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ガチャ978回目:腐れ縁

「ショウタ様、見てください! 今の戦いで猶予時間が沢山増えましたよ!」

「お、どれどれ」


 興奮するテレサを宥めつつ、表示された時間を確認する。


【ダンジョンNo.666】

【残り:236:51:48】


「は? いやいや増えすぎだろ……」


 今まで数時間前後増えて喜んでいたのが馬鹿みたいなくらい増えてるじゃないか。


『それだけ、あのモンスターがエネルギーの塊だったということですね♡』

『長年力を蓄えておったのじゃ。その存在が喪われれば、このダンジョンの勢いが削がれるのも当然なのじゃ~』

『ま、そんな秘蔵の切り札を倒されたんだもの。ここのダンジョンボスも、この情報を知ったら憤慨するんじゃないかしら♪』

「……そういや、ダンジョンボスの時って、ダンジョンの状態はどこまで細かく把握できてたんだ?」


 前からちょっと気になってはいたんだよな。丁度ここには元ダンジョンボスが4人も揃ってるし、今の管理者レベルなら知識として得られる可能性があるだろ。


『んー、そうねぇ。ダンジョンの構成とかでその辺りの情報収集能力はまちまちだとは思うんだけど……。あたしは基本的にアイツがいない時は最下層、いる時はコアルームに引きこもってたわ。だから最下層にいる時は何も感じられなかったわね』

「そうなのか」

『コアルームにいる時も、接続すれば階層ごとに人間は何人いるだとか、モンスターの配置状況とかは調べることはできたわ。けど、わざわざ調べようとしない限りは情報は得られなかったの』

「ほほー」


 ダンジョンボスってのも万能ではないんだな。


「……コアルームにいる時は何してたんだ?」

『アイツやその配下が持ち込んで来た娯楽作品を観てたわね』


 まあ、出られない以上そうするしかないよなぁ。ダンジョンボスなんて、俺ならやる事なさすぎて死にそうになるだろうな。


『アズ様の仰る通り、ダンジョンの構成によってできることは変わってきます。ダンジョンコアでできる内容は他のダンジョンでも同様だと思いますが、私の場合は各階層に視界を広げていたので事細かく状況を視る事ができていました。まあ、マスター様に悉く壊されてしまいましたが……』


 ああ、狐の彫像ね。あの監視カメラは、やっぱりキュビラと繋がってたんだな。


『監視のために設置した専用の休息階層で、マスター様の御力を覗かせて頂いた時は、本当に背筋が凍る想いでした。アズ様がペットとして懐いていらっしゃったので、私の活路はそこしかないと判断できたので良かったです』

「そうだな。俺も『妖怪ダンジョン』の最下層に行ったときは戦う気満々だったから、初手土下座スタートじゃなきゃ間違いなく手をあげてたな」

『本当に、良かったです……』

『英断なのじゃ~』

『はわわ……』


 あの時の感情を思い出したのか、震える自分の身体を抱くキュビラを抱き寄せて、もふり倒す。俺もキュビラを傷物にしなくて良かったよ。

 よーしよーし。


『マスター様……♡』

「てことはつまり、ここのダンジョンボスも監視用のオブジェクトを設置していない以上、コアルームに引きこもってない限りこちらの行動が筒抜けになることは無いわけだな?」

『そうなるわね。今回マスターは通知は何も出していないわけだし、ギリギリまでバレる事は無いと思うわ』

「じゃああの宝箱のトラップはどうなんだ?」

『あれも、本人と直接的に繋がっていないと思うわ。設置する時に力を使って、あとは放置ね。ただ、コアルームに入れば復活させる事はできる仕様のはずだから、それも本人がコアルームに繋がっていれば発動済みかどうかはわかるかも』

「なるほどな。……ところで、ここに魔王がいるって事は、No.700にいるのは魔王じゃ無いってことか?」


 一陣営に2人も魔王がいるわけないと思うしな。


『えっと……』


 リリスが顔色を伺い、アズが頷く。


『700にいるのは、お母さまです』

「あぁ、なるほど。そういう繋がりね」


 親子で3つのダンジョンを管理してるのか。親子関係は良好そうなのかな?


「アズ。その人も『テイム』してあげた方がいい?」

『ええ、お願いしたいわ!』


 おっと。他の魔王関連の話題が出た時よりも、『テイム』に対する希望度が強い気がするな。リリスを妹分としてたくらいだし、こっちも並々ならぬ関係性がありそうだな。


「……友人か?」

『……そ、そうよ』

「付き合い長そうだな?」

『ま、まあ腐れ縁ね』


 アズは気恥ずかしそうに返事をした。

 腐れ縁で付き合いの長い女友達か。そしてその人は魔王と結婚して子をなしていて、その子を妹分として可愛がっていたと。なるほどなるほど。


「ははーん。さてはお前、その友達が先に結婚して子を成してたから、若干嫉妬してたりしたんだろ?」

『うっ!? ど、どうしてわかったの……?』

「そりゃアズの事だしな。それに、魔王城の謁見の間で玉座に座らせて俺に魔王ごっこさせたがるくらいだ。その友人の関係に憧れを抱いててもおかしくは無いと思っただけだ」

『むぅ……』

『お姉様にもそんな一面が……』

『ふふ、可愛らしいですね♡』

『大方、御主人とのイチャラブっぷりを見せつけるつもりなのじゃ~』

『そうよ。悪い?』


 アズがむくれてしまった。


「悪くないさ。けど、その友達と会う時は相手の主人をペット化させてる訳だし、割と修羅場にはなりそうだよな」

「ん。普通キレると思う」

「自分の身で起きたとしたら、気が気じゃないわね」

「夫だけでなく娘もペットになっていたら、怒る前に呆れるかもしれませんわ」

「ですがこの場合、娘の方はともかくとして夫の方は因果応報ですが」

「その点、私達の夫はそんな心配要らなさそうですよね~」


 マリーの言葉に皆が頷く。

 信頼してくれるのは嬉しいけど、クリスが懸念したように下手こいて呆れられる事態になりでもしたら、しばらく立ち直れそうにないだろうな。

 とりあえず、現状俺達の攻略進捗度はよほどの事が無い限りバレない事が分かったし、このままこの階層も制圧するか。

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