ガチャ966回目:白磁の剣山
今までは部屋だったり崖だったり通路だったりと、割と行動範囲を狭められていた感じだったけど、この階層は広々としていて良いな。白ウニは邪魔ではあるけど、破壊することもできれば退かせることもできるっぽいし。
んー……でもこんな強烈な悪意を振り翳すダンジョンが、何の意味もなくただの嫌がらせ目的だけで、こんなウニ地帯を作るとも思えないんだよな……。
もう一度ちゃんと視ておくか。
名称:白磁の剣山
品格:なし
種類:ダンジョン構造物
説明:純白の球体に無数の針が搭載された破壊可能なダンジョンオブジェクト。
……たったそれだけの文言しか記載されていないし、詳細も視れない。だが、それだけではないと俺の『直感』が告げている。
『ゴゴ。ゴゴー?』
「……あ、駄目だエンキ」
『ゴ?』
エンキが持ち上げた白ウニをどこに投げ飛ばせば良いかと聞いて来たので、慌てて待ったをかける。とんでもなく嫌な予感がしたのだ。
「一旦元の場所に戻すんだ。そっとだぞ」
『ゴ』
そしてエンキはそっと白ウニを山へと戻したが、特に何も起きなかった。
だが、『直感』が先ほどから警笛を鳴らしている。その正体を突き止めねば。
「テレサ、マリー。この白ウニについて、何も知らない感じか?」
「は、はい。この見た目ですから、不用意に近付かないようにしていました」
「モンスターとの戦いで刺さったりしたら嫌ですからね。モンスターと遭遇しても、極力山から離れた場所で戦うようにしてましたよー」
「なるほどな。……この階層で死んだ人間はいるか?」
「はい。何組か……」
「その時は生き延びた人間はいるのか? それとも全滅か?」
「全滅です」
……なるほど。嫌な予感がするわけだ。
「エンキ」
『ゴゴー?』
「今から実験をする。ちょっと手伝ってくれ」
『ゴ!』
実験内容をエンキに伝えると、彼は嬉々として石壁をあちこちに仕掛ける。といっても無差別ではなく、俺達から視線の通る白ウニとの間に並べてもらっただけだが。
「シャル。あっちの白ウニの山に、壁越しの『流星群』」
「OK! 『流星群』!!」
シャルが天に向けて矢を放つと、山なりに飛翔していた矢が突如として分裂。合計64本もの矢となって白ウニに降り注ぐ。
『流星群』はいわば『千の雨』の劣化スキルだ。数もそうだが威力もあっちよりは控えめだ。だけどそれでも、そんじょそこらのモンスターじゃ太刀打ちできない威力を秘めている。腐っても幻想武器のレベルⅢ解放技だ。『伝説』以下の武技スキルに遅れをとるわけがない。
『ドガガガガッ!!』
『ボボボボボッ!!』
『ドドドドドッ!!』
矢の雨が白ウニの山に降り注ぐと同時に、何かが爆発し、衝撃が石壁を叩く。その影響で辺り一帯に土煙が広がり視界が奪われる。
『ボボボボボッ!!』
『ドドドドドッ!!』
『ボボボボボッ!!』
『ドドドドドッ!!』
そして続けざまに別方向からも爆発音が響き渡り、他の方向に設置した石壁へと何かが激突する音が鳴り響いた。
「やっぱ、そういう類の設置物か」
その後も四方八方から爆発音が鳴り響き、5分くらいしてようやく静まり返った。
『ポー?』
「ああ、頼む」
エンリルが風を起こし、砂煙を取っ払ってくれた。石壁の内側は何事も起きていないようだったが、向こうはどうなっている事やら。一応空気の振動とかで何が起きたのかは理解できたが、直接視ておくか。
「……おー、こりゃひどいな」
石壁の外側は、あれほどあった白ウニの山は悉く消失し、その代わりにあちこちに無数に飛び散った針が地面や壁に突き刺さっていた。エンキの石壁はエンキ本人のステータスの影響を受け、かなりの硬度を誇っている。そこらのレベル100や200程度のレアモンスターでも、傷つけるのが難しいくらいには硬い。そんな石壁に突き刺さるほどの威力を持っているなら……。そりゃ、普通の冒険者は死ぬよな。
もう一度視なおそう。情報が更新されているはずだ。
名称:白磁の炸裂弾
品格:なし
種類:ダンジョン構造物
説明:純白の球体に無数の針が搭載された破壊可能なダンジョンオブジェクト。
★中央の球体に一定以上の衝撃を加えると爆発し、周囲に甚大な被害を齎す。
★修復までの残り時間00:09:25
情報更新されたが……名前も変わってるじゃないか。
ある程度の事は見破れる『真理の眼Ⅱ』をもってしても初見では分からないとか、かなりの力で隠蔽されてるって事だよな。
「どうやら白ウニは、中心部分に強い衝撃を受けると爆発するようで、その際自身にくっついていた針を辺り一帯にばら撒く習性を持っているようだ。その性質上、一度爆発すれば他の白ウニの山に連鎖して爆発。どこの白ウニが破裂しようとも、その瞬間この階層は地獄となる訳だな」
「ひぇ~……」
「殺意高すぎでしょ」
「ん。マジやば」
「皆の『真鑑定』だと、まだこいつは『白磁の剣山』だったりするか?」
全員が頷いて見せたので、俺は『白磁の炸裂弾』に名前が変わっている事実と、10分で再生する事を教えた。
「これが、この階層の真実ですか……。全滅した訃報を知っても、その原因が特定できなかったのは、そういうことなのですね」
「未知のレアモンスターが隠れている可能性を考えていましたが、こんな罠が仕込まれていたなんて……」
「ん、でも不思議。このトゲは危険な事は誰の目にも明らか。だから普通は近付かないし、ましてショウタみたいに攻撃しようなんて思わない」
「そうですわね。テレサ達がこの階層に挑んで無事に済んでいる以上、ここのモンスターが炸裂弾を起動させる可能性はないと思いますわ」
「うーん、じゃあ第三層が近付くと厄介なモンスターだったから、ここもあえて遠距離で戦ってたら誤射しちゃったとか? 考えたくないけど」
「その可能性もあるが、こんな悪辣なダンジョンだぞ? どこかに、視えない起動スイッチとか置かれててもおかしくはないさ。今までの宝箱みたいにさ」
まったく、本当に殺意全開のダンジョンだな。
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