ガチャ1002回目:別動隊
『それでマスター、この『天地覇道Ⅴ』はどうするの?』
「こんな貴重なもん、そうそう手に入らないって言うか、再入手は不可能だろうからな。ちゃんとしっかりMAXまで育て上げてから取得するさ」
『今のマスター様なら、世界中から認められておりますから、Ⅴでも十分効果的だと思いますよ?』
『お手軽に強くなれるのじゃ』
「そうかもしれんが、どうせならスキルはカンストさせたいからな」
『おにいさんのこだわりなんですね♡』
「そういうこと」
『でもマスター。さっきの赤ちゃんの事もあるし、あの時みたいなスキル稼ぎには中々いけないんじゃない?』
「あー……」
この子達のご飯とかに問題はないとしても、ダンジョンは特殊な環境だ。空気の質や雰囲気は外とは明らかに違うし、感じられる気配もやはり外と比べれば微かながらに違いがある。そんな世界に自我も薄い赤ちゃんの頃から入り浸ってしまうと、今後どんな悪影響が起きるか分かったものではない。
となると、やっぱりこの子達は連れて行けない訳で。……しばらく稼ぎは難しいかもなー。
『んふ、ねえマスター♪』
「ん?」
『一昨日、こいつらとキュビラを連れてちょっと家を離れてたのは知ってるわよね?』
「ああ。どこかに行ってたな」
アズなりにこの辺りを案内でもしてやってんのかと思ったんだけど……この感じからして違うみたいだな?
『実はね、マスターのペットの、更にペットでも、倒せば大本の存在であるマスターの『運』が反映されてるか調べてたのよ』
「おぉ。俺が気になってたところを代わりにやってくれてたんだな」
『ふふーん♪』
俺の直系ペットであるアズやキュビラであれば、倒せば俺の『運』通りに全部ドロップするし、タマモはサクヤさんのペットだけど、嫁用のアクセサリーで共有化してるので、ドロップに問題はなかった。
けど、俺の直属ペットから離れ、なおかつ嫁用のアクセサリーもない事から、三人のドロップをどうしたもんかと危惧してたんだよな。そうなった場合、様々な場面で詰みや面倒が発生しかねない。
そんな問題を、俺の代わりに調べてくれていたんだな……。本来は俺が調べるべき問題ではあったのだが、調べる余裕がなかったんだよな。赤ちゃんに夢中になっていたってのもあるが、別の問題があったのだ。
『それでね、結果で言えば問題なし! 3人ともドロップは問題なく機能してたわ』
「ちなみにどこで検証してたんだ?」
我が家と直結している『バトルアリーナ』には、秘密の通路の先にスライムが湧いているとはいえ、ドロップ検証には向かなさすぎる。そこから更に直結している『初心者ダンジョン』と『ハートダンジョン』も、スライム同様出現する敵が弱すぎて、あまり結果が参考にならないという問題があったのだ。
あと、後者に関しては人気のダンジョンという事もあって、俺が近くにいない状態で狩りなんてさせたら、一体どんな目で見られた事やら。他の一般冒険者を不安に思わせる真似はあまり好ましくないんだよな。
『マスター、そんなに心配しなくていいわ。マップ機能を使って、私達が行ってきたのは『696ダンジョン』の第四層よ。稼ぎを目的とする以上、あの場所以上の好条件な場所はないし♪』
「まあそれもそうだよな」
あの階層ほど、人が殺到しにくい場所もないか。俺たちにとっては美味しくても、普通の冒険者にとっては地獄のような高難易度ステージだし。
「じゃあ、コイツら3人でも稼げちゃうと言うわけだ」
『そうね♪』
とまあテンション高めのアズとは違い、ベリアルは不機嫌そうな顔をしていた。
『マスターよ。我に只働きをしろと?』
ベリアルは不服そうにしている。多分、実験のためにそれなりの数の精霊を倒させられたんだろう。さっき言ってたスキルの山に対しての夢じゃなかった発言も、ドロップの事だったんだろうな。
「流石にそんなことは言わないさ。そうだなぁ……。あのダンジョンで得られる魔法系スキルなら、カンストするまで3人全員が自分のために使っても構わんぞ」
『おお、本当か?』
『『主君、誠にございますか?』』
「ああ。その代わり、全力でスキルオーブの確保に動いて欲しい」
……何日籠らされるかは知らんけども。
「アイラ、彼らのための休む拠点と、『魔法の鞄』とかの用意を頼みたいんだが……予備の鞄なんてあったか?」
流石に俺は鞄系は出せてないんだよなぁ。
「そういう事なら、僕がゲットしてるよ」
「私達もいくつか手にしたよー」
「おお、そうなのか」
なら安心だな。
「ですので、準備に支障はございません。ご主人様がどこかのダンジョンを攻略している間、彼らには頑張ってもらいましょう」
「……ん? てことは……」
「はい。ご主人様の攻略日程によって、彼らの籠る日程が変わると言う事ですね」
『何っ!? マスターが攻略するまでだと!?』
『ちょっとベリアル、何が不満なわけ?』
『……アズよ。1つのダンジョンを攻略するのに何日かかると思っている。ダンジョンの各階層は我らが世界で元となった、難度の高い地域をダンジョン用に再構築した場所なのだぞ? いくらマスターが強くとも、そんな場所がいくつも折り重なった場所が短期間で攻略できるはずが……』
お、今回はノイズが一切走らずに全部聴き取れたな。まあでも、コレくらいなら小耳に挟んだ情報ばかりだし、ダンジョンシステムからも、もう大丈夫と判断されたんだろうけど。
『ねえベリアル、あんた、自分のとこのダンジョンが何日で攻略されたか聞いてないの?』
『何? ……リリス?』
『ふぇ? もう報告する必要はないかなって思ってました』
まあ、一度タイミングを失って、その上ベリアルが俺の配下になった以上、する必要のなくなった報告だもんな。
『マスター、こいつに教えてあげて。ベリアル自慢のダンジョン攻略に掛けた日数を♪』
「えーっと確か……4日だ」
『『『!?』』』
そうして、俺達が次のダンジョン攻略中、スキル稼ぎをする別動隊が誕生したのだった。
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