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ガチャ982回目:対メソサイクロン

 手に持っていた『封音の魔導具』を地面に設置した俺は、軽く伸びをした。


「よし、皆はそこで待機しててくれ。ちょっと試してみたいことがあるんだ」

「ん。行ってらっしゃい」

『ゴゴ』

「ファイトですわ!」

『ポー』

『プルーン』

「今日は何を見せてくれるの?」

「楽しみですねー」

『♪』

「御武運を」

『ふぇ? どうされるんですか??』

『良かったわねリリス、マスターの本気が見られるわよ』

『???』

『キュイキュイ』

『マスター様、頑張って下さいっ♡』

『御主人ならきっとできるのじゃー』

「ああ、皆ありがとう」


 一人結界の外へと歩み出る。

 すると案の定平穏だった世界が爆音に包まれた。本当に喧しい空間だが、果たしてうまく行くのか……。

 いや、やるだけやってみれば何かしら得られるものはあるはずだ。もしも身体にガタが来ても、後ろにはマリーが控えてるからな。多少の無茶はできるだろ。


「ふぅー……! フルブースト!」


『ゴゴゴゴゴッ!!』


 周囲の轟音を塗りつぶすように大気が震え、地面がひび割れる。

 このまま次のステップに進むのは少しばかり嫌な予感はするが、それと同時に実行に移した方が良い予感も働いている。死の予感には程遠い以上、やっておいて損はないはずだ。


「……来い、グングニル!!」

 

『ゴロゴロゴロ!!』

『ドッ! ガラガラガラ!!』

『バチバチッ! バチバチバチッ!!』


 召喚すると同時に雷鳴が鳴り響き、いくつもの雷がグングニルの穂先へ立て続けに降り注いだ。

 だが、雷のエネルギーは柄を通して俺に流れてくる事はなく、全て刃の部分に留まったままだった。こうなるとは予想できなかったが、どうやらグングニルは、雷のエネルギーを蓄積する事ができるらしい。


「……ほほぉ~?」


 雷の力を取り込んだからだろうか。今の状態のグングニルからは、未だかつてないほどの、とてつもない力の波動を感じるぞ。


 名称:神槍・グングニル【神器】(解放)

 品格:≪幻想+≫ファンタズマ+

 種別:神器【槍】

 武器レベル:98

 説明:神話に登場する神器武装を具現化したもの。十全に使い熟すには持ち主にも相応の素養が求められる。絶大な力を授ける反面、非常に重い。使用者の能力に合わせ、本来の力が解放されている。その刃は神雷を宿し、万雷を操る。神雷エネルギーをすべて消費する事で、武技スキル『神雷閃』が使用可能。

 神器スキル【勝利の誓い】:戦闘中30000の魔力を消費することで発動。戦いの中で発生するランダム要素の全てが発動者の有利に働く。

 ★投げても必ず持ち主の元に戻ってくる。

 ★神雷エネルギー:1000/1000


「おぉ、こりゃ凄いな」


 スキル効果を頭の中でイメージすれば、使い方が頭に流れ込んでくる。とりあえず、刃に溜まったエネルギーを解放しながら、いつも通り全力で目標に向けてぶん投げれば良いんだな?

 よし、早速使ってみるとしよう。


「『結界破壊』『ダブル』……む」


 分身スキルで解放グングニルを持つ自分を複製しようとしたが、5体ともすぐに霧散してしまった。どうやらグングニルの力が強すぎて、『ダブル』程度じゃ複製できないっぽいな。

 けど、『結界破壊』はちゃんと乗ったみたいなので、仕方なく天に狙いを定める。


「よし……貫け! 『神雷閃』!!!」


 グングニルが一筋の光となって、空間を斬り裂きながら雲を貫いた。


『ガシャーンッ!!』


 そしてメソサイクロンの向こう側……天蓋にあるダンジョンの壁をぶち破り、その衝撃で積乱雲も竜巻も雨雲も、何もかも吹き飛ばした。

 全てが吹き飛んだ世界には、青空が広がっていた。


「……」


 先ほどまでの騒音が嘘であるかのように世界は静まり返っていた。そして手元には、いつの間にかグングニルが戻って来ている。

 改めてグングニルを視てみたが、取り込んでいた雷のエネルギーはすべて消費しているようで、武器レベルも88の通常版に戻っていた。武器レベル98のあの形態は、雷のエネルギーが充電されてないと発揮されないみたいだな。

 とりあえずやりたかったことはできたし、ブーストを切ってグングニルを収納しよ――。


「……ぁ?」


 突然立ち眩みを起こし、前のめりに倒れそうになる。だが、両隣から手が差し込まれ転倒は免れた。


「ん。お疲れ様」

「お疲れさまでした、ショウタ様」


 ミスティとテレサが助けてくれたようだ。2人とも素早いなぁ。


「勇者様、すぐに治療しますねっ!」

「……治療?」

「気付いてないの? ショウタの腕も脚も、内側がズタボロよ?」

『フルブーストと完全開放したグングニルの影響でしょうね。それだけ、完全な『神器武器』を取り扱うには資格が必要って事なんでしょうけど』


 なるほど、若干感じていた嫌な予感はコレだったか。両手両足が使用不可能になるほどの反動が出る代わりに、あれほどの威力が出せる大技か。……後先考えないで良い状態なら、最大級の威力がある技みたいだな。

 なんせ、未だにダンジョンの天蓋部分は修復されずに大穴が開いたままなんだし。多分、あれが割れてる間はこの階層は平和なんだろうな。いつ直るかは知らんけど。


『それを引き出せただけでもマスター様はすごいですっ♡』

『ここまで力を引き出せた者はわっちも知らんぞ! 流石なのじゃ!』

『おにいさん、カッコ良すぎます……♡』

「ああ、ありがとな」


 とりあえず、疲れたしちょっと休むか。

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