ガチャ983回目:嵐の後の静けさ
マリーによる治療が終わっても、全身の気だるさが抜け切る事はなく数十分間その場で休み続けたのだが、空の破損は一向に回復する気配がなかった。
「あれ、修復にどれくらい時間がかかるんだろうな」
「ん。エスの攻撃だと5分か、長くても10分くらいだったはず」
「ああ、即席『極閃』ね。アレをほぼノーリスクで撃てるエスもやっぱ、バケモンだわ」
そんなエスの攻撃でも10分もしない内に修復されるダンジョンの破損が、いまだに直らないとは……。ふむ、それだけ解放状態のグングニルの一撃が、強力過ぎてその余波がエグいのか、それともウイルスのようにあの亀裂部分にジクジクとダメージが残り続けてるのか。
まあなんにせよ、こんなに発動に苦労したんだ。そう簡単に修復されたら困るよな。
「とりあえず、のどかな今のうちにこの階層を攻略しちまうか。アズ、どうだ?」
『そうね、この階層、元々かなり狭く造られているみたいね。その上、大災害がメインだからかモンスターもいないみたいなの』
「え、1匹もいないの?」
『ええ。その代わり濁流とか、落雷が降り注ぐ特殊地帯だとかのトラップが山ほど敷き詰められていたみたいだけど……。マスターが天候を吹き飛ばした影響で、罠が全部ストップしてるみたい。だからかしら、宝箱も2個とも出現してるわよ』
「マジか」
拍子抜けもいいとこだし、出現条件が分からず終いというのは悲しいが……まあでも、期せずして知らないうちに攻略しちゃうってのも、ダンジョン探索の醍醐味の様なものか。
「じゃあ、この階層はもう調べることが何も残ってないんだな」
『ええ。マスターにとっては残念かもだけど』
「ま、そう言うこともあるさ」
とりあえず、俺もこの階層の情報は全解放しちまうか。ポチッとな。
「……うん、本当に何も残ってないな」
残されたのは大災害の爪痕というか、地形がぐちゃぐちゃになった見知らぬ世界だった。元は多分、なんて事ない田舎の田園風景が広がっていたんじゃないだろうか? 川やら畑やらがあって、人々が生活していた場所の様に思えなくもない。
まあ、原型をとどめていなさすぎて、その認識が合っているかも分からんのだが。
「なあリリス、ここはお前のとこの領地を接収したダンジョンなのか?」
『はいです。私も全てを熟知しているわけではないですが、お父さまが求める『666ダンジョン』のイメージにピッタリな土地を吸収したと仰ってました』
「ふぅん」
各種恐怖症が666のイメージね。まあ、医療や科学が文化として発展する前は、恐怖の根源は悪魔だなんだと畏れられていたからな。その発想も間違いではないと思うんだが……。ちとその情報は古いんじゃないか?
まあでも、この土地は信心深い人が多い土地でもあるから、そういうのが一際有効だったりするのかもしれないか。
「とりあえず、モンスターもいないんじゃ長居するだけ無駄だな。とっとと宝箱を回収しようか」
『ポー。ポポ?』
「ああ、頼む。アズもついてってやってくれ」
『はーい♪』
そうしてマップを頼りに次層へのゲートを目指していると、アズ達が宝箱を抱えて飛んできた。
「罠の類は?」
『残念ながら無かったわね』
『ポー』
「そうか、ご苦労様」
2人を労い宝箱を受け取る。これも多分同じ内容だろうけど……。
名称:第六の罪(表)
品格:なし
種類:宝箱
説明:第六の罪が封じられた宝箱。開けることはできない。
名称:第六の罪(裏)
品格:なし
種類:宝箱
説明:第六の罪が封じられた宝箱。開けることはできない。
ふむ。じゃあコレは仕舞っておいてと。
「お、アレが第七層へのゲートだな」
「ん。早速行っちゃう?」
「ショウタ、回復したとはいえ本調子じゃないでしょ。大丈夫なの?」
「ああ、問題ない。気怠さも抜けつつあるし、すぐに元通りになるさ」
「無理はしないでくださいね、時間なら十二分にあるんですから」
「そうですわ。技の反動で大怪我をされた自覚を持って下さいまし」
「難しそうなら休むのも手ですよー。なんでしたら、コロシアムに転移して一度お家でのんびりしてても良いんですからー」
「そしたら嫁達が心配して離れてくれなくなるだろ。それに一度あそこで身体を休めたら本気で俺が、数日は動けなくなりそうだし」
そうなったら、結構な猶予時間を得たのに加え、安全な狩場やルートを確保できているとはいえ、またこの地の人達に無理を強いる事になりそうだしな。ここまで来たら、最後までやり切りたいところだ。
「それに直感だが、次くらいが最後な気がするんだよな。リリス、合ってるか?」
『はいです! 第七層が最下層ですっ!』
「だよな。なら、ここで引き返すわけにはいかないさ」
リリスの誘惑トラップに、凶悪な門番を抱えた第五層。そして荒れ狂う天候に加え、それによって発生する即死級トラップの数々を抱えた第六層。そんな2つを用意している以上、第七層が最下層か、その1歩手前くらいはあると思ってたんだよな。
さて、例の魔王様は第七層でふんぞり返っているのか、それともこの宝箱をどうにかしないといけないのか。何が待ってるかなっと。
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