ガチャ1006回目:深海ダンジョン
「アマチ様、到着しました」
リムジンから降り立つと、目の前には巨大なビル群。そんな大都市の中心部にある交差点に、それは存在した。
『初心者ダンジョン』や『ハートダンジョン』なんかは、建物がある区画に出現していたから、ダンジョンに合わせての区画整理などは必要なく、交通の点で不便はなさそうだったけど……ここは完全に道路のど真ん中だな。
これは非常に邪魔だろう。安全面でも、交通の面でも。クリアしたところでダンジョンの出現位置は弄れないから、こればっかりはどうしようもないよな。
あと……街ゆく人たちの格好が中々都市部ではありえない状態になってるな。そこかしこの人達が半裸だった。いや、言い方が良くないか。水着姿の人が結構な数いる。
『深海ダンジョン』で、嫁達も水着を用意してたから、そういう目的のために利用する人もそれなりにいるってことは予想できていたが、まさか外でもそんな格好でブラブラできるとは……。中々イカれてるな。
だって今、冬だぜ?
「正面に見えるビルは元々商業施設だったのですが、低階層は協会が買い取る形で、区画の見直しなどはせずに済んでおります。また、水着の状態でも周辺の商業施設は利用できます。他国ではあまり馴染みのない光景かもしれませんね」
「そうですね」
流石にこの光景は想定外だ。まあ、非日常感があって、面白くて好きだけど。
「ん。水着美女の姿が見れてテンションアップ?」
「目の保養ではあるが、美女度でいえばうちの嫁達の方が数段上ではあるなと再確認はしてた」
そう言うと皆がくっ付いてくる。そういや、全員下に水着を装着してるんだっけ。後で見せてもらお。
「それではアマチ様、早速協会にてダンジョンの説明をしましょう」
「あ、大丈夫です。間に合ってますので」
「クリスから聞いておりましたでしょうか? ですがその情報も鮮度が落ちておりまして、彼女が移籍してからも数多くの情報更新が……」
「ああいえ、そういうんじゃないんです。なんていうかなー」
「支部長。ショウタ様は、何の情報もないフラットな状態でダンジョン攻略に臨まれる方なのですわ。ですので、余計な口出しは無用ですの」
嫁達がうんうんと頷くと、支部長は理解できなかったのか、思考停止したかのように動きを止めた。まあ、それもすぐに戻ってきてくれたが。
「で、では今までの高難易度ダンジョンも?」
「ええ。流石に悪名高き『696ダンジョン』などは、その厄介な特性くらいは耳に入れていらっしゃったようですが」
スタンピードが頻発するタイプの特性な。懐かしいなぁ。696以降その手のダンジョンには関われていなかったけど……。
「クリス、一応ここもそうなんだっけ?」
「その可能性が高いとは言われておりますわ。モンスターの再出現速度が異常に高く、混雑度合いによってモンスターのレベルも変動しますから」
「それでも、今までスタンピードが起きることはなかったと」
「はい。エスのところのように人口に偏りはなく、首都の中心部ですから。常に人が溢れていますわ」
「なるほどなー」
だから今までも優先する必要はないと言ってたのか。まあそれでも、冒険者達が集まるとはいえ、常にスタンピードの脅威にせっつかれていたら、知らず知らずのうちに心に負担を感じていてもおかしくはないよな。
今回はそれを解放してやるつもりで攻略するかな。
「ではショウタ様、早速入られますか?」
「そうだな。観光って気分でもないし」
この辺にいると、水着の人たちが嫌でも目につくのであれば、攻略前だと絶対集中できないだろうしな。
「では参りましょう。『深海のダンジョン』へ!」
そうして俺達は支部長に別れを告げ、ダンジョンへと入って行った。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「おおー?」
目の前に広がるのは白い砂浜に青い海。『深海』の名とは違って、至って平和な景色だった。もっと奥の階層に行かないと、深海は味わえないのかな?
あと水着で海水浴を楽しむ人達の姿もあった。この階層の構成としては『グアムダンジョン』の第一層や『ハートダンジョン』の第二層と同等だろうか?
違いがあるとすれば、前者よりも人が多くて、後者よりも防具を身に付けた冒険者が一定割合を占めるところか。水着7割、防具3割と。
「第一層だから安全って感じなのかな?」
「そうですわね。ただ、以前と比べると遊び目的の人達が増えていますわ」
「泳いでる人、大半が一般人ですねー」
「んー。安全圏がある程度確立できたってのもあるかもだが、それよりも季節的問題もあるのかもな。だって、今って2月じゃん? 外よりも過ごしやすいと思うんだよね」
ここ、普通に25℃くらいの気温はありそうだし。
『でもマスター、外でも水着の人間が結構いたわよ?』
「まあそこは分からんけど……。レベルが上がれば割と耐えられるしなぁ」
俺も普段着というかいつもの装備だったけど、何ともなかったしな。寒いとは思ったが、それだけだ。
「今って外、何度だっけ?」
「マイナス5℃くらいだったかと」
「普通なら凍えるレベルだな。耐えられちゃうけど、それでも辛いもんは辛いから、こっちに来て夏を満喫してるんじゃない? ……ちなみにクリス、モスクワの夏の気温はどのくらい?」
「ふふ、ここと同じくらいですわね」
「じゃあそういうことなんじゃない?」
「かもしれませんわね」
ここの盛況っぷりに納得したところで、攻略開始だ!
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