ガチャ993回目:新たな命
自宅に帰還してから2週間ほど経過した。
『666ダンジョン』攻略後、各地から通達がありカスミ達はNo.709である『名古屋城前ダンジョン』を制覇。エス達はNo.178とNo.562を連続クリアしてこちらへと帰ってきていた。
我が家は若干人けのない郊外に建っているからか、エス達が歩いて遊びにくる時は『初心者ダンジョン』を経由して、『バトルアリーナ』からこっちに転移する形で遊びに来ているんだよな。不便そうだし近くに住めば良いのに、相変わらずやんわり断られていた。
そんなエスは今俺の隣にいて、心がザワザワしている俺の話し相手になってくれている。
「兄さん、聞いたよ。ここ最近は武人四人衆を相手に修行に余念がないって」
ここで言う武人四人衆とは、イクサバ、ベリアル、ガラン、ゼルヴィを指す。コイツらは向こうでも名を馳せた武人であり、各々が異なる武器の熟練度を極限まで高めた稀有な存在だ。俺が今後もダンジョンで戦っていく事を考えれば、彼らを相手に修行することは、俺にとってもメリットでしかない。
ちなみに彼らの武器種はそれぞれ刀、槍、鎌、刺突剣だ。普通の剣や盾持ちがいないのが個人的に残念でならないが、そこまで求めるのはわがままがすぎるかな。
「あー……まあな。高レベルの状態をずっと維持してると妙な高揚感が出てきてさ、そいつの発散にも役立ってくれてるんだよな」
「その高揚感は、高レベルの冒険者には割と付きものなんだけどね。兄さんの場合は、レベルの乱高下が激しい上に低レベルでいる事が多いから、あまり経験がないのかも」
「そうかー」
俺以外の皆は当然のように持っている問題だったか。
「けど、兄さんが展開し始めたサキュバス達の風俗街は、そういう高揚感を発散するにはちょうど良い場所だと思うよ。特に日本人は真面目な人が多いから、その手の悩みを溜め込みやすいとも言うしね」
「ふーん。エスは行ってみるのか?」
「えっ!? 行かないよ。僕にはシルヴィがいるし、兄さんのように気が多いわけでもないしね」
「……まあ、普通はそうか」
「普通はね」
『主君ほど気が多く、かつ女子供を大切に扱い、尚強さを併せ持った者は、向こうでもあまり多くはありませんでしたな』
エスとは逆側に座るイクサバが、感慨深く呟いた。今のイクサバは、甲冑姿ではなくキャストオフしているため、一見すれば女の子のようにも見えるし、声も高音なため初見では騙されるだろうな。
「やっぱ乱暴者が多かったのか?」
『そうでありますな。もしくは、1人の女によって尻に敷かれる場合もあったかと』
「ふむ。ところで三馬鹿は?」
『あの者達であれば、兄者達のアニメ鑑賞会でハマったらしく、今日は居室で鑑賞会をしておられましたぞ』
「日本を満喫してるなぁ」
魔王とその側近も、一瞬で染まったよな。
『ゴーゴゴ。ゴゴ』
「ああ、良くやったぞ」
『ポー』
エンキ達は、俺の身体にくっ付いたり、足元でゴロゴロしていた。やっぱり俺と違って、皆は落ち着いてるなぁ。
そして最後に、女性陣は皆この奥にある分娩室にいる。アキから順番に、1分もしないうちに4人全員が産気付き、サポートするために彼女達は皆入っていった。メインの助産師役はサクヤさんと、ミキ義母さん、イリーナ、マリーの4人だ。他の皆も、彼女達がそうなった時のために必要な事ではあるし、いずれは自分自身経験する予定ではあるので、全員が入室しているのだ。
ちなみにここは俺の家の近く……聖域化したエリア内に新設されたばかりの建物で、聖域の影響で『病魔に対する抵抗力100%上昇』と『悪霊の類は一切近寄れない』為、子供を産むのに適した環境という事で急遽建てられた。今後もこの場所は人気が出そうではあるな。
「ふぅー……」
「兄さん、まだ始まったばかりだよ。今からソワソワしてても疲れるだけだよ」
「分かってはいるんだがな……」
そして男は当然邪魔になるので、俺達は外で待機である。産気付いた彼女達がこの分娩室に運ばれてまだ5分とちょっと。場合によっては長期戦を覚悟しなければならない事を思うと、正直どうしたものか……。そう考えていると、部屋の扉が開いた。
「お兄ちゃん、お待たせ!」
「お兄様、終わったよー☆」
「え?」
早くない??
耳を澄ませば、確かに奥から赤ん坊の鳴き声がいくつも聞こえてくるが……。
「誰かがもう産んだのか?」
「ううん、4人とも全員だよ!」
「本当にあっさり産んじゃうんだもん。良いこととはいえ、拍子抜けしちゃったわ☆」
まだ現実感が飲み込めない俺の背を、エスが押してくれる。
「ほら兄さん、早く行って抱き上げてあげなきゃ」
「あ、ああ……」
「ほらお兄様、はやくはやく☆」
「赤ちゃん達にお兄ちゃんの顔を見せてあげてっ」
カスミとイズミに手を引かれ、分娩室に入っていく。するとそこには、満面の笑みで赤子を抱えた嫁達の姿があった。彼女達の腕には赤ちゃんが1人ずついて……。
「おお……お?」
彼女達を順番に眺めていると、一度素通りした光景に違和感を覚え、思わず二度見をしてしまった。
アレは……え? マジで??
「まあでもそうか、そうなっても不思議じゃないか」
部屋にいた嫁達はこの結果を既に知っていたのだろう。俺のその肯定的な呟きに、安堵したかのように微笑むのだった。
まあそれは後にしてと。しかし、産気付くタイミングも同時なら、産むタイミングもか~。
「こういう場合、長女から順に抱き上げてあげるべきなんだろうけど……ほぼ同時なんだよな?」
「ええ。全員ほとんど同じタイミングで産まれてくれたわ」
「じゃあ、産気づいた順番で行こうか」
ならまずはアキだな。
Xにて、現在の楔システムの様子を記した地図データを更新しました。
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