ガチャ988回目:安全策
『貴様、人間にしては中々のレベルを持っているようだな。だが、それだけで我を倒せるとは片腹痛いぞ!』
お、向こうも『真鑑定』でレベルを見破ってきたか。そして自分もブーストを掛けて圧を重ねてきた。でもそれで良い気になるのは気が早いな。このステータスが見えていれば逆にビビり倒していただろうが。
『貴様ら、いつの間に我が居城へ攻め込んできたというのだ。……待て、ここにいるという事はリリスやあの騎士は』
「察しがいいな。いや、悪いと言うべきか? お前が大事に育ててきた奴は俺の糧になって貰ったぞ」
『き、貴様ァァァァ!!』
おーおー。ブチ切れてら。
てかコイツ、この反応的にリリスがここにいる事に気付いていないのか?
チラリと後ろを見てみれば、アズもリリスも嫁達の背後にしゃがみ込んで、バレないように隠れていた。なになに、面白いからこのままでって?
角と羽は俺のお願いで消して貰ってるけど、尻尾はそのままだからはみ出したりしてるんだけどな……。まあ、奴にはそれが目に入ってないみたいだし、遊ぶのは別に構わないんだけど。
「にしても、その反応……まるで俺が悪いみたいだな。勝手にこの国に攻め込んできて、外の住人の生活を脅かしておいて、いざ攻められたら被害者面か? それで魔王を名乗るとは片腹痛いな」
『黙れッ! 貴様に我らの何が分かる!』
「知る訳ねえだろ。そっちが勝手に世界中にダンジョンをばら撒いて、スタンピードなんてトラップを仕掛けやがったんだろうが。地球の人間は大体迷惑してんだよ!」
『ぐっ……』
俺は楽しんでる側だけど。
まあでも、出現した時はステータスが全人類に付与されたせいで、だいぶ不幸な目には遭ったけどな。今の幸福はその反動だろうか。
「そっちが俺達に対して侵攻なんて選択を取ったんだ。不利になったからって文句言ってんじゃねえよ」
『……だが、貴様だけは許さんぞ。我の計画を邪魔しただけでなく、大事な1人娘にまで手をかけおって……! 絶対に許さん!! 覚悟しろ!!』
ベリアルは武器庫から禍々しい気配を発する槍を取り出し、戦闘態勢に移行した。んじゃ、ひとまずコイツをボコす所から始めるか。
まずあの武器はと。
名称:神槍・ゲイボルグ【神器】
品格:≪高位伝説≫ハイ・レジェンダリー
種別:神器【槍】
武器レベル:77
説明:神話に登場する神器武装を具現化したもの。十全に使い熟すには持ち主にも相応の素養が求められる。絶大な力を授ける反面、生半可な力では使用者を蝕む。
神器スキル【神殺の毒】:戦闘中30000の魔力を消費することで発動。神をも蝕み、殺し尽くすと云われる毒を1度だけ刃に纏わせる。
★投げても必ず持ち主の元に戻ってくる。
★投げると分裂する。その数は持ち主の能力に依存する。
「ほぉ、良い槍だな」
デメリット付きだけど。そのデメリットがただ重いだけとかなら『幻想』入りしたかもな。
『ふん、恐れ入ったか?』
てか、その『神殺の毒』は俺にも効きそうだな。『毒抗体Ⅹ』だけじゃ抵抗できそうにない気がするぞ? 俺の『直感』がそう言っている以上、使わせたら不味いな。ただでさえこいつの『魔力』は∞なんだから、使いたい放題だろうし、投げさせるのはもっと駄目だ。ここは、遊ばずに真面目に倒す事を優先するか。
『だが我の力はこれだけではない! 来い、我が従順なる配下達よ!!』
ベリアルは槍を天に掲げて宣言する。だが、誰かが召喚されて現れることも無ければ、正面左右や背後の扉からやって来る気配もなかった。
『な、何故だ。何故来ない!?』
「入口にいた2人の事か? あいつらなら、もう倒したぞ?」
うちのペット2人が。
『な、何ぃ!? だ、だが奴らは正しい手順を行使するか、我が呼ばねば動けぬはずだぞ!』
「お前の宝箱は2つとも頂いたが?」
『な、な、な……』
これも想定外だったのか、奴はワナワナと震えた。こいつ、想定外の事態に弱すぎないか? 隙だらけだぞ。でも、ここで隙を突いて無力化するのはちょっとなぁ。もうちょっと、ボコる機会が欲しい。どうせならメンタル面で。
何かないかな~?
『大事な配下まで……絶対に許さん!』
「それはさっき聞いた」
『アマチショウタ、貴様に『裏決闘』を申し込む!!!』
「おっ」
奴と俺とを囲むようにドーム型の結界が展開され、上部から徐々に真っ黒な景色へと塗りつぶされて行く。
やっぱ使って来たか。まあ、強者相手にはそれを使わざるを得ないよな? だけど残念ながら、それに対する対応策を、俺はいくつも持ってるんだ。
「『戦場形成』発動。『裏決闘』を無効化する」
『バキンッ!』
指を鳴らすと同時に広がり始めて行った結界が崩壊し、『裏決闘』は発動せず消失した。
『なにっ!?』
『決闘』と『裏決闘』のスキルを進化させたこのスキルがあれば、発動を強制キャンセルする事ができるようだ。まあ使うのは初めてなんだけど、散々『バトルアリーナ』で流用したりテスト起動して来たからな。ちゃんと本番でも俺の『直感』通りに作用してくれて一安心だ。
正直破壊するだけなら『結界破壊』や『破魔の矢』でぶち壊した方が相手にダメージを与えられるんだが、今はただこいつを倒すよりもメンタル面で屈服させる事を優先したいんだよな。
アズによれば、『結界破壊』系統の能力は、向こうでは超レアではあるけど、伝説級のスキルとして認知はされてるっぽいからな。だからここは、未知の手段である『戦場形成』でぶっ壊される方が、精神的なダメージの入り方が大きいと踏んだのだ。
『き、貴様……。一体、何者なのだ』
案の定、奴は俺に対する逆転の目を悉く潰され、困惑していた。
さて、ならもう良いだろう。これ以上好きにさせるのはあまり得策ではない。
「グングニル」
『!?』
半ば放心気味だった奴の目の前で『神器』を召喚し、隙だらけだった奴に急接近する。
『ぐっ――』
「遅い!!」
『ズドッ!』
奴の槍を弾き、そのままグングニルが奴の肩を貫いた。その衝撃で武器を持っていた片腕が吹き飛び、血飛沫が舞う。
『グアアアアッ!』
「お前の槍捌きを見てみたくはあったが、今回は安全策を優先させてもらった」
そのまま足払いを仕掛け、倒れ伏したベリアルの胸を踏みつけ、槍を突きつける。
「お前の負けだ。フルプレッシャー!」
『ぐうぅ……!』
グングニル状態のフルプレッシャーをもう一度向けると、奴は諦めたかのように目を閉じた。
『クソッ、たかが人間ごときに我が負けるとは……』
悪態は垂れてるが、一応勝ったかな? 魔王相手にあっさりと決着がついてしまったのはこちらとしても不完全燃焼だが……。でも相手は魔王だし、何してくるか分からん以上さっさと済ませるか。
「『テイム』」
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