みながら入ってくる情報に集中する。ここ最近はずっとエンリルから入ってくる映像を意識半分で流し見してるだけだったから、こういうのも久々だな。

 なんか、原点に立ち帰った感じだ。

 俯瞰した視界でこの階層を確認する限り、ここは中央に大きめの島があり、それを囲むように海が広がっている。海は海で当然マップの端が存在し、見えない壁があるのはいつも通り。島の形状はまるで風船のようなまん丸な形をしており、下部にはヒモのような細い道が伸びている。そんな細道の外側に外へと繋がる出口があった。となると相対的に、第二層の階段は――。


「ん?」


 逆側にそれらしい反応がない。というか島内には見当たらんな。海の中か?

 そう思って片目を開けて地図を覗き込むと、海中にそれらしい反応があった。ヒモのような細道が島の南側とした場合、階段の位置は北東の何気ない海の中だ。海中に次層へと続く階段があるなんて、面白い作りだな。


「ふむふむ」

『ふふ、マスター楽しそう♪』

「ん。こういうゆっくりとした攻略も好き」

「マップ、埋め終わったわね。何処から見て行く?」

「そうだなー。とりあえず島にいるモンスターは全部カニで、海中にいるのは別のモンスターっぽいから、まずは無難にカニ100体からだな」

「畏まりました。アイテム回収はお任せください」

「私達は応援してますねー」

『マスター様、頑張ってください♡』

『おにいさん、ファイトですっ』

「ああ」


 嫁達の応援を受けながら、出会ったそばから順番にカニを小突いては撃破して行く。こんな脆さの相手なら、魔法や武器を使うまでもないな。

 俺も強くなっちゃったなぁ。

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